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姫、お菓子を貰う

ドレスの依頼を受けてからはただひたすらに刺繍をし続けている。

仕事の合間にも縫っているのだが、無意識に歌を歌っているようで一部の冒険者には好評だったようだ。

はて、私には歌を唄う趣味は無かったはずなのだが?

歌の内容は誰も聴いたことがなく、何処かの国の歌か?と聞かれた。

そもそも、私は音楽は聴いたことはあるが、歌を聴いたことがないはずだ。

元々は隠されて育ったので吟遊詩人などは呼べなかった。

ギルドの酒場にもたまに着ているが、冒険者は好みの勇ましい詩ばかり。

コレも前世の知識なのだろうか?


そんな中にシュッチョウだったサブマスが帰ってきた。

無駄に笑顔で。

確実に悪巧みしているであろう顔にしかみえない・・・


「皆さん、ただいま戻りました。

問題も無いようで何よりです。ガンバルティアで流行っているお菓子を買ってきましたので皆で食べてください。」


お土産に喜ぶギルド職員達。

私も一つ貰うことに、うむ美味しい。

クッキーにリンゴジャムを閉じ込めたもので、甘味が少なかった最近では嬉しい味だ。

珍しくヘンリエッタさんが夢中になって食べている。

この人、甘いものが好きだったのか・・・

そんな事を考えていると、サブマスがとんでもないことを報告した。


「この度、ガンバルティアで黒化発生の報告と現状と今後の対策を話し合ってきました。

後でギルドマスターも帰って来ますが、両国の関係を友好と黒化対策の為に一部の兵を派遣していただくことになりました。

これは我が国とガンバルティアの共同作戦になり二つの国の兵がこの町に集まり防衛に務めて頂けるのですが、二つの組織が一つの場所に集まれば争いは起こるものです。

冒険者の皆さんも何かしらの衝突はあるかと思われます。

その他にも色々と仕事が増えるかと思いますが、頑張ってくださいね。」


この発言に皆が不満の声を上げる。

私も上げたいが、今はお菓子を食べるのだ。

武器を買うために嗜好品は暫く食べられないのだから。


そう、この時の私は今後に起こる騒ぎを予想出来ないでいた。

先に逃げておけば良かったと・・・

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