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姫、新たな依頼書を受ける

仕方なく日用品としても使える鉄板仕込みのブーツを購入して帰ることになった。

しかし、このままでは片方の斧すら今の予算では買えないのだ。

何かしらの方法で資金を増やさればならない・・・

当面の間はギルドで住み込みで働かせてもらえるが、いつまでも住み込みで働けるとは限らない。

こんな時に限って相談役兼便利なサブマスは長期出張中なのだろうか。

確か、黒化発生に伴う隣国への状況報告とかなんとか。

隣の国ってガンバルティアじゃない?

後で国の状況だけは聞いておこう。


雑貨屋で自分の代えの下着と簡単な日用品を購入してギルドに戻ること・・・


「ただいま戻りましたわ。」

「あ、エリーさん、丁度良いところに戻ってきてくれました。」


受付のヘンリエッタさんから項垂れながら部屋に戻る私を止められる。

受け付けには品の良さそうな頭をオールバックに固めた執事の人が立っていた。


「こちらの方がエリーさんの刺繍の腕を聞いて依頼をしたいって言うのよ。

エリーさん、まだ見習いだから本人の確認とギルドの許可が出ないと受けられないんだけど、どうします?ギルドとしては腕では保証できるから、あとはエリーさんの意思次第なんだけど。」

「依頼ですか?」

「ええ、私はこの町の男爵家カタロニア家に仕えるハワードと申します。

こちらのギルドに若く刺繍の腕が良い職員が居ると聞きまして、一つ依頼を受けて頂きたいのです。」


男爵家の人がわざわざやって来るとは珍しい。


「どのような案件になりますのでしょうか?

内容によっては私では受けることは出来ませんので、確認させてもらえますか?」

「ええ、この度私の仕えるカタロニア家のお嬢様が13歳の誕生日を迎えることになりまして、使用人一同プレゼント差し上げようと思いまして。

他にはなく珍しい物をと探していたところ若い者の間では衣類に刺繍を付けるのが流行と伺いました。

ですので、誕生日用にドレスとハンカチに刺繍を施して頂きたいのです。」


ドレスに刺繍・・・

いつもやっているワンポイント刺繍で良いのだろうか?


「ドレスとハンカチはこちらで用意致します。

期間は1ヶ月ほどで、代金はこのくらいにでいかがでしょうか?」


その金額は破格であった。

斧二本分には届かないが、コレを合わせれば一本買ってお釣りが来る。

まて、私。

これはチャンスだ。

自分を売り込むのだ!


「はい、喜んでお受け致しますわ。」

「なんと、引き受けて頂けますか!」

「そこで提案なのですが・・・」

「提案ですか?」

「せっかくドレスとハンカチを刺繍で揃えるのならば、下着も揃えて差し上げてはいかがでしょうか?」

「ほう、下着もですか? 」

「ええ、やはり、女性と言うもの揃えるのならば中身から一式で揃えてみたいと思うものですわ。」

「なるほど、そこまでは考えが至りませんでしたな。

分かりました。よろしければ下着の分もお願いできますかな?

下着分に関しましては、一割増しが私共の限界になりますが、受けて頂けますか?」

「ええ、喜んで。」


これは棚ぼたである。

この世界ではボタ餅を見たことがないが・・・

これで冒険者としての夢が近づいた。


「では、ドレス等はカタロニア家のメイドがエリー様宛に届けさせますので、宜しくお願い致します。」


そう言ってヘンリエッタさんと刺繍の依頼書を書き上げていく。

金額を見てヘンリエッタさんも驚いているようだった。

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