姫、買い物をする
「待たせたのお嬢ちゃん。」
「いえ、構いませんわ。」
お爺さんが一つの手斧をもって戻ってきた。
「この店でお嬢ちゃんが使っても大丈夫そうな片手斧はこれくらいしか見つからなかったの。」
「はぁ、一度手に取ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わんよ。」
手斧を手に取り状態を確認する。
以前使った物よりも重く、この大きさとしては不自然に感じた。
良くみれば、柄の部分まで全てが金属で出来ているが材質がおかしい。
金属なのに斑模様のように様々な色が重ねあっており刃と柄で別々の金属がうねり混ざりあっているように見える。
「それを容易く持てるか・・・」
「この斧、様々な金属が混ざっておりますのね?」
「そこに気が付くとはな!面白いのお嬢ちゃん!
そうじゃ、それは幾つかの頑丈な金属と軟らかい金属を部所ごとに比率を変えて混ざりあっておる。
他の奴等に勧めても奇っ怪だとか、呪われているようで嫌だとかしか言わんのでな、ちょっと驚いたの。」
ダマスカス合金・・・
前世の知識だが内容が面白い。
お爺さんの言った通りの物だが、前世とこちらでは存在している金属が少し違っている。
もしかするとこちらの方がダマスカス合金としては優秀な物があるのかもしれない。
「店長、言われてた混金の斧もう一個見つけてきましたぜ。」
若いドワーフがやって来て、重たそうに斧を置いていった。
このお爺さんは店主であったのか。
「これでお嬢ちゃんが欲しがっていたものが揃ったの。
どうする?買っていくかい?」
「他のものも見てみたいのですが、これ以外でここに並んでいるものではすぐに買い直す事になってしまいそうですわね・・・」
そう、何度かの戦闘には耐えられそうな物は沢山あるが、私の使い方では耐えきれないと予測できる。
もしくは、耐えられても取り回しに不便な物だ。
流石に大戦斧、大剣、戦鎚は振り回せてもその次に繋がらずに隙が生まれてしまう。
武器そのものにはロマンが詰まってるし、ぶん回してみたいとは思っているのだが・・・
高いのだ・・・
一本金貨10枚に届いてしまう。
全財産より高いのだった。
「では、こちらと、向こうに置いてある小柄な革鎧と合わせて購入したいと思いますの。
おいくらになりますか?」
「そうじゃの、それを合わせれば・・・
金貨10枚と銀貨10枚じゃの。」
・・・
・・・・・・
支払いは待ってもらうことにした。
資金が足りなくては買えないのだ・・・
幸い、あの斧を持てそうな冒険者はこの町でも一人しか居らず、その人は大剣使いで且つサイズが合わないそうだ。
なのでもう少しギルドでの労働が続きそうであったのだ。




