姫、兄との再会
思わず声が出そうになった。
御兄様は私に気がついている。
だけど、ここでボロを出してしまっては御兄様の嘘も意味がなくなってしまう。
「か、かしこまりました!
申し訳ありませんバルトランド卿、王子の勅命でしたか、それは私達にも配慮が足りませんでした。」
「今回は私の独断となるのでな、報せるのが遅くなった許すがよい。」
「そんな、滅相もありません。
王子自ら足を運んで頂けるだけでその重要性はわかりますので。」
「この者達は、私の名前で入城したと記入しておいてくれ、近衛隊長と警備員隊長にへわたしからも伝えておく。
そのまま通してしまうと問題が出ると思うので馬車の荷物を調べておいてくれ。」
「かしこまりました!」
兵士達が勢いよく敬礼をする。
職務中のお兄さんは初めて見たが、白で統一された服装と銀髪、その顔も相まって力とは違う威圧感が備わっているように見えた。
「さて、バルトランド卿、遠路はるばるご苦労でしたね。
積もる話もあると思いますので一度応接間へ来ていただきます。」
「かしこまりました、我が君。」
「貴方が神樹の森の賢者ですか・・・
はじめまして、ガンバルティア王国第一王子が第一子アベルと申します。
この度は我が国の危機に対し御来訪誠に感謝します。」
御兄様がアキラさんへ深々と礼をする。
公の場なのか二人とも動きに固さがある気がする。
「アベル王子、顔を上げてください。
一国の明日を担う可能性があるものがこの程度の事で頭を下げてはいけない。
私は従者の願いと偶然によりここに居るのだから。」
「従者、ですか・・・」
その一言で、廊下の空気が変わった。
殺気に似たような、せすじが凍りつきそうな威圧感。
普通の人ならば、気を抜けば意識を刈り取られてもおかしくない。
実際に、廊下の先を横切っていたメイドが一人、気に当てられその場で倒れてしまっているのが見えた。
「何をしているのですか、兄上。」
「む、カインか、何かあったのか?」
また一人、私の知っている人物が現れた。
アベル御兄様と同じく白い軍服を着こなし、服の上からでも分かる筋肉、少しずつ短めに整えられた銀髪。
その顔は女性とは間違えることはないが、男性としての綺麗な顔つきと子供のような表情が別の魅力を引き出している。
「彼女が来ているとは言え興奮しすぎです。
御父様にならいざ知らず、陛下に見つかったら即座に襲いかかってきますよ?」
「そうだったな、柄にもなく少し興奮してしまっているようだ。
ありがとうカイン。」
第一王子の第二子、私の下の御兄様、カイン王子だ。
アベル御兄様は知力で、カイン王子は武力でこの国に貢献をしており、基本この城で仕事をこなしている。
「舞い上がり過ぎですよ、普段なら眉一つ動かさずに兵隊に指示を出しているのに、今日に限って自ら現場に指示を出しに行くだなんて。
兵や文官、果てはメイド達ですら一大事が起きたのかと焦っています。
まあ、我々には一大事ではありますが。」
「皆まで言うな。
ここではまだ話せない。
早く応接間へ向かうぞ。」
「ハイハイ、かしこまりました。
賢者様、お初に御目にかかります。
私はアベルの弟、カインと申します。
今は兄も浮き足立っていますので、まずは応接間へ移動をお願いします。」
「わかったよ、その気持ちは分からない訳ではないからね。
案内をお願いするよ。」
「感謝します。」
そう言うと、カイン御兄様は私の方を見てニカっと笑った。
やはり、気がつかれているようだ。