姫、強烈な一撃
地面を撃ち鳴らす轟音と共に土煙が世界を埋め尽くす。
天井から落下と腕から放つ渾身の蹴りだ。
地面は砕かれ、歪な形へと変わっているが私の下にレッカは居ない。
周囲が見えないが、条件反射で顔を後ろへ引く。
「ふっ!」
私の顔があった場所にレッカの拳が放たれていた。
無意識に避けていなければ顔面が持っていかれていた可能性がある一撃だ。
つかさずレッカの腕を取り、私の方へと引く。
「ガードは固そうですわね。」
「鍛え方が違うからな。」
狙うは脇の下の肋骨。
不意に引っ張られ完全な防御は取れないはずだ。
拳を緩めに作り、肋骨の脇へ。
大地を踏み締め、打ち付ける瞬間に拳の中へ気と魔力を込め、緩く作った拳を絞め、肋骨の先、肺へと至る一撃を撃ち込む。
入った。
そんな思いが伝わったようにレッカの顔が苦痛に歪み、体ごと吹っ飛んでいく。
いや、自分から吹っ飛んだ。
少し離れた場所まで転がり、起き上がる。
幾分かは通ったようで、口からは血が垂れてきている。
「ガヘッ!・・・ガハッ・・・
くそ、何て攻撃をしやがる!!
まともに食らってたら心の臓まで持ってかれてるぞ!?」
「あら?その方が楽に終われたのではありません?」
「ぬかせ!!」
先ほどの勢いは無いものの、早さにものを言わせて突っ込んでくる。
先ほどの言い分だと肺にまではダメージが入っているようだ。
上手く呼吸が出来ていないのか、繰り出される攻撃は狙いが定まっていない。
「その体で動ける事自体あり得ないのですが・・・」
「鍛え方が違うっていってんだろ!!」
徐々にレッカのスピードが上がっていく。
拳や突きではなく、爪による引っ掻きや凪ぎ払いが本来の戦闘スタイルなのだろう。
攻撃方法が変わってからは私も避けることが手一杯になりつつある。
「さっきまでよ余裕はどうした!!」
「貴方は先程から速度が上がっていますわねっ!!」
喋った瞬間を狙い、顎を蹴りあげる。
普通なら意識すら飛ばすのだが、レッカはものともしない。
それどころか、私の足を掴み、振りかぶって地面へと叩き付ける。
見事なまでにクリーンヒット。
意識が・・・
(バトンタチッチでもするかい?)
失いかけた意識を引き戻す。
「それだけは御免被りますわ!!」
「まだ意識があんのかよ!?」
片手を地面に付き、両足を開き回転させレッカの手から逃れる。
バックステップをして、一度距離をとる。
「はははっ!まさかあれを受けて意識があるどころか、立ち上がって来るなんてな!
面白いよアンタ!!」
「私は何一つ面白くありませんわ!!」
いや、嘘だ物凄く楽しい。
あのジジイに何て渡したくない。
ベルンデッテの時よりも面白い。
「さあ、まだまだ行きますわよ。」
今度は私から、スタイルを代えて攻める。