プロローグ
注意。この小説は作者の妄想を文にしたものです。
プロットもない、設定も行き当たりばったり、どこかで見たようなネタ、一人称と三人称が入り乱れる。そんな、なんちゃって小説ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
首都圏のとある場所で一つの命が失われようとしていた。少し時間を戻そう。
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この付近にある、私立学園の制服を着た2人の男女が並んで歩いていた。男は高等部の制服。女は中等部の制服を着ている。
「お兄ちゃん、宿題やった?」
「お前はしっかり宿題やったのか?」
「え? あはは……」
「おいおい。やっとかないとダメだろ。進級できなくなるぞ」
「お兄ちゃんだってやってないくせに……」
「俺はいいの。宿題やんなくても、テストで点とってるから」
男は口の中でもごもごと「そもそもスポーツ推薦だし」と言う。
2人は兄妹のようで、どことなく顔立ちが似ている。
「私だって結構いい点数とってるんだけど」
「まだ足りないな。常時100点を目指せ」
「そんなのお兄ちゃんだって出来てないじゃん」
「そういう気概を持てってことだ」
「むー」
「まったく」
男は、自身よりに25cmほど低い位置にある女の頭を撫でた。いやいややっているような口振りだが、その表情は隠せないほどの幸せに溢れていた。
「お兄ちゃんてばそうすれば私が許すとーー」
女は、言い切ることなく1点に顔を向ける。
「どうした?」
続きが話されないことを疑問に思った男が横を見る。しかし女はそこにはいない。見えたのは、道路へ向かって走っていく後ろ姿だ。男は女の向かう先を見る。そこには、幼い女の子がゴム製のボールを持ち、車の通り道にいた。女の子も女も死なせたくない男は、全力で走り出す。
車の運転手が、女の子に気づいた様子はない。スピードは緩むことがない。
女は女の子を突き飛ばし、ぶつからないようにした。当然、女は入れ替わるような形で、車の前に出た。女は、諦めの表情を浮かべた。「ああ、最後に人助け出来てよかったな」とでも言いそうな顔だ。男はその顔を見た時、全身の血が沸騰したように感じだ。筋肉がちぎれるのも厭わない。そんな走りで女の元へ向かう。火事場の馬鹿力という物か。男は女が轢かれる前に、女が女の子にしたのと同じことをした。まさに間一髪。運動が得意な男が全力で走り、なおギリギリ。
男は車に吹き飛ばされた。
女は何が起こったのかまったくわからなかった。生を諦め、しかし自らの兄が心配で。そんな女を強い衝撃が襲った。衝撃が来るだろう、と予測した方からではない。衝撃だって強くはあったが、死ぬほどでも、気絶するほどでもない。女は何が起こったのか、正面を向いて考える。そして女は見たくないものを見てしまった。
自らの兄であり、愛する人が空を舞い、そして地面に叩きつけられる姿だ。ありえない、ありえないと自分に言い聞かせながら、兄の元へ向かう。兄はまだ意識があるようだ。
「ぐっ、がはッ」
「お兄ちゃんッ!お兄ちゃんッ!」
喉が裂けそうなほどに声を張り上げる。兄の意識を留めて置かねばきっと死んでしまうから。
「そ…なに、大きな……声をだ、すなよ……。頭に…響く」
「お兄ちゃんッ!しっかりしてよッ。私のお兄ちゃんでしょッ!」
男は残りの全ての力を使い、涙で濡れた最愛の妹の頬へ手を伸ばす。
「し、あわ…せに……なれ、よ。いつまでも……愛してるぞ、ーー」
最後に声にならない声で、妹の名を言う。
そして、一つの命が消えた。
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「ここは何処だ?」
俺は死んだはず。死因は……何だったか。思い出せない。
そこは、石の壁に囲まれた小部屋だ。部屋の中央に小さいテーブル、その上に分厚い本。そして、テーブルの真上天井付近に、光を撒き散らす球体があるのみだ。
「とりあえず……」
本を広げてみる。なんとなく音読してみた。
「おめでとう!あなたは魔王に選ばれました!…………は?」
女の子は、頑張ってボールを追いかけて、やっと追いついたと思って安堵していたら、車に轢かれかけました。かわいそう。