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おとなりダーリン。  作者: 坂戸樹水
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 えぇ~~そんなワケで、

ソレから1ヶ月が経ちまして、ユーヤ君との隣人生活は頗る快調ッス。


 彼女、――彼ね。彼。

彼もだいぶボロアパ生活に慣れたみたいで、



ジャーーーーン!

タラララタラララ~~~~



(何、このパワフルな連弾は……)


 アイドルの新譜をパソコンに打ち込んでるオレの手を又も止めるのは、隣の部屋から聴こえて来るピアノの旋律。

シューベルトね、ハイ、分かりました。激ウマなのも分かりました。

でもね、何で生音で演奏しちゃうかな?

ボロアパの壁の薄さ、パンの耳程って認識が足りてねぇよ。


(こりゃ、大家にドヤされるぞぉ。さっさと止めてやらなきゃよぉ、)


 結局、作業は中断。

オレは遽走って外に飛び出し、インターホンを連弾。



ピンポンピンポンピンポンピンポン!!



 インターホンの音にピアノが止む。

顔を出すのはゲロマブのユーヤ君。


「あぁ、石神サン、今日和」

「あぁ、コンチワ。ピアノの練習中ワリぃんだけどさ」

「あぁ、聴こえてました?」

「あぁ、聴こえてました」


 オレは脱力。何だろ この子、激しく世間知らずだ……


「ココね、壁うすぃーの。ペラペラなの。楽器なんて弾いちゃダメなの。

ホントなら」

「え!?」

「不動産屋に確認せんかったのかぁ?」

「特に言われなかったので……」

「あっそ。普通ダメなん。OK?」

「大家サンに相談すれば何とかなりますかね?」

「ならんねっ、絶対! 寧ろ、追い出されるね!」

「えぇ!? だって、やっと部屋が片付いたのに……自宅練習できなかったらヤバイです!」


 何つぅゴーイングマイウエイ。

オレはワシャワシャ金髪かいて順序だてて説法。

大人ですから。この子が部屋から追い出されるとか、ホント嫌だから。

なるべく長く お隣サンしてたいから! だって、顔がモロに好みだから!!


「デジピだろ? ヘッドホン付けて練習すりゃイイっしょぉ」

「ヘッドホンかぁ、持って無いんだよなぁ……今月、買う余裕ないのにぃ」

「バカ高いピアノ買ってくれる親父サンがいんだからさ、買って貰えばイイっしょぉ?」

「ソレは駄目です。俺、ハタチだから。学費と家賃以外は自分で稼ぐって決めてるんで」


 何てゆぅか、アホなんだか賢いんだか。


(肝心なトコはチャッカリ親の脛齧ってる辺りが突っ込みドコ満載だっつの)


 とは言え、ソレを言っちゃぁオレの大人が廃る。


「分かった。オレの貸しちゃる」

「え!? 石神サン、ヘッドホン何て持ってるんですか!?」

「バカにすンなぁ! オレは社会人だぞ!」


 クソ! ボロアパ住人だと思ってバカにしやがって! 目にもの見せてやる!

オレはダッシュで部屋に戻り、オーディオインターフェイスに繋いであるヘッドホンを引っこ抜いて舞い戻る。


「持ってけドロボー!」

「うわぁ! コレ、S社のロングセラーじゃないですかぁ!」


 プロ御用立つ、密閉型のダイナミックヘッドホンだ、このヤロー!

文句なかろぉ、エリート大学生よ!


「ソレぶっ刺して音出ししろ。ペダルの音も結構 響くから、練習は昼間だけ。

その辺 気ぃ使わンと、マジで追ん出されっからぁ」


 偉そうに言ってるけどコレ、オレが大家に言われたコトだから。

追い出されたら行く当て無いオレは、防音強化に慌てて壁一面 段ボール貼り巡らせた。見た目、段ボールハウスだわ。


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