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「良かったぁ!
コレからも石神サンとコレからも お隣りでいられる!」
草臥れた段ボールと機材が散らかるオレの部屋で、オレはユーヤ君の作った親子丼をつつく。
何コレ、めっちゃ美味いんスけどーー!!
「つっても、どーかなぁ……いつまでココにいられるやら、」
「何でです?」
「……まぁ、大人の事情がイロイロと。ねぇ」
仕事が無いんだよ、結局のトコ。
結局のトコ、機材 売らなきゃ来月の家賃とか諸々が払えない文無しなのよ。
でも こんなコトを言えば、ユーヤ君は実家に連絡してパパにオネダリかますんだろね。
そんなコトされたら、惨め過ぎて首くくるしかなくなっちゃうのよ、オレ。
(バイトは見つけねぇと。アクセク働かねぇと。
そんな中で どんだけの曲が作れるかっつぅ話だわ……
オレの名前が轟くトコなんて どっこにもねぇから、音源 送りつけるトコから やり直し。コレまでの人生、全部 仕切り直し)
オレは傍らを見る。
肩が触れ合う位置に寄り添うユーヤ君の楽しそな顔に、違う意味で腹くくる。
「曲は、書くよ。ユーヤ君の為に」
表に出なくても、金にならなくても、
ユーヤ君の耳にしか届かない、そんな小っさなサウンドでも。
キミが笑ってくれるなら、
「はい! 俺は石神サンの為にピアノを弾きます!」
キミのその笑顔だけで、オレは何度だって蘇えるんだ。
愛すべき、隣人の為に。
And that’s all?




