23 (ユーヤのツブヤキ4)
「しがないサラリーマンじゃなくて……」
『嬉しいだろぉねぇ、その作曲家!
そんなに絶賛されてるとは、知る由もなーい』
『ユーヤ君はユーヤ君の才能を伸ばすんに頑張ったらイイんだよ。絶対に。
きっと、何処かで そのセンセイは見守ってくれてるからっ、』
「石神サンが、」
{石神亮太郎、本人……?}
布団に寝かして俺が呟くと、石神サンの目が僅かに開く。
「ユ、ヤ、君……?」
「……、」
俺は何て言えば良いんだろう?
混乱してて、何が何だか分からない……
石神サンの目は熱でダルそうながら、ココが何処なのかを ゆっくり見回して確認している。
そして、自分の部屋だと思い出すなり、息を飲んで目を見開く。
「な、何でココにユーヤ君がいる、ワケ……?」
「ぁ、あの、俺、看病……」
別に、やましい気持ちがあったわけじゃなくて、
いつもお世話になってるし、俺がホームシックにもならずに一人暮らし何て出来るのは、石神サンが お隣にいてくれるからで、だから、本当に、純粋に……
石神サンに何かあったなら、その時は俺が1番に助けたいって、ソレだけで……
でもソレは、俺の独りよがりだったのかも知れない……
石神サンはゴクリ……と喉を鳴らして体を起こすと、
「か、――帰れ……」
「ぃ、石神サン、」
「帰れよ!!」
「!!」
苦しそうに絞り出される石神サンの声……
俺は石神サンの熱で火照った手にドン! と突き飛ばされた。
大した力は無い。けど、俺は腰を抜かして、
「石神、サン……」
全部、全部、ショックだったんだ。
この部屋での出来事が処理できなくて、走って部屋を飛び出す事しか出来なくて……
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