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おとなりダーリン。  作者: 坂戸樹水
22/36

22 (ユーヤのツブヤキ3)


 石神サンが倒れた……



「「石神サン!」」



 浅野先輩が同時に手を伸ばすから、狭い玄関で押しくらまんじゅう。

この一刻を争うと言う時に、玄関に挟まって2人して石神サンに手が届かない!!

ってか、邪魔! このメス、すっごい邪魔!!


「ちょ、浅野先輩、悪いんですけど引っ込んで貰えませんかっ?

コレじゃ、石神サンを介抱できないんでッ、」

「ゅ、由也クンこそッ、……ちょっと、何よ、この玄関 狭すぎるッ、」


 無駄に胸とかケツとかデカイから嵩張るんでしょぉがぁ!


「取り敢えず、部屋に運ばないとッ、先輩はどいてください!」

「私も手伝うから!」

「力仕事は男に任せてくださいよッ、」

「由也クンみたいなヒョロヒョロが、1人で石神サンを持ち上げられるわけ無いでしょ!?」


 何だとぉおぉおぉおぉ!?


「ぉぉぉ、男ですから俺ぇ!! 鍛えられてますから、俺の体ぁ!!」

「イイから、どいてぇ!」

「そっちこそ、どいてください!」


 ギュぅギュぅギュゥギュぅって、

こんなにも女体が煩わしく感じる事がある何て思いもしない!

もぉ、本当、本当にもぉ、



「帰ってくださーーい!!」



 俺の遠吠えに、浅野先輩はビックリしたみたいで腰を抜かす。

その隙に俺は石神サンに駆け寄り、浅野先輩を振り返る。


「俺、隣人なんで!

女の人に片付いて無い部屋とか見られるの、石神サンも嫌だと思うから!

ドア閉めて! 踵を返して! カンバックホーム!!」

「は、はぃ……」


 俺の猛威に押し負けて、浅野先輩はソロソロと石神家のドアを閉める。



{ 勝 っ た !! }



って、勝利に酔っている場合じゃありません。

額を触れば、石神サンが随分な高熱に魘されているのが分かる。

早く布団に寝かして、頭を冷やして上げなくちゃ!


{もしかして、朝から具合が悪かったのかな?

ソレなのに俺の部屋の鍵まで心配してくれて、朝ゴハンまで一緒してくれて、

何て良い人なんだろう……}


 心の中とは言え、チャライなんて連呼して ごめんなさい。

人は見た目で判断できない。石神サンはソレを地で行く人です。



{だから俺は、石神サンの事が好きで好きで堪らないんだ……}



「って、好き?」



{俺が? 石神サンを?}



 自分の呟きの意味が良く解からないまま、石神サンを肩に担いで奥の部屋のドアを開ける。



「――って、」



 目の前に広がる世界は、

パソコンと、オーディオインターフェイスと、キーボードにギター、マイク、高価なラックのエフェクターが山積みにされた、まさに音楽人の空間で……



「どぉ、ゆ、事……?」



 俺が驚いているのは、部屋の壁いっぱいに貼り付けられた段ボール何かじゃなく、窓枠に張り巡らされたガムテープじゃなく、

コレ等は全て、防音の為の処置である事だったり、

プロ級の機材で埋め尽くされているって事であったり……


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