22 (ユーヤのツブヤキ3)
石神サンが倒れた……
「「石神サン!」」
浅野先輩が同時に手を伸ばすから、狭い玄関で押しくらまんじゅう。
この一刻を争うと言う時に、玄関に挟まって2人して石神サンに手が届かない!!
ってか、邪魔! このメス、すっごい邪魔!!
「ちょ、浅野先輩、悪いんですけど引っ込んで貰えませんかっ?
コレじゃ、石神サンを介抱できないんでッ、」
「ゅ、由也クンこそッ、……ちょっと、何よ、この玄関 狭すぎるッ、」
無駄に胸とかケツとかデカイから嵩張るんでしょぉがぁ!
「取り敢えず、部屋に運ばないとッ、先輩はどいてください!」
「私も手伝うから!」
「力仕事は男に任せてくださいよッ、」
「由也クンみたいなヒョロヒョロが、1人で石神サンを持ち上げられるわけ無いでしょ!?」
何だとぉおぉおぉおぉ!?
「ぉぉぉ、男ですから俺ぇ!! 鍛えられてますから、俺の体ぁ!!」
「イイから、どいてぇ!」
「そっちこそ、どいてください!」
ギュぅギュぅギュゥギュぅって、
こんなにも女体が煩わしく感じる事がある何て思いもしない!
もぉ、本当、本当にもぉ、
「帰ってくださーーい!!」
俺の遠吠えに、浅野先輩はビックリしたみたいで腰を抜かす。
その隙に俺は石神サンに駆け寄り、浅野先輩を振り返る。
「俺、隣人なんで!
女の人に片付いて無い部屋とか見られるの、石神サンも嫌だと思うから!
ドア閉めて! 踵を返して! カンバックホーム!!」
「は、はぃ……」
俺の猛威に押し負けて、浅野先輩はソロソロと石神家のドアを閉める。
{ 勝 っ た !! }
って、勝利に酔っている場合じゃありません。
額を触れば、石神サンが随分な高熱に魘されているのが分かる。
早く布団に寝かして、頭を冷やして上げなくちゃ!
{もしかして、朝から具合が悪かったのかな?
ソレなのに俺の部屋の鍵まで心配してくれて、朝ゴハンまで一緒してくれて、
何て良い人なんだろう……}
心の中とは言え、チャライなんて連呼して ごめんなさい。
人は見た目で判断できない。石神サンはソレを地で行く人です。
{だから俺は、石神サンの事が好きで好きで堪らないんだ……}
「って、好き?」
{俺が? 石神サンを?}
自分の呟きの意味が良く解からないまま、石神サンを肩に担いで奥の部屋のドアを開ける。
「――って、」
目の前に広がる世界は、
パソコンと、オーディオインターフェイスと、キーボードにギター、マイク、高価なラックのエフェクターが山積みにされた、まさに音楽人の空間で……
「どぉ、ゆ、事……?」
俺が驚いているのは、部屋の壁いっぱいに貼り付けられた段ボール何かじゃなく、窓枠に張り巡らされたガムテープじゃなく、
コレ等は全て、防音の為の処置である事だったり、
プロ級の機材で埋め尽くされているって事であったり……




