私がなぜこの世界に入ったのか
今日でテスト1週間前。
もちろん部活も停止。
部活がないのは悲しいけど、少し嬉しい。
そんな今日の私の気持ちを誰もわかってくれない気がして、少しさみしいな……。
ーー2ヶ月前。
学年末テストが終わり、答案用紙を父に見せた。すると、
「お前、やめたいんか?」
と聞かれた。
「え、」
「だから、お前、部活やめたいんか」
「い、いやや……」
なぜか戸惑った。もしこれが1学期の中間テストだったら、
「はぁ!? 絶対にいやや!」
って言えるのに、なぜか迷った。
「もし次のテストで成績落ちたら部活やめさせる」
父はそう言い放った。
悔しくて、1人部屋で泣いていた。
そしてついにこのとき。この1週間で私の人生が決まるようなものだ。
塾にいくと、塾長がしつこく
「美織ちゃん、今回のテスト……」
「美織ちゃん、あなたはもっとかしこくなれるのよ」
あーもう。うるさい。
私が質問するたびに長話するし。
7時ごろ。私はお茶がなくなったので、自動販売機に行くことにした。
少し塾から離れていて、小さな神社の鳥居の前にある、全て100円の、私のお気に入りの自販機。
「はぁー。もう疲れた」
向かってる途中、独り言を言った。そして、なんとなく空を見上げた。
「うーえをむーうーいーて あーるこー」
寂しい真っ暗な空で、この曲が浮かび、なんとなく適当に歌っていた。
小4のとき、バンドでこの曲やってたな。
また部活のことを考える。
そういえば、なんでバンドに入ったんだろう。
別に、無理やり親に入らされたわけではない。自分から吹奏楽の世界に入ったんだから。
……思い出した。
私は、金管バンドに入る前の小3の時まで、本当に本当に普通の女子だったんだ。
テストは簡単なものならノー勉で100点、簡単ではなかったらちょうど平均と同じくらい。
みんなバスケやチアなど、自分の個性を持っていた。
私の、個性ってなんだろう。そう考えると、何もない日々だった。
小4の6月、みんなと違う、特別なことをしたいって思ったんだっけ。
特別なことってゆーか、みんながなかなか出来ないことをやりたいって思ってたんだ。
それで、たまたま目にしたのが金管バンドのチラシだった。
『ちょっとやってみようかな』
とそれが始まりだったっけな。
それが今の私に繋がっているんだ。
なんで泣いてるんだろう。
もうなにもできない気がする。
例えるなら、スーパーのこと。
今の吹部の皆がお惣菜コーナーに売っている美味しそうな今日作られたばかりの天ぷらだったら、私は3日前に作られた端っこにあるしなしなになったひとりぼっちの唐揚げ。変な例え方だけど。
別に仲間はずれにされている訳じゃないし、2年生全員が仲がいい。
それに、先輩に1stの楽譜を押し付けられるのは構わないし、先輩が仲良くて私が取り残されても仕方がない。2年生は、私1人なんだから。
演奏面でも、私は、トランペットパート3年生の先輩方3人をサポートする、ただ1人の2年生。
逆に言うと、1年生2人の事もサポートしなければいけないただ1人の2年生。
しばらく、私は何もわからないまま部活をやっていたかもしれない。
もし、このまま成績が落ちて、退部したら、また小3の頃にもとどおり。
なぜテストの結果が悪かったら部活をやめなければいけないって?
顧問が言ってた。
「なにごとも一生懸命にできないから」。
じゃあ、いま、私にできる全力のことをこの1週間でだしきればいい。
そして、また1週間後の部活に、笑顔で参加すればいい。
「上をむーうーいーて あーるこー」
誰も聞いていないよね。
私がなにをやるにしても、全力でやればいいんだ。
歌詞の通り、星がにじんだ。
結局、何を伝えたかったのかよくわかりません。
ただ、自分がこの世界に入った理由を探りたかっただけみたいです。
読んでいただき、ありがとうございました。
美織