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俺は神を信じない  作者: コハ
18/21

十七話

十七話になります




事件が起こって二ヶ月が経った。

捜査も終わり、この事件は解決していた。

結果を言うと、両親は首を吊って自殺、弟は母親に包丁で腹部を十数か所刺され大量出血によるショック死との事。

要するに無理心中と言う事だ。

この心中をした動機が、多額の借金で精神的に耐えられなくなり、自殺に追い込まれたということらしい・・・・・・。

弟は心中に反対した。死にたくないから当然だろう。

だけど、母親に部屋まで追い詰められ殺されてしまった・・・・・・。

その後に両親は自殺をしたとの事だ。



借金の原因・・・・・・それは詐欺だった。

俺が買って当たった宝くじの情報が漏れ、聞いたことのない宗教団体が実家に訪れたらしい。両親はそいつらの口車にのせられ、その宗教団体にのめり込んでしまった。

そして宝くじで当たったお金どころか、貯金全てをその宗教団体に貢ぎこみ、払えなくなったら闇金からお金を借り、多額の借金をした。そして闇金から返済を求める重圧に精神的に追い込まれ、無理心中を行った。

その宗教団体は情報を突き止め、無事に警察が取り押さえ込んだみたいだ。

なぜ、宗教にのめり込んだのかという情報も警察は得ていた。



原因は、俺の事故が原因だった。

足をなくし、義足で歩こうと頑張っている俺の姿を見て、家族は応援している気持ちとは裏腹に、毎日悲しんでいたらしい・・・・・・。

そこで、その詐欺の宗教は宝くじの情報と俺のリハビリの情報を入手したところで家族に接触した。



『神が、あなたの息子を助けてくれるでしょう』と・・・・・・。



家族は藁にも縋る思いで宗教に入った。

それからというもの、俺のリハビリは予想よりも早く進み、効果が出ていると思い込んだ家族はさらに宗教にのめり込んだ。



これが、この事件の全てだ。

要するに、全部・・・・・・俺が原因なのだ。

俺が、家族を壊してしまったのだ。

最悪だ。

神田家は、俺一人になってしまった・・・・・・。

全ては、あのおまじないが原因で、始まりで・・・・・・俺の家族は死んでしまった。

宝くじで当たったお金は全部無くなり、俺の右足も無くなった。

会社も辞め、これからは障害者として生きていく。

俺の人生はめちゃくちゃで、俺の世界は壊れていた・・・・・・。

リハビリは続けていたため、ぎこちないがなんとか歩けるようになっていて、医者からはこの調子だともう少しで退院できると言っていた。



「・・・・・・」



俺は今、病室で横になっている。

放心状態というやつだろう。何もせず、何も考えず。

最近はこんなふうに時間を過ごすのが多くなっていた。リハビリをしない日もあった。

ただ病室に一人でいるだけだった。

窓を通して外を見ると、綺麗な橙色した夕日が俺の病室から見えた。

何故だろう、まるで何かを決心したかのように俺は深呼吸をした。

俺は退院するときに準備していた服に着替え、珍しく病室を出た。

そして俺は、公衆電話である人に電話をした。



「話があります・・・・・・・・・・・・はい、お願いします。では後で」



受話器を置くと、俺は病院からも出ていった。

何処に、何の用があるのか。

言うなれば、事故を起こして入院している時からずっと気になっていた事だ。

聞きたいことがあった。

だから俺は、その人に・・・・・・大竹さんに会いに行った。

率直に言おう。

大竹さんに会った途端、顔面を殴られた。

交通事故で右足を無くし、片足義足にまだ慣れてなく、その上家族が無理心中をし、精神が落ち着いてない人を殴る大竹さんは大胆な事をしたなと思った。

自業自得だし、しょうがないことだ。

その場で殴られた後、周りのことなんか気にならなくなるくらいに散々怒鳴られた。言いたい事が山ほどあったのだろう。全然話は尽きず、俺は大竹さんに何も言わずにずっと説教を聞いていた。

長い説教も終わり、大竹さんが怒鳴りすぎて喉が渇いたという事で、とりあえず場所を変えて話をする事にして近くの喫茶店に寄った。



「さっきはすまなかった。急に怒鳴ってしまって」

長い沈黙から大竹さんが話しかけた。



「いえ、元はと言えば俺の自業自得で・・・・・・」

「いや、俺がおまじないを教えてしまったせいだ」

「違います!自分がしてしまった事です。大竹さんは、何も・・・・・・悪くありません」

「・・・・・・」

「・・・・・・」



つい熱くなってしまい大竹さんは黙ってしまって、また静かになってしまった。



「・・・・・・右足は、義足なのか?」

長ズボンで義足を隠しているところを、大竹さんがチラッと見た。

「あ、はい。事故で轢かれた時に・・・・・・。それにその右足まだ見つかってなくて・・・・・・」

「持っていかれたか」

「・・・・・・はい」



大竹さんは知っている、すべて正直に話そう。

俺は二回目のおまじないをした後のことを、つつみ隠さず全てを話した。



「・・・・・・そうか」

大竹さんは、とても悲しい顔をした。俺のせいで。

でも、今日は俺は大竹さんに聞きたいことがあってここに来たのだ。

だから俺は聞いた。



「大竹さん、聞きたいことがあります」

「・・・・・・言ってみろ」

「宝くじの当選金額を上げるなら、あの絵を黒色から赤色にするだけでいいと言いましたよね?」

「ああ、確かにそう言った」

「そして俺の、足は持っていかれた」

「・・・・・・」

「じゃあ、赤にしなくて、もう一度黒にしたらどうなっていましたか?」

「たぶん、また髪とか悪くて爪とかだろう」

「そして、当選金額は前回と同じ百万円くらい・・・・・・ってことは」

「さすがにそろそろわかるところだろ。そうさ、当選の金額と『代償』の値段は比例しているということだ。『代償』の価値が高ければ高いほど、当選金額は高くなる」

「やっぱり、そうだったんですか・・・・・・でも、どうして教えてくれなかったんですか?」

「・・・・・・悪かった」



大竹さんは何も言い返さず、俺に頭を下げて謝った。



「いえ、結局やってしまった自分に責任がありますし、大竹さんが謝ることじゃないです」

「・・・・・・」



大竹さんは何も言わなかった。

そして俺は、あと一つ聞きたいことがあった。



「あと一ついいですか?」

「・・・・・・ああ」

「前から気になっていたんですけど、大竹さんはこのおまじないをどこで知ったんですか?」

「・・・・・・雑誌で読ん・・・・・・」

「嘘は言わないで下さい」



嘘だとわかっていたから俺は割り込んだ。



「・・・・・・ッ」

「本当の事を言ってください」

「・・・・・・親戚から聞いたんだ」

「親戚ですか?」

「ああ、あいつはどこからこのおまじないを聞いたかは知らんが、会った時に楽しそうにこの事を話してくれた」

「その人は、おまじないをしたんですか?」

「したよ」

「それで、その人はどこを?」

「全部だ」

「ぜ、全部って・・・・・・」

「言ったとおり全部だ。体ごと、持っていかれたんだ」

「そんな、ってことは」

「死んだってことだろうな」

「・・・・・・い、いつごろですか?」

「新聞見てないか?いや、あんな状態じゃ見る余裕もないよな。去年の大晦日、山里あすかって人が失踪したっていうやつなんだけどさ」

「大晦日・・・・・・」



俺の事故の次の日だったのか。



「そう・・・・・・ですか。でもなんで、おまじないだと?」

「あいつ、去年やったおまじないが初めてじゃなくて、五年も前からやっていたんだよ。それで当たったお金全部使って、お金に溺れて、その次もやっていたんだ。それがこの結果だよ」

「親戚を・・・・・・」

「ほんと、馬鹿だよな」



大竹さんは悔しそうな顔をしていた。



「・・・・・・大竹さんは」

「ん?」

「大竹さんは、おまじないはしていないんですよね?」

「ああ、していない」

「なんで、しなかったんですか?大竹さんはおまじないとか占いとか好きですし、ましてやおまじないをして成功している人がいたっていうのに」

「・・・・・・」



大竹さんは、少し間をおいて答えた。



「怖かったんだ。やろうとはした、だけど・・・・・・代償のことを考えると、怖くてどうしてもできなかったんだ。だから、俺は逃げるようにお前にこのおまじないを勧めたんだ」

「そして、俺はおまじないをして・・・・・・」

「本当にすまないと思っている。取り返しのつかないことをしてしまったと思っている。俺は、とんでもないことをしてしまったんだ。神田・・・・・・ごめんな」

「謝らないでください。俺が、最初のおまじないで終わっていれば良かったんです。お金の欲しさに、過ちを犯してしまった俺が・・・・・・悪いんですから」



大竹さんは、うつむいて組んだ手を震わせていた。

それを見て、俺はなにも言えなかった。



「神田」

「はい」

「頼む、もうおまじないはしないでくれ」

「・・・・・・はい」



俺はこれ以上、おまじないに関する話が聞き出せなかった。

その後も、少し話をして俺は大竹さんと別れた。

たまには会社にも顔だせよと大竹さんは優しく言ってくれた。



「・・・・・・」



俺は病室に戻っていた。

また一人で何もせず、何も考えず、ずっと白い天井を見上げているだけだった。たまに目をつぶり、また目を開き、いつのまにか寝てしまっていたりをずっと繰り返していた。

そんな日々を過ごし、あっという間に俺は退院した。

俺はまっすぐ家に向かった。

実家ではなく、一人暮らしをしていたあの家に・・・・・・。実家の方は、家を壊して土地を売る事になった。だから、一人暮らししていたあの家が俺の家だ。

いつもの見慣れたぼろアパートを全体的に見回し、俺は玄関に向かった。



「・・・・・・?」

すると、ドアの前にスーツ姿の知らない二人組がいた。



「あなたが、神田さんですか?」

近づいてきた俺に気付き、声をかけてきた。

「はい、そうですけど」

「私、こういうものです」

俺はその人の名詞を受け取った。



「・・・・・・」



大竹さん、俺はやっぱりおまじないをしないなんて事はできません。

もう、手遅れだったのです。おまじないから逃げる事は、できないのです。

俺の両親は詐欺に会い、お金を貢いだ。

そして借金もした。だから来たのだ。

借金取りが・・・・・・。





ありがとうございました!


次話もよろしくお願いします( ..)φ

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