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俺は神を信じない  作者: コハ
10/21

九話

明けましておめでとうございます


九話になります


神田誠  主人公

前田智  同僚で同い年

山田繁人 同僚で五つ上の先輩

大竹一哉 同僚で先輩。おまじないを勧めた人



神社でお参りも終わり、前もって予定に入れていた屋台で昼食をとることにした。

俺の甘酒の提案は夜、一度実家に顔を出すため解散して、その後にまた俺の家で集合して静かな飲み会をする事にした。

屋台も予想通り人がいっぱいで、席もギリギリな状態だったが、なんとか手に入れた席にすわり、昼飯を食べている。

三人ともいろんな物が食べたいとの事なので、たくさん注文して、それを分ける事にした。

定番なたこ焼き、焼きそば、ホットドッグ、お好み焼き、そして最後にシャーベットを三人で分けて食べていた。



「お、そろそろ時間じゃね?」

山田さんは自分の腕時計で時間を確認して言った。



「あ、そうですね。じゃあそろそろ・・・・・・」

そして俺はスマートフォンを取り出し、ワンセグを起動した。



現在十一時五十五分。

十二時には、ニュースで年末ジャンボ宝くじの当選番号が発表される。

あと五分で当選番号が発表される。

周りを見渡すと、ほとんどの人がワンセグを見たり、ラジオを聞いて、発表を待っていた。

屋台で流しているラジオもチャンネルを合わせていた。



「なんか、ドキドキするね」

前田が少し興奮気味だった。

「まあ、当たらないのが普通だけどね」

「神田、そんなマイナス思考じゃ当たるのも当たらなくなるぞ」

「そう言われてもなぁ」

「じゃあ、宝くじを出して、番号がでたら確認するぞ」

「「うぃす」」

俺と前田は山田さんの言葉に了解した。



ちなみに、今回の当選番号の発表方法は、現在の内閣総理大臣のこと阿部内閣総理大臣が、箱の中にある0から9の数字が書かれた紙を一つずつ六回引き、引いた順に右側の数字からうめるとの事だった。

総理大臣自ら発表に携わるのは、極めて異例である。

俺の宝くじは十枚。

すごい人は宝くじを何百枚も買うのに、それでも当たらないって言うくらいだから、相当運が良くないと宝くじは当たらないのだろう・・・・・・。

たかが十枚しか持ってない俺が当選するわけない。



「あーあ、これで外したら大竹さんにめちゃくちゃ文句言おうかな」

「ははっ、その時は俺も一緒に言ってやるよ」

「さすが山田さん、頼りになります」



そして総理が全てのボールを引き終わり、当選番号が発表された。



『さあ!それでは、年末ジャンボ宝くじの当選番号を発表します!』



テレビに映っている司会者がこの言葉を言った瞬間、周りの空気は一気に緊張しはじめ、静かになっていた。

とても参道とは思えないほどのピリピリ感、みんな本当に参拝客なのだろうか?と、気になってしまうほどだった。

その影響だろうか、自分も緊張しているのがわかった。



『さて、一等の・・・・・・』

 空気が張り詰める。  



『当選番号は・・・・・・』

そしてついに、発表される。



『21組、182293!21組の182293です!当選した方、おめでとうございます!続いては二等の発表に移ります・・・・・・』



一等の当選番号が発表された途端、周りの人たちのため息でいっぱいになっていた。

それもそうだろう、そう簡単にあたるはずがない。

この世に救いの手を差し伸べる神なんていないんだ。

俺、髪ないし・・・・・・。

二等の発表も終わり、周りの人たちは緊張が解け、またにぎわい始めた。

三等以降の発表もしているが、インターネットで更新されるため、そっちで確認をした。



「おい神田、どうだった?お前のは当たっているか?」

「え、ああ、いま調べます。山田さんと前田は?」

「「だめ」」



全滅だったらしい・・・・・・。

そして俺はたった十枚しかない宝くじを、ネットに掲載されている当選番号と見合わせる。

一枚目・・・・・・違う。

二枚目・・・・・・違う。

三枚目・・・・・・四枚目・・・・・・。

俺は次々と調べる。



「はあ、やっぱだめなのかな・・・・・・」

前田ががっかりした感じで言った。



「宝くじってそんなもんでしょ。そう簡単に当たら・・・・・・ない・・・ん?」

「ん?どうした神田」

俺の反応を見て山田さんが聞いてきた。



「あ、いや、発表された当選番号と同じなんですけど、これって何等なんですかね?」

「おお、どれどれ?えーとこれは三等だな」

「三等か、やったな!三等でも当たれば十分だよ」

「んで、三等っていくらなの?」

俺と山田さんの会話に、前田がだらけたような顔で聞いてくる。



「えーっと、三等はっと・・・・・・百万円」

「なんだ、たった百万か・・・・・・」



「「「・・・・・・・・・・・・」」」



「百万!」

「ひゃ、百万って・・・・・・ええ!」

「ひゃ、ひゃく、ひゃく、ひひ、ひゃひゃ!」

「お、落ち着いて下さい山田さん!」 



俺たちは少し沈黙して急に我に返ったように叫んだ。

山田さんはあまりの金額に一瞬おかしくなっていたが・・・・・・。

三人とも意味もなく勢い良く席を立ち、でこがぶつかるくらいに顔を近づけ顔を合わせる。



「マジか?これってマジなんだよな!」

「そうだぞ神田、当たったんだよ!」

「やったじゃん神田!」



当たった・・・・・・当選した。

百万円が当たった!

やった。



「やったああああああああああ!」



俺たち三人は屋台の中で万歳して大声で騒いでしまい、屋台の人に追い出されてしまった。

そんな事も気にせず、参道で前田と山田さんは二人で俺を胴上げしてくれた。

人生初めての胴上げ。

とても気持ちが良かった。

「やった!当たったよ!」



俺は当選した時の気持ちが抑えられず、実家に帰ってきても興奮しきったままだった。

もちろん、親は俺が宝くじを買った事は知らない。



「おおっ、急にどうしたんだ誠?」

「あら、意外と早かったわね、来る時連絡してって言ったのに」

「それどころじゃないんだって!当たったんだよ!」

「あ、兄ちゃん、あけおめ」



弟が二階にある自分の部屋から降りてきた。

家族は全員揃っていた。



「おう!聞いてくれ、なんと宝くじが当たったんだよ!百万だぞ、百万円!」

「え、まじで?すげぇじゃん!大金持ちじゃん!」

「うそ、本当なの?お母さん嬉しいわ!」

「そうか、そうだったのか!凄いじゃないか誠」



俺の話を聞き、家族みんなが驚いて、喜んでいた。



「だろ!もう嬉しくって舞い上がっちゃったんだよ」

「ほんと、誠は我が家のヒーローね!」

「いやー、宝くじで百万当てたくらいじゃヒーローになれないって!」

「お前も言えるようになったなぁ。はははは!」



宝くじのおかげで俺はいろんな事に吹っ切れた気がする。

前まで、あの時の母親が目に焼き付いて怖かったが、今は全然何ともない。

母親が怖い、だから何?

母親は母親だろ?

今はそんな感じでいられて、すごく楽に母親と触れ合えている気がする。



最初は坊主になった時は正直ショックだった。

もうショック、大ショック。

頑張って伸ばしたのに、髪の毛が無くなった時は絶望的になったほどだ。

だけど今は全然何ともない。

むしろ胸を張っていける。

前田と母親には、大人らしいとも言われ自信がついていた。

これからは長髪ではなく、短髪でいこうと思っているところだ。



後は、大竹さんが教えてくれたあのおまじない。

もしかしたら、もしかしたらだけど、この宝くじが当たったのはきっとあのおまじないのおかげかもしれない・・・・・・。

大竹さんの教えるおまじないのことは、まったく信用していなかったが、この件を境に少しは信用しても良いのかなと思ってきた。

ここまで信用されなかったのは、デタラメなおまじないを教えた大竹さん本人のせいだとつくづく思うのだが・・・・・・。

大竹さんに会った時には、ちゃんとお礼を言おう。



そして最後。

吹っ切れたわけではないが、ついでに言っておく。

何度も言っている事で申し訳ないのだが、俺は・・・・・・神とやらをまったく信じていない。

そう思っている。

今でも・・・・・・そう思っている。

だけど何故だろう、少しずつ俺の心は揺らぎ始めている。

大竹さんの教えてくれたおまじないが始まりなのかのように、俺にいろんな事が起こった。

急に体調が悪くなるし、母親には坊主にされるし、それを母親は覚えてないと言うし、宝くじが当たるし、不思議な事が連続的に起こった。

もしかしたら、もしかすると。



この世界をどこからか見ているかもしれないと・・・・・・。



考えすぎだろうか。

きっと考えすぎているだけなのだろう。

正直、今の俺の心情から言うなら



『そうであってほしくない』



あいまいな言葉だが、これが今の俺の答えだ。

俺が今話せるのは、これくらいである。





ありがとうございました!


次話もお楽しみにm(__)m

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