6.日常
本日一話目!
何処かの学校、今は月が出ている夜であり、一つの教室でのこと。
「ふ、ふふっ…………は、はははーーーーーーーーっ!!」
夜の学校に男の笑い声が響いていた。目の前には数人の死体。
笑っている男は血塗れになっている透き通った剣を持っていた。冬に着るような薄い水色のコートを着ており、まだ梅雨の時期である季節には合わない。
笑っていた男の身体が分裂し、学生服の男と白に近い水色の髪をした少女が現れた。
「どう、この力を使った感想は?」
「最高だ!俺様だけの力を手に入れたんだ!!これが興奮しないわけないだろ!?」
「そう、良かったわね。私も貴方がパートナーで良かったわよ」
少女は暗い笑みを浮かべて、賛辞する。同族であろうが、手にかけることが出来て笑えるという心を持っていることに少女は喜んでいる。
「さぁ、貴方を今まで馬鹿にしたクズ野郎を殺し回ろうね」
「そうだ、馬鹿で少し力が強いだけでいばり散らす奴ら、この俺様を虐めた報いを晴らしてやろうじゃないか。そうだ、これはクズの掃除であり、俺様は正しい!!」
まだ笑い足りないというように、笑い続ける学生の男。少女もその笑いに合わせて深い笑みを浮かべる。
「はははっーーーーー!ユメノコ、やろうじゃないか!!」
「えぇ、武、好きなのだけやりなさい。私は力を与えてあげるわ。ふふっ…………」
一つの波が動く。現代における日常が壊れ始めていくその波が…………
氷雨とココネが出会った後の翌日になる。気絶したココネが目を覚ましたのは一時間後で、その後に詳しく話を聞いて、氷雨は大体のことは理解した。
朝になり、朝ご飯を準備していた時に今まで寝ていたココネが目を擦りながら、氷雨の元に寄っていた。
「おはよう~~」
「抱きつくな。今はご飯の準備をしているから、椅子に座って待ってろ」
「はぁい~~」
ココネはまだ眠いようで、伸びた声で返事をしている。料理の邪魔にならないように、椅子へ向かうココネ。
「あ、テレビを付けてくれ」
「てれび~~?」
「あー、知らないんだったな。じゃあ、あの黒い四角い奴のを取ってくれ」
「ん~、これ?」
ココネの手に持ったのはテレビのリモコンである。氷雨はココネからリモコンを受け取って、電源を入れた。テレビからニュースが流れる。
『神奈川県の◯◯学校で殺人事件がありました。被害者はその学校の学生三名で、刃物にて斬り付けられていました』
殺された三名の顔写真が出て、三名とも同じ制服を着た男性だった。
『この事件はまだ犯人が捕まっていないので、帰り道などにお気をつけて下さい…………』
「ふむ、ここは危ない町になったものだな」
「もしかしたら、悪魔と組んだ者の仕業かもしれないよ?」
目が完全に覚ましたのはココネがそんなことを言ってくる。
「あれ、殺された人間は神の玩具に処理されるんじゃなかったのか?」
「ううん、神の玩具が処理をするのは、悪魔と組んだ人間が死んだ場合だけだよ」
「成る程。関係ない奴が死んでも放っておかれるってわけか」
ココネと談笑しながら、朝ご飯を盛り付ける。その様子を見たココネが、
「美味しそうな匂い……、氷雨って料理が出来るんだね」
「まぁ、一人暮らしだから出来るというより出来なければならなかったが正しいかな」
親からの仕送りはあるが、そんなに多くはないのでいつでもコンビニ弁当や外食をしたらすぐになくなってしまう。だから、料理を覚えなければ一人暮らしが出来なかったのだ。
「今はココネも一緒だから、食費や必需品を買うお金が必要だが、今は大丈夫だな。週に一回はお金を手に入るチャンスがあるしな」
神の試練で勝ち残れば、お金が入るから親に相談しなくて済む。というか、ココネのことを話せないので神の試練は氷雨にとっては助かることだ。
「あー!オムライス!!」
「やっぱり、向こうの食事と変わらないのか?」
「うん、違う所もありそうだけど、大体は同じだよ」
氷雨は魔界という別世界が気になっていた。地球のと何が違うのか?それらは、昨日にココネが知っているだけ教えて貰ってある。
それは地球に近い環境であり、悪魔は人間よりは強い身体を持っているけど弱点は人間のと変わらないし、餓死や凍死、酸素がなければ生きていけないなどと完全な種族ではないようだ。
だか、神だけは違うらしい。神は何をしても絶対に死なないし、世代が変わるまでは生き続ける。
つまり、期間限定だが不死身になれるのだ。
「ココネは神になりたいのか?」
「ううん、なりたいとは思わないけど、私には目的があるからね」
「目的ね、昨日に言った奴だな」
ココネの目的、この戦いで勝ち残りたいのはある目的があったからだ。
ココネは魔界では、ジルアール家と言う貴族なのだ。ジルアール家ではココネも含めて子供が七人もいて、一番下の妹になる。
ココネは能力が攻撃性能を持たない落ちこぼれだということで、家族から嫌われて、虐められていた。だから、ココネは思った。
見返したい。
認められたい。
といった単純なことだが、ココネはここで生き残るための目的になっていた。
「そういえば、親は同じだよな?能力は同じじゃないの?」
「うん、家族全員で同じ能力を持っている人はいないよ。能力は受け継がれないからね」
「ふーん、珍しい生態なんだな。悪魔は」
能力が全く受け継がれないのは珍しいと思っていた。DNAとか詳しくはないが、七人も生まれて、誰一人にも受け継がれないのは単なる身体の作りが違うのか?
ココネは見ただけでは悪魔ではなく、人間にしか見えない。人間が死んでも何とも思わないのは、同族ではないだからだと考える。だが、俺が死ぬのは嫌と言ったり、抱きつかれる程に懐くのか全くわからない。
「…………まぁ、ココネはココネだしな」
ココネをジーと見てもわからないので、ココネだからと理由で納得するのだった。見られていたココネはまた頬を染めてもじもじしていた。
「あ、あの、私は氷雨なら…………」
「あ、早く食べないと時間が間に合わないな」
時計を見て、そろそろ食べ終わらないと学校の時間に間に合わないなとご飯をさっさと食べ始める。
正面に座っているココネは頬を膨らませていた。
「むーー!」
「どうした?早く食べないと間に合わないぞ」
「わかってるよ!!」
ココネもガツガツとご飯を食べ始めた。まるでヤケ食いのような姿だったが、氷雨はそれに気付かず、テレビの音声に耳を傾けていた。
他は特に気になるようなニュースはなかった。
氷雨とココネはご飯を食べ終わり、制服に着替えて玄関にいる。
「行くぞ」
「うん」
ココネも一緒に学校へ行くかと思えば、ココネは氷雨の後ろに回って、影の中へ入っていったのだ。
悪魔の皆は、簡単に他の悪魔へ見つからないように身を影の中へ隠すことが出来るのだ。だが、身を隠せる影は『悪魔融合(デビルフュージョン』を経験したパートナーの影だけだ。
「便利なモノだな」
『うん、簡単に見つからないようになっているけど、察知に長けた悪魔だとバレてしまうけどね』
『悪魔融合』をした時と同じように頭の中へココネの声が流れてくる。
(そうなのか。ココネは?)
『私は察知に長けていないけど、一メートルぐらいの近さだったらわかるかもしれない』
(成る程、あまり期待しない方がいいな)
一メートルぐらいでは、すれ違うぐらいの距離がないと難しいから期待はしない方がいいと判断した。
(俺がいいと言うまでは出てくるなよ?影から出てくるのを見られたら後が面倒だしな)
『うん、氷雨の迷惑にならないように気をつけるよ』
ココネは氷雨の言うことを聞くので、あまり心配はいらないが、向こうが周りに人がいる時に攻めてきたらどうしようかと考えたらココネが答えてきた。
『向こうの悪魔も出来るだけ目立ちたくはないから大丈夫だと思うけど、人間には馬鹿もいるからね……』
(あー、お前を襲ってきた奴のことを言っているのか?)
『うん、あの馬鹿は夜だったけど、周りに人が数人はいたのに、影から悪魔を出して、融合していたからね』
(…………それは大丈夫だったのか?)
『んー、わかんない。すぐに逃げていたから』
テレビのニュースではそんな騒ぎになったようなことは流れていなかった。多分、暗かったから見えなかったか見たのを信じてなかったとか。それか、話したけど信じてもらえなかった可能性もある。
「まぁ、大きな騒ぎになっていないならいいさ」
そう呟きながら、学校へ向かっていくのだった…………