表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれの悪魔っ娘の手を取る  作者: 神代零
1章 初の経験
2/14

1.ココネ・ジルアール

 


 謎の少女を河原で見つけた氷雨は、自分の家へ連れて帰った。河原にいた時、呻き声を出せるぐらいの意識は戻っていたが、今はまた意識を失っている。


 服がびちょびちょでそのままベッドに寝かせるにはいかないので、服を脱がしてタオルで拭いた。

 見た目は小学生のように小さかったのもあり、氷雨はロリコンではないので、パッとすぐに終わらせた。

 少女が着るような服はもちろん、持っているわけがないので、大きめのTシャツを着せてからベッドに寝かしてあげたのだった。




「よし、やることはやったな。傷も無かったからすぐに目を覚ますんだろう。しかし……」


 氷雨は河原で起きたことを思い出していた。少女に触れた時に光ったことだ。




(なんか、ラノベで似たようなのあったような?)


 氷雨は本棚に向かい、相手に触れたら光ったという話があったと思われる本を取り出す。本のタイトルは『ペットと行く異世界巡り』と書かれている。




(これだ、この話に書いてあったような気がするんだよなー)


 謎の少女が寝ている側に座り、パラパラと読み流しをしつつ、状況に似たようなのを探してみる。

 パラパラとラノベのページが流されていき、無かったら続編に手が伸びる。それを繰り返して……………………ようやく見つけた。




「あった、ええと、我と契約をし、共に先へ行こう…………ん?まさか、契約?」


 手が光った状況と似たようなのは、ラノベでは契約と酷似していた。氷雨はまさかね……と思っていた時、ベッドで寝ていた謎の少女が目を覚ました。






「うぅっ……、こ、ここは?」

「ようやく起きたか。ここは俺の部屋だ」

「っ!?」


 謎の少女は意識を完全に覚醒し、声を掛けられた者から離れようと、部屋の角まで飛び上がって掛け布団がふわっと曲線に投げつけられる。




「あ、貴方は……?」


 謎の少女はすぐに周りを見て、氷雨が1人だけだとわかった時、少しホッと息を漏らしていた。




「そんだけ、元気なら平気みたいだな。俺は氷雨。河原でお前を拾ったんだよ」

「拾ったって……、私はペットや物ではありませんが…………でも、助けて貰い、介護までしてくれたことに変わりはないので、お礼は言います」

「おう、なんでそこで倒れていたのか、聞きたいが……その前に、名前を聞かせてもいいか?」

「あ、すぐに自己紹介をしなくて、申し訳ありません!私はココネ・ジルアールと申します」


 慌てながらも、すぐに謝って自己紹介してくる辺りから、育ちが良いのが見える。だが、聞き逃せないことを聞いたような気がした。




「はぇ?ココネ・ジルアール……?日本人じゃないのか」


 綺麗な黒髪を見て、顔立ちも日本人のと変わらないから外国人のような名前で驚いたのだ。




「あの、ニホンジンとは?」

「ん、知らないのか?もしかして、外国人とかは?」

「ガイコクジン?」

「…………」


 おかしいと氷雨は思った。いくらでも、この少女は日本語を話していることから日本人ぐらいは知っていると思ったが、外国人の意味までも知らない。まるで、別の世界から来たような。

 そこまで話していた時、氷雨は聞きたいことを思い出した。




「そういえば、お前に触れたら手が光ったんだが、何か知らないか?」

「えっ……?」


 そう言われて、ココネは咄嗟に自分の手を見ていた。氷雨もココネの視線に合わせて見てみたら、手の甲に複雑な文字の集合体みたいのが見えた。

 その紋章に気付いたココネは目を大きく見開いていた。




「んで、何か知っているなら教えてもら…………ぐぅっ!?」


 話をしていた氷雨だったが、続きを言うことができなかった。何故なら、ココネが突進と言ってもいいぐらいの強さで腹へ飛び込んで抱きついてきたからだ。




「う、うぇぐっ…………よう、やく……パートナーを…………」


 ココネは泣いていて、氷雨の服を濡らしていた。氷雨はいきなり泣き出して抱きついているココネをどうしようかと困っていた。




「おい!何だかわからねぇから、説明しろよ!!説明しないなら、すぐに追い出すぞ!!」

「ヤダヤダ!!ようやくパートナーに会えたのに、別れるなんて嫌!!」


 抱きつく力が強まっていき、さっきまで大人らしくあろうとする雰囲気を持っていたが、今はただ泣き虫のガキにしか見えず、無理矢理に引き離そうとは思えなかった………………………………と思うか!


 氷雨は氷雨だ。




「痛い!?」

「こっちは説明なしでわからねぇことばかりなんだよ!!泣いてねぇで、説明しろよ!!」


 氷雨は拳骨を頭の上へ落とし、痛がっている内に引き離した。泣いている子供へやることではないが、氷雨はやる。




「痛ぃ……でも、嬉しい……」

「げっ、変態だったのかよ」

「ち、違うよ!だから、すり足で離れようとしないで!!傷付くから~~~~!!」


 話が進まないと思ったので、すり足で後ろへ逃げるのを止めて、ココネの前に座った。




「念のために言っておくけど、嬉しいと言ったのは、パートナーに会えたからなの!」

「それはわかったから、抱きつこうとするな。で、パートナーとは何だ?」


 ジリジリと抱きつこうと近付くココネの頭を抑えて質問をする。




「むぅ、近くにいたいだけなのに……。パートナーとは、私が力を与える存在なのよ」

「…………うん?要領を得ないな。何のためにパートナーが必要なんだ?」

「戦いのために」

「は?」


 詳しく聞いてみると、一ヶ月前ぐらいから、この戦いが始まっているという。

 666人の内で勝ち残った者が神となれる。いわば、神からの試練であり神になるための儀式のようなものが始まった。






「私は悪魔なの」

「悪魔……?」






 人間にしか見えないココネからそう言われても、すぐに信じられるものではない。氷雨は黙ってココネの身体を見ていく。服を脱がした時は特に変な物はなかったはずだ。そう考えながらココネを見ていたら、ココネは頬を赤くしていた。




「あ、あの…………この服は脱がしてから着させたんだよね?見られたのなら、せ、せきに…………を」

「まだお前は子供だろうが。次に進むぞ」


 流されたことにむっと頬を膨らませるココネだが、氷雨に見つめられることは嫌ではなかった。




(わ、私は氷雨なら…………ごにょごにょ)


 ココネは首を振って、次の話に移るために心を切り替えた。




「私が悪魔だと言っても、すぐに信じられないよね?だったら、証拠があれば、どうかな?」


 ココネは手のひらを上へ向けると、黒い塊のような物が現れた。さすがに、氷雨でもこれには驚愕した。何もない所からいきなり現れたのだから。




「私は『空間』の能力を持っている。これは物を少しだけ収納出来るの」

「…………」


 今日は変なことが起きるなーと考えていたが、心はワクワクしていた。今までの日常ではありえないことが何回も起きていたのだから、退屈を吹き飛ばせるほどのワクワク感が出ても仕方がないだろう。

 ココネは悪魔であり、戦うために氷雨を選んだーーーーいや、選ばれたのが正しいだろう。


 簡単に纏めれば、ココネは666人の悪魔の内、1人であり、神になるために戦い合うことになっている。

 そのパートナーに氷雨が選ばれた。


 さすがに、ラノベのような状況で現実なのか疑いそうな内容だが、氷雨は内心では退屈な日常から抜け出せることに喜んでいた。




「『空間』か。どうやって俺をパートナーにして戦うんだ?」


 ココネが今みたいに能力を使えるなら、氷雨は必要ないだろう。だが、パートナーが必要だと言っていたし、ココネや悪魔達にとってパートナーは力を与える存在だと言う。

 つまり、戦うのは氷雨だと考えられる。




「今のは、能力の欠片でしかないので、私だけでは戦えないの。だから、『悪魔融合デビルフュージョン』と言って、私と融合して力を使ってもらうの」

「『悪魔融合デビルフュージョン』?なんで英語なのかは聞かないで置こう……。で、それをすれば、俺は『空間』という力を使えるようになるんだよな?」

「あ、私は『空間』だけではなく、『自己修復』もあるから、二つの能力を使える」

「おおっ……」


 一つだけではない悪魔は参加者の中では数十人ぐらいしかいないから、珍しいともいえるのだろう。中には三つも持っている化け物もいるが、ココネは化け物の手の前にいるのだ。しかし…………






「でも、私は落ちこぼれなの…………」








まだ続きます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ