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落ちこぼれの悪魔っ娘の手を取る  作者: 神代零
2章 凍てつく復讐者
14/14

13.vsメアリー

 



「準備はいいわね?」


悪魔融合デビルフュージョン』をしたメアリーは上半身が騎士で下半身は白い馬の姿になっていた。




「なぁ、それがお前が強いとイメージしたのか?ケンタウロスの姿が…………」

「ち、違うわよ!!」


 改めて見てみるが、氷雨は自分からなろうとは思えないから姿だと思ったのだった。

 強いイメージだったのか、と聞いてみたらメアリーは強く否定してきた。




「わ、私だってこんなことになるとは思っていなかったのよ!!馬とセットで、騎士らしい強そうなイメージをしたのに、こんなことになって……」

「あ~、成る程。馬みたいな命があるのを作れないってことか、メアリーは失敗して合体した姿になったわけか…………」


 なんというか、哀れだなぁと思う氷雨だった。心を読んだメアリーは涙声で言い返す。




「あ、哀れないでよ!今はこんな姿でも強いのはわかったからいいのよ!!貴方だって、なんで女性になっているのよ!?東京タワーの時だって心を読まなかったら、氷雨だとわからなかったわよ!!」

「別にいいだろ」


 氷雨が好きなキャラだから仕方がないだろ、と言いながら刀を構える。それを見たメアリーも西洋の槍を構える。

 メアリーが持つ西洋の槍は、突きに特化していて刃はない。氷雨と同じように思想体から作り出した武器なのだ。


 先に動いたのはメアリーの方だった。人間のよりも速いスピードで突っ込んで、槍を突き出してくる。




(素でこれか。だが、見える!!)


 呪文なしでこのスピードは速いと思ったが、氷雨にしたら見えるスピードでしかなかった。

『超反応』を使って、紙一重に避けていく。メアリーは氷雨の『超反応』を知らなかったのか、全ての突きを避けたことに驚いている。




「予想以上だったわ…………。これもココネと言う悪魔の能力?」

『…………いや、あの人間の実力みたいだな。あの悪魔にそんな能力はなかった』


 メアリーは氷雨から距離を取って、ダニエルと会話をしていた。ダニエルは氷雨の心を読んで、ココネの能力を知っていることもあり、人間の実力だと判断したようだ。





「む、驚きから立ち直るのが早いな。これはダニエルという悪魔の仕業か?」

『うん、多分ね。同じ学校だからこっちの能力を知っていてもおかしくはないわ。あと、ダニエルも二つの能力を持っていて、『精神』と『衝撃』だったはずよ』

「衝撃?」


 ダニエルの能力を知っていたのは、自分の学校では有名人だったのもあり、Aランクとは悪魔が目指す頂点でもあるのだから、頂点に立つ悪魔のことを知らないのは学校では恥ずかしいことである。


 それにより、ダニエルは二つの能力は『精神』と『衝撃』だと知らない悪魔は少ないだろう。ココネは真面目の部類だったようで、学校が同じAランクの悪魔達のことに詳しい。




(衝撃か、意味は理解しているが、どんな攻撃をしてくるんだ?)

『そこまではわからないわ。だけど、出来るだけ術は躱した方がいいと思う』

(まぁ、躱すことなら任せな)


 いつも通りに攻撃は躱していけばいいと判断する。それから、メアリーの上半身は鎧やフルヘイムに守られているが、下半身は馬であって防具に守られていない。なら、氷雨が狙うなら下半身からだ。




「”グリム”」


 まず、脚を狙って俊敏さを削っていくことにするつもりで、剣を振ったが…………






 メアリーは何処から攻撃されるのを知っていたように避けていた。






「む?」


 氷雨は違和感を感じた。見てから避けたというより、現れる場所を知っていたように動いていたように見えた。


 氷雨はまさかと思いながら、再び別の場所に出口を設置して攻撃をするが、さっきのように設置される瞬間に離れていた。




「ち、心を読んだか」


 すぐにその原因を見つける。氷雨が言ったように心を読めれば、相手の攻撃をする場所や行動が筒抜けになってしまう。




(無心で攻撃するのは、難しいな)

『やっぱり、厄介ね…………』


 向こうからの攻撃は『超反応』で避けれるが、こっちの攻撃も心を読むことで攻撃してくる場所を暴いているのだ。

 つまり、何か変わったアクションを起こさなければ、お互いは攻撃を当てられないままだ。


 先に動いたのはメアリーだった。




「なかなか当たらないね!これならどうかしら?”フォピア”!」


 再度、槍が氷雨を射抜くように突き出される。呪文を唱えていたから、術を発動して来たのはわかるが、何も起きず、見た目も変わっていなかった。


 氷雨は術の効果を見破れないので、まず槍を躱すことにする。いつも通りに紙一重に躱そうとした時、気付いた。






 槍に目を向けると、僅かに揺れていたことに。






 氷雨は嫌な予感がして、頬の横を通り過ぎようとする槍の間に腕を挟むように庇ったら…………




「っ!?」

『氷雨!?』


 槍が通り過ぎた後、庇った腕に抉られたような傷が残っていた。槍には触れていないのに傷が出来たことに驚きながらもバックステップでメアリーから離れる。




(触れていなかったはず。…………いや、槍が揺れていたことに何か関係が?)

『振動だよ!!槍に触れなくても、槍から放たれた振動が氷雨に傷を付けたの!!』


 ココネはメアリーの攻撃を見破って教えてくれた。

 氷雨は成る程と思った。触れなくても振動で相手を傷付けることが出来るのだ。

 なら、氷雨は紙一重に避けずに余裕を持って距離を取ればいいだけだ。




「距離を取っても、こっちの方が速い」

「チッ!!」


 そう、スピードはメアリーの方が上で直接的の攻撃は避けられるが、槍が近くにあるだけで振動に傷を付けられてしまう。

 腕で庇わなければ、顔を抉られていたのは間違いないだろう。


 刀を振るう間もなく、攻撃してくるメアリーに対して氷雨は腕で庇っているため、傷だらけだ。




「このままでは腕が死んでしまうな、”リジェクト”!」

「あら……」


 傷が少しずつ消えていくことに攻撃していたメアリーは手を止めてしまう。自動修復する能力で一分間は続くのだ。




「回復持ちだったのね」

「自分にしか使えないけどなっ!!」


 再度、”グリム”で攻撃を加えようとしても、無心にならない限りは当たらないようだ。氷雨は新しく出た術までは見せるつもりはなかったが、このままでは攻撃が当たらないので、本気でやることに決めた。






「”ラジア・グリム”!!」






 新たな術を発動した氷雨は、”グリム”の時と同じように刀の先には入口が現れて、出口はーーーー




「また脚を狙うのね!!」


 メアリーはまた心の中を読んで、ジャンプをして脚の近くに現れた出口から離れる。だが、それは罠だった。






 メアリーの下半身、馬の腹に傷が出来た。





「い、えっ!?」

「心を読むだけで周りを見ないからそうなるんだよ」

「な、黒い穴が幾つもある!?」


 メアリーは周りを見て気付いたのだ。出口である黒い穴が幾つも出来ていたのだから。見た通りに”ラジア・グリム”は入口は一つに対して、出口を複数も作り出す術なのである。


 心の中では脚を狙うと考えていたが、複数の穴が現れるまでは考えていなかったからメアリーは周りを見るまで気付かなかったのだ。

 だが、入口の黒い穴へ刀を入れた後に、どの穴から現れるのかはどうやって設定したのかメアリーにはわからなかった。

 設定するなら、必ず頭の中で設定する必要があるのだから。




「今はランダムだからな」

「はい……?」


 メアリーはランダムと言われて、なんのことかわからなかったが、考える暇も氷雨は与えることはなかった。




「次は全部だ!”ラジア・グリム”!!」

「っ!!」


 また新たな黒い穴が幾つもメアリーの周りに現れて、今度は全ての黒い穴から幾つもの刀の先がメアリーを切り裂いていく。




「ぐぅぅぅぅぅっ!?」

「ほぅ、致命傷だけは避けたか」


 身体に様々な刀傷があるが、どれも致命傷になるような傷はなかった。メアリーはすぐに黒い穴の位置を察知して、致命傷になる攻撃だけを槍で防いだのだ。


 補足するが、”ラジア・グリム”は出口を複数にして、入口に繋げる出口を自分で設定したり、ランダムにすることも出来て、今みたいに全ての黒い穴に繋げて攻撃することも可能だ。

 ただ、全てが本物の刀ではなく、本物なのは一つの出口だけで、後はコピーだ。コピーの攻撃は本物の攻撃よりも威力が落ちてしまう。


 メアリーは勘で本物の刀攻撃、致命傷になる攻撃だけを避けていたのだ。全ての穴から攻撃が来ると読めていたといえ、全てを避けるのは無理だったようで、槍を支え棒にして立っている。




「こ、これは読めても逃げ道が少ないのではね…………」

「だが、致命傷を避けたのは流石だったな」


 氷雨は腕が回復して、無傷だが”ラジア・グリム”のエネルギー消費が”グリム”よりも多くて、体感では”ラジア・グリム”はあと2、3発しか発動出来ないとわかる。




「もう暗くなったし、最後で終わらせたいな。どうする?」

「ふ、ふふっ、そうね。お互いは傷を受けた……貴方は回復しているけどね。貴方の実力は大体わかったから最後ではなく、もう終わりにしましょう。解除!!」

「そうか、解除!!」


 二人はもう終わりだと判断して、まだ死んでないが止めにすることに決めた。




「今回は貴方の勝ちでいいわ」

「そうか、遠慮なく、その勝ちを受けよう」

「ふふっ、また勝負しようね」

「ああ」


 この勝負は氷雨の勝ちで決まったが、メアリーはまだ術を一つしか使っておらず、本気も出していなかった。

 氷雨は、次にやる時はもっと強くならなければ死ぬと考えたのだった…………





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