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落ちこぼれの悪魔っ娘の手を取る  作者: 神代零
2章 凍てつく復讐者
13/14

12.乱入者

 


 ユメノコが消えたことによって、凍っていた東京タワーや人質を縛っていた氷が溶けた。

 さらに、人を殺した姿を見た人質達は白い騎士のようなケンタウロスから離れようと叫びながら逃げ去ろうとする。




「待ちなさい。まだ消してないんだから」


 白い騎士が手をかざすだけで人質の全員が意識を無くして倒れた。氷雨は何も唱えずに手をかざしただけで意識を奪えるのは危険だと感じ、白い騎士を警戒する。




(なにをしやがった?)

『あ、あああああれは…………』

(ん、何か知っているのか?)


 ココネは怯えていたが、何かを知っているような風だった。ココネは声を震えながら説明し始める。






『白い、騎士のような姿にあの能力。ま、間違いないわ…………、ダニエル、Aランクの悪魔よ!!』






 氷雨はすぐに理解した。


 自分よりもさらなる高みにいる相手が目の前にいるのだから、怯えても仕方がないと思う。




(成る程な。で、意識を奪う能力か?)

『い、いえ。意識を奪うのは副作用でしかないし、本当の能力は『精神』なのよ。あれは、おそらく記憶を消したのだと思う…………』

(精神…………)


 精神と言われても記憶を消せることに何が関係するのかわからなかった。氷雨はまだ高校生で医療や精神などの専門を持ち出されても理解は出来ないだろう。




(ふむ、記憶を消せるぐらいにスゲーな能力という認識でいいか?)

『超適当!?』

(精神と言われても、どんだけ凄いのかわからん。それよりも、あの能力は唱えていなくても使えるのか?)


 ココネはダニエルという悪魔のことに詳しいみたいだから、聞いてみた。




『はぁっ、氷雨は氷雨なのね…………、私が収納出来る空間を使えるように、他の悪魔も僅かな力を使えるし、今、融合しているなら、氷雨も収納を使えるよ?』

(おい、これは結構大事なことじゃねぇか?使えるのか知らなかったぞ)

『そういえば、見せたけど言っていなかったね。ハハッ……』


 強い悪魔が現れたのに、氷雨がいつも通りだったので、ココネは少し余裕を持てるようになっていた。




「楽しそうなお話をしている所ですいませんが、早くここから出ないと警察が来るわよ」

「っと、そうだったな」

「では、私はあの公園でお待ちしておりますわ」

「やっぱり、お前は……………………おい!?」


 既に白い騎士は割った窓から退却していた。エレベーターは動いているようで、展望台まであと少しで着く所だった。氷雨は舌打ちをして”グリム”でここに来たやり方と同じように黒い穴を頭から通って退却したのだった…………




















「遅いわよ」

「ふざけんな、こっちはお前みたいに速い脚を持っていねぇよ」


 公園にて、目の前にいるのは迷子のお嬢様だった金髪の女性、メアリー・ジャバネットの姿があった。さらに、メアリーの隣には白い騎士が立っていた。白い騎士はフルヘイムを被っていて中身が見えず、腕を組んで黙って立っているだけだが、その威圧感は今までに感じたことがないぐらいだった。


 メアリーは早い足を持っていたから公園へ先に着いたが、氷雨は融合したままでは目立ってしまうので、解除してから電車で東京から神奈川まで戻っていたのだ。だから、今は夕日が見えていて、遅くなっていたのだ。




 氷雨は目立つ悪魔を横に立たせて、他の人に見られたら面倒じゃないのか?と考えていたら、




「大丈夫だ。人払いをしている」

「む……、東京タワーでの言葉もそうだか、お前は心が読めるのか?」


 東京タワーでの言葉、『諦めたら駄目でしょ?』、『楽しそうなお話をしている』、今の疑問に答えたことから確信していた。どれも声にしてないのに、わかったことから心の声を読める能力も持っているようだ。




「戦うには、面倒な相手だな……」

「ひ、氷雨ぇ、お願いだから今は戦うの止めようよ……」


 ココネも影から出ていて、氷雨の後ろに抱きついてブルブルと震えていた。




「はぁ、まぁいい。人払いとは?」

「私の使用人達がここへ人が近付かないように働いてくれているのよ」

「成る程、マジもんのお嬢様かよ。なんちゃってお嬢様でただの迷子だと思ったんだがな……」

「誰がなんちゃってお嬢様よ!?何処から見ても私はお嬢様らしいでしょ!?」


 氷雨の目から見ても金髪やドレスはコスプレにしか見えないのだ。なんというか、場違いすぎるからだろうか?






「ゴホッ、話が進まないからここで切らせていい?私がどうして乱入したかわかる?」

「人質を助けるためだろ?」


 人質の周りに配置されていた氷柱を消し飛ばしたことから、人質を助けに来たのはわかる。だが、本来なら氷雨も敵であるはずなのに、昨日に出会った時点でも攻撃してこなかった。

 あの時、Aランクのダニエルがメアリーの影にいたならこっちの影にもココネがいることに気付いていたはずだ。なのに、襲って来なかったから何らかの理由があるのだろう。




「そうよ。最近、世界中で悪魔による事件が起こっているの。まだ一般人に認知されてはいないけど、このままでは時間の問題ね」

「世界中……?もしかして、お前は世界を回っていたのか?」

「そうね、お金があるなら使わないと勿体無いと思わない?」

「それは大金持ちの分類だけだ。ただの高校生に言うな」


 一人暮らしをさせて貰っている時点でお金に余裕があるわけでもない。




「私は世界を回って、悪さをする人間と悪魔を退治しているのよ」

「ふむ、俺は悪さをしている様子がないから見逃しているってわけか?」

「それどころか、珍しい程に正義よりじゃない?あの時は人質を諦めようとしていたけど、助けようと努力をしていたよね?」

「ふん、俺は前日に逃した敵を片付けようとしただけだ。あの人質は自分の身が危ないと思ったら見捨てるつもりだったしな」

「それは間違いだと言わないわよ。誰も自分の身が大切だもの、私もね」


 話を聞く限り、完全な正義の元に動いているわけじゃないようだ。もし、人質が邪魔なら見捨てるし、敵だった人間もアッサリと殺しているのだから、目の前のお嬢様も自分のやりたいことをしているだけだ。

 氷雨も退屈を紛らわせるために戦っているのだから、メアリーの考えを否定する理由がない。


 お互いの考えはわかったし、氷雨はもう用はないと言うようにここから立ち去ろうとした。だが、その行動は止められる。




「待ってよ、貴方の実力が見たいわ」

「は?」

「だから、戦ってみたいと言っているの。思想体なら死なないし、いいよね?」

「俺の戦う理由が見当たらないが……、それに、ココネが戦いたくないと首を振っているんだが?」


 ココネの方を見ると、氷雨に抱きつきながらイヤイヤと首を振っていた。無理矢理やらせる程に、氷雨は鬼ではないので、断ろうとしたが…………




「所詮は落ちこぼれか」

「ダニエル!!」


 ダニエルが漏らした言葉にメアリーが注意をする。氷雨から見たら、ダニエルは見下げるような瞳ではなく、挑発をしているのだとわかった。つまり、ダニエルはココネを見定めているのだ。


 何故、ココネを挑発し、見定めようとするのか気になった。




「なぁ、ダニエル。わざと挑発してどうしたいんだ?お前がAランクでココネはEランク。気になることがあるのか?」

「ほぅ、すぐに見破るとはただの人間ではないな」


 ダニエルは感心し、氷雨という人間に興味を持ったようだ。フルヘイムを被っているから表情はわからないが、ニヤッと笑みを浮かべたように見えた。




「その通りだ。攻撃性能を持たないから落ちこぼれと呼ばれているようだが、私と同じ二つの能力を持っている者として気になる程度だ」

「お前も二つ持っているのか。ココネ…………やっぱり、嫌か?」

「う、うん。思想体だとしても氷雨が傷付くのは嫌…………」


 ココネはただ怖いから戦いたくないだけではなく、氷雨の心配をしていたようだ。思想体が死んだら、生身は無傷だが、幻痛を受ける可能性もあるのだ。

 相手はAランクの悪魔。強い氷雨だとしても必ず勝てるとは思えないからだ。




「なんだ、俺の心配をしていたのか。俺は俺のためにも戦っているのだから、ココネが気を病む必要はない。俺はAランクの強さはどれくらいあるか見たい」

「…………わかったぁ」


 渋々だが、ココネも納得してくれたようだ。しかし、どれくらい強いか気になるだけでは戦う理由が弱いなと思いつつ、取引をしてみる。




「……メアリーお嬢様?」

「なんで、疑問文なのよ!?ちゃんとしたお嬢様なんだからねっ!!それに、呼ぶ時は名前だけでいいわよ」

「そうか、俺には戦う理由がないんだが?もし、俺が勝ったらココネの生活費をくれるならやってもいいけど?」

「取引をしたいの?あぁ、貴方はただの高校生だものね。いいわよ、勝っても負けてもあげるわ。私に勝ったら、貴方の生活費1年分、負けたら半年分ね」


 これは予想外だった。負けても半年分は貰えるなら氷雨はやる気が出る。もし、勝てたら1年分は貰えるなら勝ちにいかなければならない。

 しかし、同時に疑問が浮かぶ。




「いいのか?会ったばかりの人にそんな取引をして……」

「いいのよ、貴方は面白いし、友達になりたいの。仲間と一緒に戦うことに憧れていたんだよね!!」

「あぁ、そうか……」


 もしかして、友達がいないのか?と思いかけそうだったが、ダニエルは心を読めるのを思い出して頭の中から捨て去った。

 とにかく、氷雨にも否はないので、戦うことに決めた。




「ココネ、いいな?」

「う、うん。氷雨のことを信じているから……」

「さぁて、やろうね!!」

「ようやくか、待ちくたびれたぞ」




 夕日が落ちる公園にて、4人の影が二つになっていき、戦いが始まるのだった…………







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