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落ちこぼれの悪魔っ娘の手を取る  作者: 神代零
2章 凍てつく復讐者
12/14

11.東京タワー

はい、どうぞ!!

 



「はぁ、なんでこんなことになってんだか……」

『誘っているよね?あれは』




 溜息を吐きながら愚痴を言う氷雨。今は昼前で本当なら学校へ通っている時間なのに、氷雨は学校へ行かずに東京へ来ていた。

 その理由は先にある。






「東京タワーを凍らせるとか、やり過ぎだろ!?」






 氷雨の目には、氷漬けになった東京タワーの姿があった。何故、そんなことになっているのかは、朝に見たテレビから始まったのだった…………









 まだ朝だった頃、起きて学校へ行く日だったが、テレビを見たことから変わった。テレビには凍った東京タワーが映されていて、それをやった人物は何人かを閉じ込めていた。


 こんな状況を作った人物は、ヘリでカメラを撮っている方へ向いて、こんなことを発していた。




『自分と同じ力を持つ者、ここに集まれ。ここには人質が8人いる。助けるなら早くした方がいいぞ』




 それだけ言って、東京タワーの中へ消えたのだった。氷雨はこの状況を起こした相手を知っている。




 そう、氷雨が逃してしまった氷使いの男だ。




 何のために、こんなことをしたのか?戦った自分を誘き寄せるためか、単に、他の悪魔も誘き寄せて闘うためか、仲間を増やすためか?

 ユメノコはココネと氷雨を下僕にしようとしていたので、仲間を増やす可能性もある。


 今までの氷雨だったら、知るかと言って無視するが、この状況を作った者を氷雨が逃してしまった敵のもあり、氷雨にも責任はある。


 だから、誘いに乗って完璧に叩き伏せると決めたのだ。






「とか考えて、ここまで来たのはいいが、他の悪魔にも出会う可能性もあるな」

『帰る?』

「いや、行く。早くこの騒ぎを大きくした馬鹿を片付けないと、後が面倒になりそうだからな」


 もし、警備が強くなってしまったら、暴れた先に目撃者が増えてしまうのは頂けない。もし、目撃者がいたら消すのも躊躇はないが、出来れば関係無い者を巻き込みたくはない。


 氷雨が戦いたいと思う人は戦いに命を賭けることに決めた人だけだ。氷雨には無抵抗な人を襲う趣味はないのだから。




『ふぅん、私は氷雨について行くよ』

「まぁ、パートナーになっているから選択肢はなさそうだが、本心から言ってくれるのはありがたいな」

『いいのよ……。お礼を言いたいのはこっちの方だから……』


 もし、影から出ていたなら顔が赤くなっていたのがわかるだろう。




「しかしな、やり方が凡庸過ぎないか?もし、俺がテレビを見ていなかったらどうするつもりだったんだか」

『そういえば、そうだね』


 氷雨は既に東京タワーの近くまで来ていて、警察や人で溢れていた。これではバレずに東京タワーの中へ向かっていくのは無理だ。




「どうすっかな…………」

















 東京タワーの中、水色のフードを着た武は人質の前に立っていた。




「事が終わるまで大人しくしていれば何もしない。お前達はただ捕まっているだけでいい」


 人質は氷で手と足を縛られていて動けなかった。さらに、その冷気で身体をぶるぶると震わせていた。




「せ、せめて、この子だけはすぐに解放してやってくれ!!この冷気ではすぐに倒れてしまうぞ!?」


 人質は8人いて、子供は親と一緒に来ていたようで、親の隣で身体を震わせていた。唇も青くなっていて危ない状態だとわかる。


 それを見た武は眉を下げていた。

 武は関係無い人を殺すことに忌避は少しだけあり、この子だけは解放してもいいじゃないかなと考えていた。だが、ユメノコが……




『駄目よ。子供はこの子だけでしょう?あの人の弱点が子供かもしれないし、人質として必要よ』

(…………わかっているよ、あの野郎を殺すために必要なんだよね)


 だが、このままでは自分の敵が来る前に死んでしまう可能性がある。だから、一応持ってきていたカイロとバスタオルを親に渡してやる。ついでに子供を縛っていた氷だけを解いてやる。




「ここから出るのは許さんが、バスタオルとカイロだけは渡してやる。大人しくして俺の目的を達したら、すぐに解放してやる」

「は、はい!」


 親は縛られている手をなんとか動かして、カイロとバスタオルで子供を包もうとする。

 それを見た者は武が殺戮者ではなく、話が通じる人だと思ったのか、警備員をしていた男性が話しかけてきた。




「なぁ、話を聞かせてもいいか?」

「なんだ?この力は言えないぞ」


 力のことも気になっていたが、それよりも一番に聞くべくことがある。




「何の目的があって、こんなことを……?」

「…………」


 武はそれぐらいは話しても問題ないと考えた。どうせ、ここで闘うことになるのだから。




「ある者を誘い込んで殺すためだ」

「ひ、1人を殺すためだけで、こんなことを……?」

「あぁ、あいつは強い。これぐらいは準備をしないとな…………」


 目に殺意が浮かんでいたのが見えたからか、警備員の男は黙ってしまった。




「あ、あの!いつ来るかわかるのですか!?」


 代わりに子供を抱きついている母親が聞いてきた。




「…………わからん。カメラに向けて挑戦状を叩きつけたが、人質を無視する奴だったら、ここまで準備をした意味がなくなるがな」

「そんな……」


 来るかわからない相手を待たなければならないことに、自分達が助かるビジョンは見えなかった。さらに、この力を持った相手に警察が通じるとは思えなかった。


 人質が絶望していた所に…………






「お、来たな」

「えっ?」


 武は黒い穴が現れたことに、目的である相手が来たことを察知した。その黒い穴は直径50センチしかないが、人が通るには十分だった。線が細い女性姿である氷雨なら、ギリギリ通れる。

 その黒い穴が上から下へ動き、頭から氷雨が現れる。




「試しにやって見たが、ガラスの向こうでも見えていれば届くんだな」


 ここは展望台で、ガラス越しが見えたので馬鹿正直に真正面から行かないで”グリム”を使ってワープをしたのだ。




「ハハッ!来たか!!」


 目的の人が来たことに武は喜んでいた。人質の人達は犯人が狙っていたのが、この女性だと思わなかったのと黒い穴から現れたことに驚愕を隠せないでいた。




「寒いな……、さっさと終わらせてやるよ」


 氷雨が刀を抜いたことから、この二人が殺し合うとわかって、人質は手足を縛られながらも離れようとする。

 だが、武はそれを許さない。




「お、おい!?大人しくすれば、何もしないと言っていなかったか!?」


 周りには”プリスド”で氷柱が浮いていて、人質を狙っている。




「言ったろ。お前達は人質だ、あの野郎が何もしないなら、何もしないさ。俺様が言いたいことはわかるな?」

「ふん、動くなと言いたいんだろ?」

「ああ、さっきのワープは一対の入口と出口しか作れないのも知っている。つまり、お前には守りながら戦うことは出来ない!!」


 武は勝ちを確信していた。ここまで来たのは人質を助けるためだと推測出来る。人質のことをどうでもいいと考えているなら、罠にしか見えない場所へ来る必要がないし、逃した敵だとしても別の日、別の場所で狙えばいいだけなのだから。


 氷雨は敵を倒すついでに人質を助けるつもりだったのだ。




(どうしようかな……)

『だったら、人質を無視をすればいいんじゃないの?』

(それは最終手段だ)


 氷雨は人質を助けると言ったが、もし自分の身が危なくなるなら見捨てる覚悟もしている。他の方法はないか考えている。

 新しい術は守りには向かない。人質もそうだが、完敗した相手に挑むのは殺す算段がついたか新しい術を覚醒したかだ。


 この前に戦った時は東京タワーを凍らせたように凍らせる術を使ってこなかった。

 つまり、新しい術は凍らせる効果を持つ術だと判断出来る。




「動くなよ?”ジア・プリズム”!!」


 武の手から冷気が現れて、氷雨の脚を凍らせた。逃げられないように凍らせたのだ。




「ふ、ふははっ!!このまま、氷に貫かれて死ね!!”プリスド”ぉぉぉぉぉ!!」


 力を込めたからなのか、氷柱が前のより太く、大きくなっていた。この大きさなら動けない氷雨を貫くのは難しくはないだろう。




『氷雨!?』




 このままでは負けてしまうと思ったココネは叫んでいた。だが、氷雨はそれに答えず、向かっている氷柱だけに集中していた。まるでタイミングを計っているような…………




 そして、その氷柱が氷雨の心臓へ届くまであと数センチーーーー




「”グリム”!!」




 氷雨は一瞬で”グリム”を発動した。入口は自分の胸に、出口は敵の左胸へーーーー






「ガァッ!?ま、まさか、こんなことも、出来たのか!?」


 左胸には当たらず、右胸に氷柱が貫かれていた。避けられないように、ギリギリまで引きつけたのにまたユメノコが穴が察知して教えたようだ。

 氷雨は人質を攻撃される前に殺せばいいと、ギリギリまで引きつけていたが、失敗した。

 右胸を貫かれているが、まだ生きている。




「ふ、ふざけんなぁぁぁ!!人質のことはどうでもいいと、言いてぇのかぁぁぁ!?」


 右肺をやられているのに、殺意のままに叫び散らす武。このままでは人質は殺されてしまう。

 人質の人達は顔を青くしていた。殺されてしまうとわかり、泣き叫ぶ人もいたが、武は止まらない。




(ち、見透しが甘かった。人質は諦めるしかないか…………)


 足を動かせない氷雨は人質を守ることは出来ないし、武を殺そうとしても向こうの方が氷柱を動かすのが早い。

 人質を諦めて、武に攻撃しようとしたら…………












「諦めたら駄目でしょ?」












 と言う声が消えたと思ったら、展望台の窓を西洋の槍で突き破って、さらに人質を狙っていた氷柱ごと消し飛ばしたのだった。




「な、何が!?」

「私も貴方の敵よ」


 窓を突き破って現れたのは、上半身が白い騎士で下半身が白い馬のケンタウルス姿の人物だった。




 氷雨はそれに驚いたが、今がチャンスだと思い、”グリム”を発動して、刀を振るって武の首を狙った。武はユメノコからの声で避けようとしたが、動くには遅かった。




「畜生がぁぁぁ、また負けるのかよ…………」




 首を飛ばされる寸前にそんなことを叫び散らしていた。だが、そんな無駄なことは虚しく展望台で響いただけだった…………




「良いどころを横取りなんて、狡いのね」

「その声は…………いや、今はいい。先に悪魔を消す」

「い、いやぁ……、ココネ程度に負けるには…………」

「なら、私が消してあげるわね」


 ココネに殺されるのが嫌なら、変わりに私が殺してあげるわとそんな感じでユメノコは槍に貫かれて消えた。




「ユメノコぉぉぉ!!貴様らぁぁぁ!!許さねえぞーーーー「煩いわね」…………え?」


 武の胸に槍が刺さっていた。まさか、殺されると思っていなかったようで目を丸くしていた。




「え、嘘、だろ…………た、戦いは悪魔が死んだら…………」

「そこで終わりだと思ったのかしら?後から邪魔になりそうだったから死んでもらうわ」

「そんな…………」




 武は今までの人生はなんだったんだ?と走馬灯が起こされていた。

 小学生の頃から虐められ、強くなりたいために剣道を始めたが、無駄だった。虐めていた側に段を持つ人がいたため、勝てなかった。



 反逆されたことに気に入らなかったのか、さらに虐めが酷くなった。学校全体を巻き込んで、仲が良かった友達から無視をされるようになり、毎日殴られたり蹴られたりの日々。



 その後にユメノコに出会ったが、復讐で身を削っていった。そして、最後には殺されてしまう。









 …………あぁ、本当に俺様の人生って何だったんだろうな…………








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