帰り道は夢を見せない
すっかり日も暮れて、海の家から帰る心愛を送るが
その途中も2人は話をはずませたり、会話を途絶えさせたり。
なんだかんだと仲良しな2人は・・・
そして夜の心愛のmailで海は・・・
「おじゃましました。ご飯美味しかったです。」
心愛が僕の母親にペコリと頭を下げた。どうやら、僕以外の人には猫かぶりと見た。
「暗いし危ないから、駅まで送っていくよ。確か、駅のすぐそばだったよな?家。」
僕は、そう言って靴を履いた。心愛は少し申し訳なさそうな表情でうなずく。
いつもの上から目線はどこへ行ったのか。女の子…はたまた心愛という生き物はよくわからない。
「じゃぁ、行こうか。母さんちょっと行ってくるよ。」
僕は母親にそう言って、扉を閉めた。行ってらっしゃいと見送る母親の顔がなんだか嬉しそうで気味が悪かったが今は気にしないでおこう。
「自転車がいい?それとも歩きがいい?」
僕が心愛に尋ねると。小さい声で歩きと言った。僕は自転車の鍵を無造作にポケットに突っこんで歩いた。心愛も僕につられて足を前に進めた。
「ねぇ、海。海はどうして私にそんなに優しいわけ?めんどくさいとか思ったりしないの?」
少し歩いてから心愛が立ち止まって僕に聞いた。めんどくさいと言う自覚はあったのか。
心愛の疑問に僕は少し悩んだ。第一心愛に優しくするのに理由がいるのだろうか。僕はそう思っている。
心愛は高校でできた、ただ1人の趣味の合う友人。確かに、厄介な性格だが、嫌いではない。
もう少し男として見てほしい部分もあるけど、嫌ではない。
心愛は無鉄砲で良く笑ったり、怒ったり、照れたり。コロコロと表情が変わってかわいく思う。
「僕が楽しいからかな。ちょっとめんどくさいなって思う時はあるけど、嫌なわけじゃないし、趣味が合うし、話してると面白いよ?」
立ち止まった心愛の正面に立って、心愛の顔を覗き込んで笑った。
「何よ。変な人。海って変人ね。海がそこまで言うなら、仲良くしてあげないこともないわよ。」
心愛は嬉しそうにニンマリとした表情を僕に見せた。もしかして気にしていたのかもしれないな。
変なのは心愛の方だよ。ツンデレだし、基本的上から目線だし、意地っ張りだし。それなのに、時々素直だし。
僕も心愛に同じ質問をした。
「心愛こそ。どうして僕と仲良くしてくれるの?」
その質問に僕と違って心愛には悩む時間なんてなかった。
「何言ってんの?そんなの楽しいからに決まってるでしょ?私草嫌いじゃないから。」
心愛は暗闇で笑顔を隠すようにそっぽを向いて歩いた。
草って…。心愛にとって草の後ろにはまだ男子の文字はつかないのか。いや、草っていうの自体に問題はあるが。せめて草食系男子って言ってほしいな。
「まぁ、いいや。どうするんだ?明日も服作るんだよね?今日心愛寝ちゃったから、僕もあれ以上進んでないんだ。せっかくなんだから、一緒にしようと思って。中断したんだよ。」
僕が目の前をフラフラ歩く心愛に言った。心愛は振り向いて、当然と言わんばかりの顔をした。
駅までの道ってこんなに長かったかな?いつも自転車を使っているので感覚がくるったようだ。
夜の暗い道を、何時の間にか黙って歩いていた。ぱたりと会話が途絶えたが、気まずい雰囲気はない。
そのまま5分ぐらい何も話さず歩いた。そうすると早いもので、駅に着いてしまった。
「じゃぁ、おやすみ。また明日。明日は今日より早くいくから変な心配するなよ?」
「別に心配なんてして無かったんだからね。勘違いしないで。明日も遅かったら承知しないわよ!?…。おやすみ。」
心愛が僕に突っかかる。僕が笑顔を向けると、心愛は手を振りながら、走って行ってしまった。
僕は心愛の後ろ姿に手を振って、来た道を戻った。
その日の夜23時半。パソコンの前でゆっくりしていたらケータイが鳴った。
ケータイを手に取って見ると、画面には心愛と書いてあり、心愛からのmailだときずいた。
「どうしたんだろうか。こんな時間に。」
僕は不思議に思い、mailを見た。
(私の小説の設定を書いたノート海の家に忘れてない!?)
心愛が寝ている間に、見たノートの事だ。僕はそのノートを見た後、心愛の鞄に返さず、机の下においてしまっていた。僕はそのノートを確認して写真を撮ってmailに貼り付けた。
(コレの事だよね?明日持っていこうか?)
僕は、心愛にmailを送った。ケータイを閉じでものの数秒。心愛から返事が来た。
心愛の返信のスピードに驚きながらもmailを開くと、さらに驚く内容が書いてあった。
(いいわ。明日の朝取りに行く。そうしないと内容を書き込めないじゃない。仕方ないから、海が遅刻しないように一緒に行ってあげるわ。)
どうしてmailでも上から目線なのだろうか。それよりなによりも、わざわざ朝一で取りに来なくてもいいと思うのだが。学校に行けば、嫌でも会えるというのに、それに、ここまで来るには手間がかかるだろう。僕はそう思い心愛にmailを返した。
(明日学校に持っていくよ?!わざわざ朝取りに来なくったって大丈夫だよ?)
送るとすぐに心愛から返ってくる。ケータイを握りしめているのか…?
(取りに行くの。いいから海は7時30分に癒えの前にいなさい。わかった!?返信はいらないから。)
心愛は、強引にmailを片づけた。僕はmailに書かれた通り、返信はしなかった。
もう少し遅くまで起きる予定だったが、あそこまで心愛に木々を刺されてしまっては、寝坊できない。
そう思った僕はベットに入って、CDをかけた。寝るときには最小限の音楽がないと眠れないのだ。
いろいろありすぎて何が何だかわからなかったけど、とにかく僕の高校生活は始まったばかりにも関らず忙しい。
ケータイでアラームをセットして、電気を消すと、自然と睡魔が襲ってきた。
僕は小さく流れる音楽を耳で感じることなく深い眠りについた。