クラス内でも夢は見せない
入学したてのぎこちない様子の教室では
知り合って2日目の海と心愛のコンビが。
心愛の電波系かつツンデレ属性に振り回されつつも、そこをかわいいと思ってしまう海。
でも、心愛は海を異性としては全く見てなくて・・・
朝、目が覚めた。いつもより1時間は早い時間。早起きは三文の得と言うので、得したと思いたい。
しかし暇だ。朝の準備に時間がかからないので、することに困ってしまう。
「…。まぁいい。新しいライトノベルの主人公を考えよう。せっかく布も買ったんだし。作っとかないと心愛と作れないな。」
そう思い、僕は紙とペンを持って朝の机に向かった。
「名前は…甲斐焔。身長は156㌢㍍。イケメンになりたい残念くん。それからえーと…。」
あれこれ考えた大体のプロフィールを元に、絵を描いていたら時間が経つのを忘れてしまっていた。
これ以上遅くなると完璧に遅刻だ。
「やばいやばい。いってきまーす。」僕はそう言ってあわてて書いた紙を鞄にいれて、家を飛び出し走って学校に向かった。
学校に着いた。門の前に目を引く少女が立っていた。周りから注目され少し戸惑いながら辺りを見回しているのは、まぎれもなく心愛だった。
「心愛おはよう。なにしてるの?」
僕は心愛に声をかけた。すると心愛が少し涙目になりながら怒った様に言う。
「遅いじゃない!まったく。休みかと思ったわ。別に待ってたわけじゃないけど。教室に一人で入るのは尺だったのよ。」
つまりは僕を待ってたであってるんだよな・・・?ツンデレには困るよ。
「それじゃぁ教室に行こうね。遅刻する前に。」
僕がそう言うと心愛が頷いた。こうやって素直なときは可愛いのにな。
おっと言わないよ?うっかり言ってしまうと、また何を言われるかわかったものじゃない。
心愛の扱いに慣れた僕は変なことを言わないように気を付けた。
教室に着いた。入学式から数日しか経ってないので、まだぎこちない雰囲気が否めない。
当の僕も心愛しか友達はいないし、心愛も僕しかいない状況だ。
第一僕らも出会い方が衝撃的なわけで、心愛の電波系かつツンデレ属性で知り合ったのだ。
「心愛は友達作らないの?ずっと僕と居るつもりなのかな?」
僕が心愛にそっと話しかけた。
そっと話しかけただけなのに、どうしてか心愛に背中を叩かれた。
なんだよ。心配してやったのに。
背中をさすっていると、心愛が口を開いた。
「友達は作ろうと思って作るものじゃないの。第一友達になろ?なんて私から言えるわけないじゃない。それに海なら私と趣味が同じだから…海が是非って言うなら、一緒にいてあげてもいいんだからね。」
よくもまぁ長々と…。上から目線で話が出来ること。
でも、心愛といるのも悪くないよ。
性格には問題あるが、時々見せる無邪気な笑顔に健全な男子としては、胸を撃たれるわけだ。こんな人間はライトノベルの中だけだと思ってたよ。現実にもいるんだよ!神様ありがとう!
なんて僕が拝んでいると心愛の声が耳元で聞こえた。
「まぁ何があっても私と海じゃ何もならないわ。いくら私が完璧だからって。」
心愛が楽しそうに笑う。
前言一部撤回。もう少し口の悪さを直していただきたい。さすがの僕でもこれは傷つくよ。どうせ僕は草食系男子にもなれない草ですよ。
「僕も男なんだけとなぁ…。」
僕は心愛に気づかれるのを防ぐため、小さく呟いて席に着いた。
そのあと心愛が自分の席に座った。実は僕と心愛は席が隣どうしだ。いろいろあったためため息をつかずにいられなかった。
そのため息と共に授業開始のチャイムがなった。
「・・・。暇だよ。」
授業が始まって約10分。僕が気づかれないように呟いた
「早いわね。まだ10分しか経ってないわよ。海ってば勉強できないわけ?」
絶対聞こえないように言ったつもりだったが心愛には聞こえていたようだ。勉強か…。苦手ではないが…。
(あのさぁこれでも特待生なんだけどなぁ…。勉強苦手ではないんだけど…嫌いだなぁ。)
僕がノートの端に書くと心愛が目を丸くした。そんなに驚かなくても良いと思うんだけどなぁ。
(うそでしょ。海ってば賢かったの!?ちょっと勉強教えなさいよ!!)
心愛が紙に書く。もしかして心愛はそこまで賢くないのか?
僕の声にすぐ反応したぐらいだから集中してなかったのか。
(もちろんだよ。今日家くるんだし、その時にでも教えてあげるよ。)
僕はまたノートの端に書いた。
(まぁ教えてもらってあげる。上手く教えてくれないと困るんだからね。)
僕は心愛に笑いかけて、授業内容をノートにまとめ集中しようと試みた。
心愛も授業に集中しようと、黒板とにらめっこをしていた。
僕はそれが面白く思ったが、今は授業に集中することにした。
それから30分後1時間目終了のチャイムがなった。
どうしてだか、まったく集中できなかった気がする。
それは心愛も同じだったようだ。あれからお互い、何度か目があったし、僕なんて落書きまでしてしまっている。でも仕方ないと思ってほしい。
現代文と言うだけで眠気を誘う教科というのに、先生はただ本を読んでいるだけ。
まるでお経を唱えるかのように。まだ小学校の読み聞かせのほうが真面目に聞ける気がする。
鍵カッコは棒読み、抑揚もつけず、それを聞いてるこっちの身にもなっていただきたいものだ。
「暇だったね。さっきの授業は。僕も絵を描いてたから人の事は言えないんだけどさ、心愛は何してたの?何かノートに書いてたよね?」
僕は、机の上に突っ伏している心愛に尋ねた。心愛は何も言わずにノートを見せてきた。
「萌えキャラのかわいいしぐさbest5?一位は…萌えそでかぁ。安定だね。」
僕は心愛のノートを見てライトノベル関係だと気付いた。確かにこれは共感せざるおえない。
「でも僕は萌えキャラよりも心愛のような電波系かつツンデレ属性のほうが…。ごほん。心愛もこういうのは憧れるのかな?」
「憧れるけど、私はこんなキャラじゃないし…。ドジっ子ってのも私には当てはまらないわ。」
心愛は真剣な表情で言う。確かに少し違う気がする。
むしろ心愛がノートにあげたような性格は、心愛本体とは正反対と言っていいほどである。
「心愛は今のままでも可愛いよ?」
僕がそういうと、心愛は少し恥ずかしそうに、それでいて怒ったように僕に言った。
「バカじゃないの!?ほんと天然タラシ!バカ!私はこういうキャラを主人公にしたいだけ。現実になろうとなんてしてないの。わかったら放課後までに、主人公の設定はっきりしときなさいよ?勉強も教えてもらってあげるんだから。」
どうして心愛はめんどくさい日本語ばかり使うのだろうか。もっと素直に教えてほしいって言えばいいのに。まどろっこしい言い方より、ずっと楽だと思うんだけど…。
あえて口には出さなかったが、心愛は誰がどう見ても公認のツンデレだ。
僕は心愛の言う通り、キャラ設定をはっきりと完成させた。
かった布とも合うように、服の設定も絵に描いて完成させた。
そのおかげで授業は集中できないままに、一日を終えたのだった。