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学園ラブコメは夢を見せない  作者: 長月茉央
第一章~特別なもの
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デートのお誘いは夢を見せない。

急な疲れに襲われた海だったが、心愛に自分の方が疲れた。と言われ申し訳なくなった。

そして海のとった行動は…

さらに小説に向き合う海の感情は…

「なんだか今日は特に疲れた気がするよ。」

僕は部屋につくなりベットに倒れこんだ。と同時に、はにわのクッションが僕の視界に飛び込んできた。

いつものように無表情な顔をしてベットの端に佇んでいる、はにわのクッション。僕が作ったわけだから文句は言えないけど、もう少し表情柔らかく作ればよかったと後悔してしまった。

「うーみー何が疲れたよ。私の方が疲れたに決まってるじゃん!あの望愛って女から海を守るために。」

心愛はふくれっ面で僕の背中に乗っている。重くはない。重くはないけど…

「心愛…降りてくれないかな?痛いんだけど…」

僕はバタバタとして見せた。すると心愛は少し背中を圧して立ち上がった。すこぶる機嫌が悪いようだ。

「まぁ松山もわかってやれ。姫川は今日一日頑張ってたんだから。」

信司も心愛の肩を持っている。僕が気付かないうちに心愛に迷惑かけていたみたい。

「なんかごめんね。」

僕は、はにわのクッションを心愛の前に突き出した。心愛は表情同じでいたが、それを受け取って抱きかかえた。

「あのさ、心愛。お詫びに次の休みどこか行こうか。」

僕は思わず心愛に言った。心愛は少し驚いたように僕を見つめた。信司も驚いたようでいつも笑うタイミングで笑っていない。何かまずいことでも言ったのかな?僕はそう思ってしまった。

「良いわよ。付き合ってあげても構わないわ。」

そのとき珍しく嬉しそうに笑った心愛を見た気がした。普段からこうならいいのにとは、口が裂けても言えそうにはなかった。

「おいおい。頼むからデートに誘うなら俺がいないときにしてくれよな。」

信司が寂しそうに呟いて苦笑いをして見せた。僕は何も言わずに両手を合わせて少し頭を下げた。

別に頭を下げたことに他意は無かったが、信司の気持ち考えてあげられなかったと思う。

実際他人の心を読むのは難しい。心愛の心も確実に読んであげれたことないよなぁ。

僕はそう思うと残念に思えてきた。

「そうだったね、ごめん。でも岡本くんが居ないときなんてないじゃない。」

僕はあえて謝らなかった。僕が本気で謝っても仕方がないと思ってしまう。実際よく解らないまま謝られたところで納得いかないだろう。

「まぁそれもそうだな。わりぃな。」

信司が楽しそうに言うので僕は少し罪悪感が消えた気がした。

「それじゃあ、今は頑張ろうね。」

僕は2人にはにわのクッションを向けて言った。2人が頷くのを見て僕は、はにわのクッションを元あったベットに戻した。そして机のパソコンを立ち上げて座った。


「「む…難しい…」」

僕と心愛の声が重なった。顏を見合わせて苦笑いして見せた。

言い回しだとか、口調だとかがどうも難しい。何文字も書いているとどうしても初期設定を忘れてしまう。最初に使っていた口調もだんだんとわからなくなってしまっている。

「心愛はどこまで進んだ?」

僕は机に突っ伏した心愛になげかけた。こんなに悩んでいる心愛は始めてみた気がする。

あえて聞きはしないが、少し気になってしまう。

「んー。2000字×10。でも後で見直ししたら半分以上は消える…。」

心愛は顔も上げず大声で言う。僕よりも進んでいる様だが、僕は見直しで半分以上は消えないな…。

というより、僕らが騒いでいるのに信司は全く集中力が切れていない。

「そっかぁ。それにしても岡本くんはすごいなぁ。僕も集中力欲しいよ。」

僕はそう呟きながらまたパソコンに向かった。しばらく心愛の小さな叫び声が消えなかったが、しばらくしたら静かにパソコンに向かっていた。

集中力の無い僕は、10分に1度は手を止めて休憩してしまっている。でもそれは2人に気付かれてはいなかったので内緒にしておこうと心の中で呟いた。


どれほどの時間がたっただろうか、いつの間にか信司は作業を終えていた。心愛は紙にペンを走らせているらしい。僕は思わず心愛と信司を何度も見た。

「松山終わったのか?」

信司が僕のパソコン画面を覗き込んで頷いた。心愛も何も言わずに僕の方を覗き込んで大きく頷く。

実はまだノルマは達成していないんだけど…そんなことを言える雰囲気ではないことぐらいは理解できた。

「そんなことより、岡本くんはいつの間に終わったの?気付かなかったよ。」

僕は話題転換をしようと信司に問いかけた。しかし下手だったようで信司には気付かれてしまったようだった。

「なんだよまだ終わってなかったのか。まぁいいか。俺はいつだったかな…それでも20分前だと思うぜ。」

信司は豪快に笑いながら出来上がった絵を机に広げた。3枚描いたらしく、どの絵もやっぱり生き生きとしていた。色の無い白黒の絵はすごく魅力的に輝いて見えた。

「さすがだね。僕にも画力恵んでよ。」

僕は絵を軽く握りしめて信司の方を見た。首を横に振って‘松山も上手だよ。’なんて言う信司は大人だと思ってしまう。もしかして僕が子供なだけなのかな?

「私まだ終わってないわよ。だから海と同じわけ。」

心愛がノートを僕の目の前に突き出してきた。ノートに"やり直し"と赤ペンで大きく書いているのが見えた。たぶん設定自体を変えたようだった。ずいぶんと急なことだと思ったが、心愛の考えなので僕は何も言わない。

「そっか。じゃあ頑張ろうね。」

僕がそう言うと心愛は‘当たり前。’と言う顔をした。その顔に負けられないとちょっとした競争心が芽生えた。

まだまだ完成には程遠い、僕らの小説はライバルであり親友、恋人の支えがあるから少しずつ進めるんだ。僕はそう心に確かめた。

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