美少女は夢を見せない
入学式を終え、松山海の待ちに待った始業式の日。
そんな時出会ったのは、
美少女だが、電波系かつツンデレ属性の姫川心愛だった。
お互い同じクラスなのは知っていて、
偶然文芸部の部室前で出会ったのをきかっけに、友人になって・・・
春が来た。桜が咲く道を歩いて学校に向かう。
僕、松山海は今日から待ちに待った高校生活を迎えた。
僕が向かう学校はいたって普通の公立校で、良くも無く悪くも無いどこにでもあるような高校。
そんな高校の魅かれたところは、文芸部があるところだ。
文芸部と言っても、ただの文芸部ではない。本格的に小説を書き、応募まで行っているのだ。
実際に入賞して卒業後デビューした人もいる。
僕の将来の夢はライトノベル作家、イラストも自分で手掛けていきたいと思っている。
「文芸部たのしみだな。早く始業式終わらないかな。」
親にはライトノベル作家になりたいと話していない。くだらないと言われるに違いない。
それを恐れ言い出せなかった。
「まぁ皆に夢を与えるような
ゆるふわ系のライトノベル作家になりたいなんて、親には言えないよ」
僕はため息混じりに呟いた。
「だけど、文芸部で功績を出して、デビューしてしまえばこっちのものだ!・・・でもなぁ。そんな簡単にはいかないよな・・・。」
夢は大きく現実はしっかりと。
そんなことを考えていると後ろから声がした。
「ちょっとそこのあんた!そんなところで突っ立ってんじゃないわよ!邪魔よ邪魔。」
いかにも気の強そうな女の子が立っていた。銀髪を風になびかせ、一般的に"美少女゛と言われる部類に入るような美少女。ライトノベルに出てきても可笑しくないような完璧な容姿の持ち主に見える。
しかし態度が悪い。ライトノベルでは許せるような少女でも現実では人波から浮いてしまう性格だ。
「あの・・・失礼かもしれませんが、もう少し物腰柔らかな口調で話した方が可愛いと思うんですけが?」
僕がそう言った瞬間に少女の顔が赤らんだ。正直可愛い。
先程までの仏頂面とは違い
表情がコロコロと変わっている。
もしかすると・・・
「もしかしてあなたはツンデレさんですか・・・?」
僕は恐る恐る逃げ腰で尋ねた。
「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!!」
少女はそう言って走り去ってしまった。
「・・・。なんなんだろう・・・あの子は・・・」
僕は初めてライトノベル以外、この現実で典型的なツンデレを見た。
学校に着き、始業式を終えた。
入学式とは違い全学年揃うので人が多い。
HRを終え、僕は人混みを避けながら、文芸部の部室に向かった。
扉の前でパタリと立ち止まった。
朝の少女が同じ扉を開けようとしている。
「あなた・・・さっきの・・・あなたも文芸部?」
僕は少女に声をかけた。
クラスが同じことを知っているので先輩という事もない。
「だったらどうした。私がどの部活に入ろうと自由でしょ!?」
少女がそう言って突っ張る。
「そこまで言わなくたって良いじゃないか。同じ仲間なら仲良くなれるかもって、少しぐらい思っても良いよね・・・。」
僕は同じ趣味なら仲良くなれると思ったがそう簡単ではないようだ。
しかし少女からは思いがけない返事がきた。
「別に仲良くしてあげないこともないけど。」
ツンデレだ。完璧にツンデレだ。
上から目線での返事に僕は苦笑いを覚えたが、友人が出来るなら良いかとも思う。
「じゃあこれからよろしく。僕は松山海。あっ、僕のことは何とでも呼んで。君は・・・。」
「私は姫川心愛。心愛でいいわ。よろしく。」
僕らは自己紹介をした。
そして2人で部室に入った。