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学園ラブコメは夢を見せない  作者: 長月茉央
第一章~特別なもの
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衣装交換は夢を見せない

それぞれの作業を終えた、海と心愛と信司はお互いに見せあった。

海と心愛は服を着替えて、完成を喜んだ。

そして、心愛は前に海に行ったことを思い出して・・・

海は心愛と2ショットと撮るが・・・

僕と心愛は服を、信司は絵を5枚。出来上がった物をそれぞれ見せた。

心愛の服は先程から見ていたから大体を把握していたが、信司の絵は初めて見た。初めてと言っても、前にチラッと見たことがあった。ラクガキされたノートに目を引かれたが、見すぎて変だと思われるのを避けるために直ぐ目を反らしたことがある。

「上手いじゃない。文句ないわ。でも5枚じゃ少ないわ。もう少し描いてくれない?」

珍しく心愛が頼み口調で言った。

進歩だと思う。もっと上から目線で来ると思ったから意外だった。

「岡本くん上手だね。」

僕は驚いた表情を隠しきれないまま、信司の絵を手にとった。信司は珍しく恥ずかしそうにしながら前髪を触った。

「2人も凄いぜ?着てみないのか?」

信司は僕の手から絵を取り、話を変えるように切り出した。

「そうね。せっかくだから着ないとね。だから…2人は部屋の外へ出ていって。」

心愛は半ば強引に僕と信司を部屋の外に追い出した。

…一応僕の部屋なんだけどな。後…僕はどこで着替えるんだよ。

「ほんと姫川って無茶苦茶だな。」

信司は状況についていく事に必死のようだ。

「僕はもう慣れたよ。無茶苦茶だけと、きってそれが心愛なんだよ。」

僕はそう言いながら、作った服を着れずに抱えていた。



「もう良いわよ。」

数分後、部屋の中から心愛の声がした。僕と信司はゆっくりと部屋に入った。

「どう?感想は?似合わないの意見は受け付けないわよ。」

心愛は胸をはって言った。フリフリの衣装が心愛をまとっている。

淡いピンクの衣装は心愛の銀色になびく髪の毛を強調させている。そのせいか、いつもよりも輝いて見える。

「似合ってるよ。可愛い。でもしいて言うなら、何か上に羽織ってください…。」

僕は目線を上に向けた。心愛は始めキョトンとしていたが、意味を理解して顔を染めた。

「海のバカ!!まったく嫌になっちゃう。」

心愛はそう言って、近くにかけておいた僕のカーディガンを羽織った。ほっぺたを膨らませて怒っているように見えたが、たぶん怒ってはいないのだろう。

その証拠に定位置にある、はにわのクッションを抱きかかえていた。


だけど正直言って驚いた。普段は制服で判らなかったけれど、意外と胸が大きい。変な意味じゃなくて、心愛が今着ているような胸元のあいた服を着られると、目のやり場に困ってしまう。

「そこの2人!俺を措いて青春するな。」

信司は僕と心愛の様子を微笑ましく見えるらしい。それならそれでもいいんだけどさ。

「そうだ!海。覚えてるわよね?衣装交換の話。出来上がったら、着せてあげるって言ったでしょ。」

心愛は、急に立ち上がって言った。確かにそんな話をした。でも本当に着るとは言ってないんだけどな。

「私の胸を見た罰として着なさい。着ないと許さないんだからね。」

心愛がふんぞり返って言う。胸元は見たけど、服の上からじゃないか。そんな誤解を招くような言い方しないでほしいよ。

「ほら早く着なさいよ。岡本も見てみたいでしょ?」

心愛は嬉々として信司に話しかける。信司は楽しそうに頷いた。

「松山は顔が可愛いからきっと似合うよ。髪の毛も見方によっては女子に見えるし。」

信司はそう言って、僕を見た。僕としては、女顔と言われても嬉しくはない。

「わかったよ。着ればいいんだろ。着れば。」

僕はため息をつきながら言った。

「ふふん。んじゃ着替えるから早く出ていってちょうだい。それから、その学ラン貸して。私が着るから。」

心愛は嬉しそうに跳ねながら扉を閉めた。中から鼻歌が聞こえてきて逆に怖く感じた。

「岡本くんも心愛に乗らなくていいよ?心愛ってば嬉々として僕に命令するんだから。」

僕は扉にもたれ掛る信司に言った。信司は静かに首を振った。

「俺も楽しいんだ。松山だって実は楽しんでるんだろ?嫌そうに見えないぜ?」

僕の気持ちは信司にはお見通しってわけか。実際に嫌ってわけではない。本当に嫌なら、適当に理由を付けて断っているだろう。そうこうしているうちに中から心愛の声がした。

「入っていいわよ。」

僕と信司はその声で部屋に入った。

心愛は、先ほどまで僕が着ていた学ランを身にまとい、僕に自分が着ていたピンクのフリフリ衣装を渡してきた。僕はそれを受け取った。そもそも、初歩的な疑問だけど、心愛サイズの服が僕に入るのかという問題なんだが。僕はそう思いながら、隣の部屋に着替えに行った。


「入ってしまった…。すごい複雑なんだけど。」

僕は鏡に全身を映した。意外にも似合わなくない自分の姿にため息が漏れる。

とりあえず、僕は自分の部屋に戻った。

「あの…。心愛、コレ来たのはいいんだけどさ…。」

僕は扉の影から顔を覗かせた。僕の姿に心愛と信司が驚いた表情を見せる。

「むかつくわね。似合ってるし、それより、なんでぴったりなのよ!!」

言われたから着ただけなのに怒られた。ほんと我が儘なんだから。

「松山似合うな。本物の女子だったら付き合いたいぐらいだよ。」

信司がおなかを抱えて笑っている。説得力無いな…

「そろそろ脱いd・・・」

「写真撮るわよ!ほら海。こっち向いて」

パシャッ。僕の言葉を遮りながら、心愛が写真を撮る。僕は一瞬の事で、その出来事についていけなかった。写真はぶれてしまって、よく解らない。

「心愛…。急に言われても困るよ。どうせなら岡本くんに撮ってもらえばいいだろ。」

僕は呆れたように心愛に言う。心愛はその手があったと言わんばかりに、信司にケータイを渡した。

「いくぜ。はいチーズ。」

パシャッ。今度はしっかりとカメラ目線でピースサインをした。フリフリな服を着たままだったが、嬉しそうに微笑む心愛を見ると、どうでも良くなってしまった。

「じゃぁコレ。待ち受けにするわね。海も待ち受けにしなさいよ。岡本も待ち受けにしなさい。」

そう言って心愛は僕と信司のケータイに写真を送った。待ち受けって…まぁ見られなきゃいいのか?そんな問題でもない気がするんだけどな。

僕の気持ちを余所に心愛と信司は待ち受けに設定している。信司なんて映ってもいないのに、楽しそうに設定をしていた。僕も仕方なく待ち受けに設定した。

一応、女子っていうか心愛との2ショット写真なわけで、喜ぶべきなのか。

何とも言えない感覚に陥りながらも、僕はケータイを開けるたびに見える学ラン姿の心愛と、フリフリ衣装の僕を眺めて笑った。

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