上から目線の女子はいつも夢を見せない
やっと海の家についた3人。
海の部屋で心愛は自分の家の様にくつろぎ過ごす。
そんな心愛に海は…
3人の気持ちは昂りつづけ…
ようやく家に着いた。あれだけゆっくり歩いたせいもあり、いつもよりも帰宅するのに時間がかかった。都合が悪く母親と出くわしてしまった。
「あら?今日は心愛ちゃんだけじゃないのね。海も友達作れるのね。」
「母さん余計なこと言わなくていいから。」
母親の言葉にすかさず言葉を挟む。まったくお喋りなんだから。昔からだから解っていたけれど。
「はじめまして。僕は岡本信司って言います。」
信司は普段とは違う一人称で挨拶をした。信司はこういうのに慣れているのか。少しすごいと思ってしまった。
「じゃあ僕達上にいくから。」
僕は母親にそう告げると、2人を引っ張って部屋に入った。ちょっと強引だと思ったが、母親の話が長いことを知っている身としては、早く
部屋に行きたかったのだ。
「ほんとお喋りなんだから。ごめんよ。精神年齢が若いんだよ。」
僕は部屋の扉を閉めて信司に謝った。信司の大丈夫だと言うような表情で安心した。信司は優しいよ。本当にいい奴だ。
「岡本って無駄にいい奴ね。あり得ないほどにね。」
心愛が、はにわのクッションを抱き抱えながら言った。本当に気に入ったんだな。むしろ、はにわが好きなのか?そうなのか?
「なに見てんのよ。私が可愛いからって見とれてるわけ?」
心愛が強ち間違ってない事を言った。心愛は強気だよほんとに。見習いたいよ。したいとかそうじゃないんだけど。僕は心でそう思いながら、信司を見た。信司はのんきに床下に置いていたノートを見ていた。
「やっぱり上手いな。俺も頑張らないとな。」
ノートを手渡してきた信司は恥ずかしそうに頭をかいた。なにが恥ずかしいのかは全くわからなかったのだが、信司なりに恥ずかしかったのだろ。
「なにいってるのよ!岡本の絵なんてプロ級じゃない!まっ、私の専属ならこれくらい当然だけどね。私を満足させないとクビだからね?わかったかしら??」
心愛はいつものように上から目線で話した。後、頼むからベットの上から降りてほしいな。スカートがめくれますよ。見ないけどさ…ちょっとぐらいは気にならない事もないが。健全な男子高生としては…っていってる場合じゃないか。教えたほうが…いいんだよな…?
「スカートめくれてるよ。取り合えず落ち着いて。ベットから降り…なくても良いから、落ち着こうよ。」
僕は心愛にゆっくり話しかけた。それに対して心愛は、真っ赤に染めた顔を強ばらせながら手に取れる範囲にあった、はにわのクッションを投げた。投げるって事は置いておいて、投げられる時はいつも、はにわのクッションだから優しいと思って良いのだろうか。一応柔らかい素材で出来てるし。
「見たわけ!?信じられない!変態!岡本もなんか言ってやって。」
心愛は僕に酷い罵声を浴びせてくる。せっかく教えてあげたって言うのにな。
「まぁまぁ。松山だって男子高生なんだから仕方ないんじゃないか?草食系男子っぽいけど意外だな。」
信司はふざけたように言う。さすがにそれは心愛が怒ると思ったが、以外にも納得したように呟いた。
「ま、男子なんて所詮はこんな生き物よね。」
心愛はゴミを見るような目で見下した。その目線を向けても良いとは言わさないからな。鋼鉄のハートでも傷つくから!!って僕は鋼鉄のハートなんて持ち合わせてないよ。むしろガラスだよ。すぐに割れそうな。
…それはさておき、僕としては服の完成を急ぎたい。今日完成させれば正式入部にも間に合う。
「心愛。布は?早く作ってしまおうよ。」
僕は冷たい目線を向ける心愛に、針と糸を渡した。すると心愛は、何事もなかったかのように無邪気な笑顔で笑った。よっぽど早く服を完成させたいようだ。
「心愛。お前ってわかりやすいよな。」
僕が顔を綻ばせる心愛の方を向いて言葉を出した。驚いた心愛は顔を真っ赤に染めた顔を両手で隠した。勿体無い。隠さなくてもいいのにな。見れそうで見れない顏なんだから。
「いいから早く作るわよ!岡本は私の小説を読んでなさい。ここだと思う部分に絵を付けてもいいわ。」
心愛はいつもの様に上からものを言う。僕たちはそれに従うように返事をした。
相変わらず可愛いと思ってしまう僕は、おかしいですか?
僕は心の中で信司に問う。もちろん信司は僕の心は読めないから、返事は帰ってこない。
そんな信司は小説に夢中でこちらを向きはしないし、心愛は布と針に苦戦している。
僕は少し可笑しくなったが笑いを必死にこらえた。
そして自分自身の作業にうつすことにした。
僕らは3人とも自分の気持ちの昂りを抑えられなかった。
衣装完成に近ずく僕と心愛。小説に合わせて絵を描く信司。大きな夢を描くようにただひたすらと。
それから3時間。僕らはそれぞれの作業を終えた。