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学園ラブコメは夢を見せない  作者: 長月茉央
第一章~特別なもの
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添削ノートは夢を見せない

夜更かしして書いた設定を、お互いで見せ合う海と心愛。

よきライバル、よき親友として、小説づくりに専念している。

そして、2人の唯一の友人岡本の心情は・・・

夜更かししても朝はやってくる。僕はなんとかベットから抜け出した。正直しんどい。夜更かしのせいでかなりダルい。

「あーしんどいよ…。でも夜の頑張りでノートが終わったよ。今日は心愛と意見交換をしよう。」

僕は少しテンションを取り戻しつつ、準備に取りかかった。

眠い目を必死にこじ開けながら台所に向かう。階段を危なげに降りた。

「おはよう母さん。」僕は台所で料理をする母親に挨拶をした。母親は゛おはよう゛と言いながらも手を動かしている。僕は邪魔をしないように冷蔵庫からお茶を取り出した。

取り出したお茶を無造作に入れた。そして時間がなかった僕は、机に置いてあったパンを加えて、慌てて家を出た。

「たぶん時間にルーズってわけでは無いんだけど…約束とかが無いと、時間内につけばいいとか思っちゃうんだよね…。」

家を出て自転車を漕ぎながら呟いた。スピード感溢れる生活をしたいわけではない。むしろ俗に言われる<スローライフ>に憧れる。

性格上の関係か、セカセカするのは性に合わない。

僕はほぼ無意識に自転車を漕いでいた。

僕が門を遠目で見れる範囲まで近づくと、またしても心愛が待っていた。

「心愛!?また待ってたの!?先に行ってても良いんだよ!?後さ…岡本くん…どうして心愛と待ってるのかな…?」

僕は心愛の横にいた信司に目をやった。

明らかに今来た様子ではない。足元に置かれた鞄、自転車登校を匂わす自転車の鍵を持つにも関わらず、傍に自転車がない。そこから考えても、心愛に付き合って待っていたとしか思えなかった。

「心愛、岡本くんを巻き込んだらだめじゃないか。」

僕は心愛に目をやった。

「松山。俺がわざわざ待たせてもらったんだ。待ち時間ってのも悪くないな。」

信司は僕と心愛の仲裁(?)に割って入った。確かに見たところ、楽しそうに笑っているようだ。

「聞いたでしよ?私が無理言ったわけじゃないわ。岡本がどうしてもって言うから。」

心愛は嬉しそうに僕に言った。

もうなんとでも言っていてくれ。なんでもいいよもぅ。信司も心愛の性格になんともないようだし。

「あのな?そろそろ教室に行かないと、遅刻するぜ?」

信司が時計を指差した。

僕と心愛はそれを見て慌てた。

「やばい海!早く行かなきゃ。」

そう言って心愛が走り出した。それに釣られるように信司が走り出す。せっかくゆっくりと来たのに、結局は走らないといけないのか。

僕のため息を他所に2人は僕よりも遥か前を走っていた。


教室のドアを開けると同時にチャイムがなった。ギリギリセーフだ。

心愛も信司はなにくわぬ顔で席に着いていた。2人とも運動神経がいいんだろうな。

「…。海遅いわよ。まったくトロいんだから。」

心愛が僕に言った。席が隣りだから小さい声でも話が出来る。

「僕はスローライフを楽しむんだよ。」

僕は心愛に言った。急いでも僕は何一つ上手く出来ない。

ゆっくりと確実にするのが好きなのだ。心愛は不思議そうに首を傾げた。

「海って変なの。」

心愛がそう言って前を向いた。

僕からすれば心愛の方が…。

この先は言わないでおこう。後、少し残念なのは信司の席が遠いことだ。

僕と心愛は一番後ろの窓側。信司は教卓の真ん前。

後ろから信司を見ると、信司の周りには何人かのクラスメイトがいた。

やっぱり好かれやすい性格なんだな。

「岡本くんの性格って人から好かれやすいんだね。」

僕が心愛に言った。心愛は信司を見ながら頷く。僕も心愛も信司以外に友人なんていないよ。

「友達ね…。私は欲しい訳じゃないわ。私を解ってくれる人が1人でもいれば充分なんだからね。」

心愛はそう言って僕に一冊のノートを渡した。

「心愛?これって…。同じこと考えてたようだね。僕もこれ。」

そう言って僕と心愛はノートを交換した。それはお互いが睡眠時間を削って考えた小説の設定を描いたノートだ。

「何よ。海も?どうせなら海に添削してもらおうかと思って。まぁ海からのアドバイス聞いてあげないこともないわ。」

さっきまで大人しかったと思えば、またこれだ。

自信満々なところがむしろ羨ましく思うよ。

「そうだね。じゃあお互い1日見て、僕の家で話しようよ。今日は服が完成させれそうだし。」

僕は心愛に笑いかけた。

僕と同じく設定に夜更かしをしたのだろう。

少し目が赤く、典型的な寝不足の症状の様だ。

一文字一文字をしっかり見よう。心愛が僕に添削を頼んだのだから、ちゃんとしないといけない。

これは責任重大だよ。


少し意気込んだ後、前を向くと信司と目が合った。

なんだか解らないけど、僕らはお互いに笑いあった。

そして心愛のノートを見ようとしたが、授業が始まってしまい諦めた。次の休み時間にでも見ることにしよう。

そう思いながら、僕は授業のノートを広げた。ノートにはこの前書いた、心愛との会話が残っていて、無性におかしくて仕方なかった。僕が笑っていても、心愛は僕のノートの添削に夢中で授業のノートすら開いていないことに、僕はまた笑ってしまった。

ここには、僕しか知らない秘密があって面白い。なんだかんだ言っても、落ち着いてしまうなとしみじみ思ってしまった。


信司はそんな様子のい2人を不思議そうに眺めていた。

そして、何かを決心したのだった。

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