告白は夢を見せない
1日のほとんどを一緒に過ごす、海と心愛。
お互いがよき仲間でありよきライバルであった。
だけど心愛を好きなクラスメイトがいて・・・
心愛の思いと
初めて感じる海の心愛への気持ちは・・・
「あれ?あそこにいるのは心愛じゃないのか?」
交流会も終り、最終ホームルームを終えて掃除をしていた僕の目に心愛が写った。
声をかけようとしたが、周りにクラスメイトらしき人が何人か、いたので止めた。
どうせ一緒に部活に行って帰るのだから、わざわざ呼び止める必要もない。
そう思って掃除を優先させた。それに友達になれたのなら、邪魔するのも申し訳ない。
「そうだよな。心愛の性格は慣れれば問題ないし、見た目は完璧だからな。」
僕はそんな心愛と一緒にいるという優越感に浸りたくなった。
たぶん僕以外の人でもそう思うだろう。アニメから飛び出したような心愛の見た目とキャラクター性。ライトノベルを現実化したような…。
僕は何をあつく言ってるのだろう…。自分でも不思議だよ。
そう思っていた頃には掃除はすっかり終わっていた。
僕は心愛が戻ってくる間、1人になった教室で机に向かいノートを広げた。少しでも心愛と同じスピードで作業をしていきたい。それでも夜起きるのにも限界があるから、時間の空いた時にちょっとずつ考えることにしていた。
机に向かってから少し経った。僕はふと時計をみた。
「それにしても、心愛の奴遅くないか?もしかして僕のこと忘れてるのかな?」
先程心愛を見かけてから少なくとも、20分は経っている。いくらなんでも遅すぎる。流石に少し心配になってきた。
僕は立ち上がって心愛探しに向かった。何をあつく言ってるのだろう…。自分でも不思議だよ。
そう思っていた頃には掃除はすっかり終わっていた。
「それにしても、心愛の奴遅くないか?もしかして僕のこと忘れてるのか?」
先程心愛を見かけてから少なくとも、20分は経っている。流石に少し心配になってきた。
僕は立ち上がって心愛探しに向かった。
「僕を置いてどこいっちゃったんだよ。鞄置きっぱなしだし。」
僕は自分の鞄の他に、心愛の鞄を持っている。もう1度教室に戻るなんて手間がかかる。
荷物も多くないので比較的軽い鞄には、お揃いのキーホルダーがフルフルと揺れている。
僕としては早く心愛を見付けて部活に行きたい。
それでも一向に見つかる気がしない。後探してないのは女子トイレぐらいだよ…。
僕は疲れて文芸部の前で立ち止まった。ため息が自然と溢れる。
「海?なにしてるの?あっ私の鞄持っててくれたのね。やるじゃない。」
気が付くと、心愛が中腰の僕に覆い被さるように立っていた。
僕の心配を他所にケロッとした表情が何とも言えない気持ちになった。
「どこにいたんだよ。心配したんだからな。探しても見つからないし。」
僕は安堵の息を漏らし、心愛に尋ねた。心愛は何食わぬ顔で僕に言った。
「クラスメイトに告白されて、断ったらしつこくて罵ってきた。」
僕は呆れた。告白されていたのか。確かに交流会の時、やたらと心愛を見ていたクラスメイトがいたもんな。
「心愛…。あんまりキツいこと言ったらダメだからな。僕以外は心愛の性格に慣れてないんだから。」
僕は心愛に言った。それに対して心愛は不思議そうな顏をした。
「海、怒ってるの?」
心愛が首を傾げた。どうしてそうなるのだろうか。心愛の頭の中を覗いてみたいよ。
「怒ってないけど、急にどこかに行ったら心配するだろ?」
「わかったわ。告白されるときは言って行くわ。でも私誰の告白も受けるつもりないわ。だって私がいないと海が寂しいでしょ?」
心愛が自信満々に言い張る。なんの事だよ。まったく、つくづく可笑しな奴だよ。
告白されるときは言うってどういう意味なんだよ。告白されるタイミングが解るのか?
「まぁ心愛がそれで良いなら良いけどさぁ。でも恋は自由だよ?恋人作りたかったら作っても大丈夫なんだけどなぁ。恋と友情は別だよ。」
心愛の言葉に疑問はあったが、取り合えず寂しいとか、寂しくないの誤解をとろうと言葉を考えた。
それなのに、なんということだろう。心愛が真っ赤な顔をして僕を怒った。
「バカじゃないの!?私のことを、うわべだけでしか見れないような男子なんてお断りよ。見た目だけで決められたら堪らないわ。なのにそんな言い方ないじゃない。私の繊細な乙女心が解らないの?」
乙女心って…。流石に難しいよ。心愛さん。
あれ?でも前に、僕が土下座して頼み込んできたら考えないこともないって。あれはどういう意味なんだろう。って土下座はしないけど。
乙女心と言うか、心愛心は解らないよ。
心愛は僕に何を求めているんだよ。
「なんだかごめんよ。僕には乙女心…と言うか心愛心は難しいよ…。」
僕は少し混乱しつつも謝った。
心愛は満足そうに笑う。
「それで良いのよ。別に誤解しないでもらいたかっただけなんだから。私は夢を叶えるまで恋なんていらないの。」
そうだった。僕も心愛も同じ夢に向かっているんだ。
なんだか気持ちを初心に戻された気分だ。
「そうだね。僕も頑張らないと。」
僕はペコリと頭を下げた。心愛は嬉しそうにふんぞり返っている。
そんな心愛を見て僕は笑った。
そして心愛と文芸部の部室に入った。
何だかんだで今が楽しいから
それ以上、恋愛を求めたって仕方ない。
そう言い聞かせると同時に、チクリと胸が傷んだ気がした。
僕はまだその思いを知らないでいた。