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17話 見えた敵









「んで? 誰が誰を襲うって?」


私は心底見下した目でルリトを見る。


「やだな~。 カーレに決まってるじゃないか~♪」


悪気も無く率直に答えるルリト。反省どころか謝りもしなかった。


「・・・ハァ・・・。 君は変わらないんだな。 そういうとこ・・・。」


「そう言うカーレは弱くなったね。 体が幼児化するほどに。」


「・・・」


ルリトの真剣な声(口はにやついている)に私は何も言い返さず、肯定する。


「ま、あんだけの封印くらっちゃったらしょうがないのかなぁ? 『力』もほとんど抜き取られて散らばっちゃってたし・・・そこに更に封印だもんね。ほんと・・・あいつ等(・・・・)のせいで・・・。」


話していくたびにルリトの笑みが無くなっていくのが見て取れた。

目の輝かしい光も徐々に失われ、暗い虚ろな表情になっていく。


「・・・ルリト・・・。」


「ごねんねカーレ。僕()は封印を解く事が出来なかった・・・。だから僕達はカーレを1000年もの間1人にしちゃった・・・。」


ルリトは泣きそうな顔で私を見つめた。


「・・・なぁ、そろそろいいか?」


ジンが場の気まずい雰囲気にやっとのことで声を出した。


「何ですかジン、って・・・腕の怪我は・・・。」


「え? ああ・・・そいつにちょっと・・・。」


「・・・ルリト?」


「・・・ん? 何の事? 僕全然記憶に無いんだけど・・・? ・・・いや、でも何かやっちゃった様な気がしなくもないかな・・・?」


おいおい。 無意識に人の腕を抉ったっていうんですか? まぁルリトなら仕方な・・・くもないか?


「・・・君随分と寂しかったんだね。」


「そ、そんな事ないよ! 僕はただカーレが居なくて物足りなかっただけ!」


「分かった分かった。 んじゃ、ジンの怪我を治してやって?」


「・・・うん分かった。」


そう言うとルリトは渋々という感じにジンの傷に手を当てる。

ジンは意外そうに目を丸くしてその様子を見ていた。

魔法を使わず、魔力を流して塞がらせていく様子を。


「・・・何か勘違いしてるんじゃないかジン。 魔族は治癒魔法が使えないとでも思ったか?」


「い、いや・・・そんなことは・・・。」


「別に使えないけど?」


「何なんだよ!?」


「魔族は治癒魔法は使えない。 もともと戦闘用の魔法しか使えない種族なんでね。でも代わりに魔力を相手に送ることで傷を治すことが出来るんだ。 君達は忌み子で人間の血が入っているから治癒魔法は使えるだろうがな。」


ちらりとリーナを一瞥する。

リーナは自分の手を見て考え込んでいるようだ。


「・・・はい終わり! さぁカーレ! 僕と一緒に行こうよ!」


ルリトが投げやりにジンの手を叩き落とし叫ぶ。


「断る。」


「だよねカーレなら来てくれると・・・え? 断るの!?」


ルリトがありえないと呆然とする。


「何を勘違いしてるんだ君は。 君にはやること(・・・・)があるんだろう。 だからこの村を消して私の『力』を使おうとしたんじゃないのか?」


「っ! ・・・まぁね。 僕の目的は、魔王の転生を事前に阻止するために組織された軍の破壊だよ。

それがねふざけた名前なんだよ。 魔王――悪魔に対抗して天使の名を付けたそうだよ。 『神の使徒(アポステル)』っていうね。」


「・・・神の使徒?」


「そ。 ほんとふざけてるよね。 ただの人間風情が神の使徒と名乗るなんてさ。

で、僕達魔族は、囚われている同胞達に被害を出さないようにするためにはおおっぴろげには動けないわけ。でもそのふざけた組織を何とかするには・・・闇討ちしかないじゃん?」


まぁ他にやり様はあるだろうが・・・いいか。


「闇討ちって言っても簡単には行かないだろうから『力』を求めて今に至る、ってわけだよ。」


「・・・君は私の為に動いてくれているんだな。」


「当ったり前♪ 僕の全てはカーレで出来ている!」


え? ルリトは私から出来ている・・・んなわけないだろうが。

全く、私を勝手に細胞に一つにしないで頂きたいな。


「・・・なら大丈夫だよルリト。 私は弱り過ぎているし、まだ復活した事に気づかれてない。

今のうちに『力』は取り戻して行くさ。」














カーレは優しく微笑んだ。

カーレの笑みはとても温かい。何時も心が温かくなる。


カーレは出会って直ぐに旅に戻った。

僕はあるお願い(・・・)をされたので一緒には行けない。


カーレの姿が遠ざかっていく・・・ああ・・・


「カァレーーーーーーーーーーー!!」


うえーん。 目から塩の水がどんどん出てくるよーー。


「あ、主?」


「ど、どうしたのさ主!? 何、何なのさ? あ、もしかして悲しいの? ・・・あの主が?」


(そういえば自己紹介してない2人)紳士口調の男性リーハルトと語尾に「さ」がよくつく女性カナリアがオロオロと慌てふためく。

最後の言葉は聞かなかった事にしよう。うん。兎に角僕は――


「ふえーーん! カーレが行っちゃったぁ! カーレカーレェーー!」


・・・悲しいよぅ。













あの何時も飄々としていて掴みどころのない主が感情をあらわにして泣いておられる。

これには今まで前例が無かった為、私達にはどうしようも出来なさそうです。


私達――私、リーハルトと隣のカナリアは魔王様に会った事はありません。

ただ、毎日のように主にその素晴らしさを聞かされていただけでした。


私達には物語上の人物であった魔王様が目の前に現れ、更には、慕っていた主が魔王様を守護する騎士の1人だったという衝撃の事実。 流石の私達も驚きました。 腰が抜けそうなほどに・・・いや、まだそんなに歳ではありませんよ?

こほん。 まあそんな驚きの連続でしたが、結果的に一番の驚きは・・・主の思わぬ執着でしょうかね?

いやいや、別に無下にするわけではありませんよ?

ただ驚いただけです。


さて、そろそろ泣き止んで下さったでしょうか――「うええぇぇぇん!」・・・まだの様ですね。


兎に角、魔王様と出会った事は(プラス)だったでしょう。

私達の本来の(・・・)目指すべき目的が出来たわけですし、それに・・・主の心の一片を見れたのですから。

私達との絆も深まったみたいなものですかね。


「主、そろそろ泣き止んで下さい。 魔王様にお願い(・・・)、されたんでしょう?」


その一言で主の泣き声がピタリと止まります。


「・・・カーレのお願い・・・うん! 見ててねカーレ! 僕、頑張るよ♪」


主はやっと何時もの調子に戻ったようです。

やはりこの、少しズレた(・・・)、少し危うい方は私達の影での支えが必要の様ですね。



全く・・・手のかかる子供ですね、ふぅ。




















 

密かにルリトとリーハルトが大好きです♪

勿論カーレも♪


『神の使徒』――がカーレ達の主な敵ですね。

頑張っていきましょう!!



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