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9話 蒼い炎








まず、ジンが先に動いた。

既にジンは片手に短剣を持っており、その切っ先はホーンベアに向かっていた。

ジンは、とても速いとは言えないが無駄のない素早い動きでホーンベアの懐へと入り込む。

ホーンベアはその動きに追いつくことが出来なかった為、ジンを見失い、辺りを見回す。

がら空きとなった懐でジンは短剣をホーンベアの胸元へと突き立てた。


「グルァァァァァ!!」


叫びとも雄叫びともとれる奇声を発し、ホーンベアはジンへと圧し掛かった。


「っく!」


ジンは小さく呻き、すぐさまホーンベアから離れる。

ドオォォォンと大きな音を立てながら倒れこんだホーンベアは頭に付いた大きな角から電流を迸らせる。


バチッバチチチ


「・・・うわ~・・・痛そうだな~。」


「お前は大丈夫だろうがっ!」


電流が当たるのを想像した私の小さな囁きにジンは律儀し返事を返してくれた。

結構余裕の様だ。思ったよりも苦戦しているみたいだけど。


「・・・くっそ、めんどい。 一発で終わらせる!」


かっこよくジンが叫ぶが・・・最初からそうしろよ・・・。

ジンは急に真剣な顔つきになり、腰を落として短剣を片手で構える。


・・・あの熊って・・・美味しかったっけ・・・。


ジンの姿を見て先ずそう思った。

いや、別にジンを食べようとしてるわけではないんだけどね、はい。


そう思ったのはジンが勝つことに確信したからだ。

何故ならジンのとった構えは強い一撃を与える必殺技の様なものの一種の構えだからだ(人それぞれだが)。

普通に戦っても勝てるような相手に、わざわざ技――魔法を使うのは多分私の様子を見極める為だろう。

私がどう反応するかで、彼は私にどう接するか決めるはず。


なら、あえて違うことをしてやろうじゃないか。


ニヤリと口元を歪めてジンの動きに着目する。ジンは見ていることに気付いているだろうに、何の反応も見せずホーンベアと向き合う。

フゥと小さく息を吐き・・・


「・・・《炎の刃(フレイムブレイド)》」


ジンは静かに短剣に炎を纏わせる。

ただ炎を纏わせるだけの魔法なのに私は思わず関心してしまう。

何故なら、纏っている炎が蒼かった(・・・・)からだ。

それも澄んだ美しい蒼色の。


ホーンベアはその炎にたじろぎ、その隙をジンは見逃すことなく活用した。

先程の様に懐へ潜り込むのではなく真っ直ぐに突っ走り、剣を勢いに乗せたまま突き立てた。


「グ、ルゥアァァ、ァァァァァ!!」


辛そうな声を上げ続けたホーンベアは少しして、今度こそ倒れた。

ジンの短剣の蒼い炎は既に消えており、もともと無かったかの様に何も無かった。


「・・・・・さ、マリ。ホーンベアの毛皮と角を剥ぎ取るのを手伝ってくれないか?」


暫しの沈黙の後、ジンは控えめに私に声を掛けた。

話のタイミングが掴み易いように言ったのだろうが、女性に剥ぎ取りをさせるとは・・・。

まぁそれはどうでもいいのだが。というかこの世界では女性でも剥ぎ取りは日常茶飯事なので、どうこう言うつもりは最初からない。

でも炎の前に気になったことは先に聞いておこう。


「あ、あの・・・・毛皮と角は分かるけど・・・肉の方はいいの? こういう系の魔物の肉は売れると思うのだけど・・・。」


ジンは毛皮を器用に短剣で剥がしながらちょっと困った様に答えた。


「ああ・・・多分食べれなくなったと思うからさ・・・。」


ジンの答えに首を捻る。


「それって・・・元から食べられないってわけじゃなくて、さっきの攻撃で肉が駄目になってしまったって事でしょうか?」


「おお、察しがいいな。 まぁそんなとこだ。」


『そんなとこ』って事は、実際は違う理由なのだろう。だが、私は大して気にせず、

その答えに私はさっきの蒼い炎を思い出しながら思いつくことを呟く。


「・・・何処かで見た炎・・・懐かしい感じの・・・蒼い炎・・・蒼い?

そういえば確かに何処かで・・・んー・・・。」


「お、おい!」


「え?」


気付けば毛がべっとりと張り付いている手で肩を掴れていた。

払ってからにして欲しかったな・・・。


「お前、あの炎の事知ってるのか!?」


嫌に真剣な表情で緊迫した空気を醸し出す。

蒼い炎の事を知られては不味い事なのか、もしくは自分自身が(・・・・・)知りたいのか・・・。

暫し見詰め合うという状況が続き、その間に私は記憶の糸を辿る。


「・・・・・・・あ。」


思い出した。



「あれは・・・彼と同じ炎(・・・・・)だ。」



そう。私と最も親しい者達(・・・・・・・)の一人の()の炎だ。


ジンの炎は少ない上に、炎の()も落ちていたから気付けなかったようだ。


「・・・彼?」


ジンが少しの間を置いて訝しがる。


私は先程までの無邪気そうなキョトンとした表情を止めて、ジンを無表情で見据える。

全てを観察する様に。心の奥底まで見透かす様に。何から何までの全てを掌握する様に・・・。


ジンが私の変わりように眉を寄せ、更に訝しがる。

しかも、(無意識かも知れないが)軽くとはいえ戦闘態勢に入っていた。


どんだけ警戒されてるんだ私は。


「君の蒼い炎は標的を燃やすのではなく、細胞の一つ一つを死滅(・・)させるもの。・・・であってるだろう? まぁ君のはまだまだ完全とは言えない未完成の炎みたいだが。」


突然の私の表情だけでなく、言葉使いの変わりようにジンが目を丸く見開くが、それは一瞬のことで、直ぐに納得した様に真剣な顔つきに戻った。更に警戒心を強めた様だ。


ハァと軽く心の中で息を吐き、そして凜とした表情と声でジンに問う。



「君は魔族だな?」



ジンの纏っていた空気がピシリと音をたてた様な気がした。





















お肉は後でスタッフが美味しく頂きました(笑)


何か書いてみたかったので書いてみました。


あ、毛皮などは四次元ポケットのような仕掛けのジンのカバンに仕舞われました。

お気になさらず。。。

後々説明が出てくると思います。。。



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