出会いました4
”月と狼”
森の奥に一匹の狼が暮らしていました。
お月様は、狼のことをいつも見守っていました。
何故なら、狼の毛は真っ白で
ふわふわでしたが夜になるとお月様の光に包まれて
お月様と同じ、優しい銀色になるのです。
太陽の光を受けてばかりのお月様は、
同じ色に染まってくれる狼が大好きで見守っていました。
狼は、とても優しい心の持ち主でした。
しかし
大きな口に鋭い目。
恐ろしい顔をしていたので森の皆から怖がられていました。
狼には家族もトモダチもいません。
でも狼は寂しくありませんでした。
狼は銀色に染まった姿を
森の湖で見るたびに、お月様と一緒にいるようで
独りじゃないと思えたのです。
森の湖で
狼は、お月様に毎日話しかけました。
お月様は毎日、優しい光で狼を照らし出しました。
お互いに穏やかな毎日に幸せを感じていました。
あるとき終わりが来ます。
森で狩りをしていた王様が偶然、
月の光を受けた狼を見かけてしまいました。
城に帰った王様は召使い達に言いました。
”森に銀色に輝く狼がいる。私はあの美しい毛皮が欲しい”
さらに言葉を重ねました。
”美しい毛皮を持ってきた者には、褒美をやろう”
王様の号令で国中の男達が動き出したのです。
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「純は、居るか。」
昼食を食べ終えると、後ろから声をかけられる。
あぁ、いつ見ても切れ長の一重が親友とそっくり。
「さっき、渡辺先輩のところに行くって出て行きましたよ。
途中で会わなかったですか。」
声をかけてきたのは、無表情な渡辺先輩だ。
親友とは遠い親戚らしい。
とても仲が良いようで、2人でいるのを頻繁に見かける。
「いや・・・小さいから見逃したか。」
180㎝はあるだろう先輩は、本気でそう思っているらしく溜息をついた。
そして、いつの間にいたのか先輩の後ろに親友が仁王立ちしている。
「孝道、誰が小さいって? あんたがデカ過ぎるだけでしょう!」
「そうか?すまん。」
なぜ怒っているのかわからないという顔をされた身長150㎝の親友は呆れたようだ。
「人が気にしている身長を言うからよ。」
「・・・すまん。」
彼女の言い分を理解した先輩は気まずそうに謝る。
「だが、純は可愛いから大丈夫だ。」
どうやらフォローしているようだが、その言葉に親友は真っ赤になる。
「くっ!むかつく!」
小さく文句を言うが、反撃はしないらしい。
そして、私はふと思い出した。
「そういえば、二人は何か用事があったんじゃないの。」
純ちゃんは、はっと顔を上げて叫ぶ。
「あぁ!生徒会!」
今度は先輩が呆れたように歩行を促す。
「忘れてたのか?行くぞ。」
「何よ。その手は・・・」
「俺の彼女だと周りに牽制をする。」
「はぁ!?」
ふーん
いつの間に付き合いだしたのかなぁ。
手を握られ、ずるずると引き摺られる親友をじと目で見送る。
が、幸せそうで何よりだ。
比べて
私は読書している時が幸せだと思っていたが
最近、落ち着かない。
原因はわかっている。相模さんが来ないからだ。
あの日から彼は教室にも図書室にも現れなくなっていた。
関わりたくない時には居るのに・・・と思っていても仕方ない。
「毎日来てたのに、どうしたんだろ。」
ぽつりと呟いてしまう。
そして、彼が居なくて寂しがっているように聞こえる独り言に私は恥ずかしくなる。
私の胸中の霧は未だに晴れていない。
質問しようとしていたら会わなくなったので、余計気になっている始末だ。
・・・仕方ない、彼を訪ねに行こう。
教室の時計を見ると休憩時間が残り15分だと確認する。
15分なら話も出来るだろう。
私は重い足取りで、二つ隣の教室へと向かう。
彼の教室に、すぐにつく。
「すみません、相模さんはいらっしゃいますか。」
私は、教室に入ろうとしていた女生徒に話しかけた。
「相模君?教室には居ないけど・・・少し待ってて。」
彼女は面倒という様子を出さずに、走り出した。
「あ!待っ・・・」
待ってください。という声は届かないだろう。
彼女は廊下の彼方にいた。
他人の教室の前で居心地悪くしていると親切な女生徒が戻ってくる。
彼女の後ろには、相模さんがついてきていた。
所要時間にして1分半くらい。
”少し待ってて”の言葉は本当だった。
「ありがとうございます。」
私がお辞儀をすると女生徒は”どういたしまして”と返して教室へと入って行った。
目の前に立っている相模さんへ視線を移す。
今、彼の顔にはどんな感情も映っていないが瞳には私だけがいる。
「聞きたい事があります。」
このとき、少しだけ声が震えているのは
久しぶりに見た彼の瞳に捕らわれたからなのか自分でもよくわからない。
「幼い頃に私と会っていますか。」
ゆっくりとはっきりと聞こえるように質問する。
「それは・・・」
少し掠れた声が漏れてきたが、
私は目の前の人物がはぐらかさないように
しっかりと目を見つめてもう一度、訊く。
「私と会ってますか。」
すると、彼はぐっと眉根を寄せて話だす。
「父も母も黒髪に黒目だけど、僕の金髪と青い目は生まれつきなんだ。
父方の祖父が外国の人で、隔世遺伝したみたいなんだ。
両親は可愛がってくれたんだけど、幼い頃の僕にしてみれば、
この容姿は劣等感以外の何モノでもなかった。」
笑顔も消えて、彼は苦しさを耐えきれないように顔を歪める。
しかし、声は濁らず言い切る。
「だから初めて君に会った時、俺は救われたんだ。
そして、君を傷つけてしまった。」
「・・・」
私は思わず自身の太ももへと手を動かす。
その動きに気づいた彼は更に眉間に皺を寄せて断言する。
「俺のせいで出来た傷だ。」
その言葉を良い終えると、沈黙の時間が流れる。
私はどうしようか悩むが
目の端に入った時計を見て声をかける。
「今日の放課後、待ってます。」
彼が頷くのを確認して自分の教室を目指す。
休憩時間は残りわずか。
15分では足りなかったようだ。
それにしても、一人称が”俺”になってた。
あれが本来の喋り方なのか?
細々と書き綴っていますが、見苦しい箇所がありましたらすみません。