表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

出会いました3

手を握られたまま、資料室から足はやに遠ざかる。


「えーっと相模さん?もう平気だから。」

1階へと続く階段の踊り場にさしかかったときに恥ずかしさのあまり呟く。

手を離してほしい。

放課後で生徒が少ないとはいえ、手を繋いで歩いているのは悪目立ちする。


早く距離を取りたいと私が考えているのがわかったのか、握りしめられていた手が解かれる。

思っていたより強く握りしめられていたようで、私の手はほんの少し痺れている。

手を動かして痺れを紛らわせていると、硬い声が耳に入る。


「鈴村さん、あの子達には注意しといたから。」

「・・・え?」

理解するのが少し遅れたが、私を閉じ込めた娘たちのことだと合点がいく。

どうやら彼女達は私を放置した後に彼に会いに行ったようだ。

そこで、どうやって私の事がバレたのかは気になるが・・・・。

まずは、助けてくれたことと彼女達に注意してくれた彼にお礼を言わなければ。

「ありがとう。」


私が感謝の気持ちを告げると、彼は困った様子で小さく呟く。

「・・・本当にごめん。」

責任を感じている彼にしょんぼりと垂れている耳と尻尾が見えたきがした私は笑ってしまった。

「別に良いのに。ふふ。」

そして、一気に震えがくる。


資料室での出来事が脳裏に焼き付いている。

知らない男性(ひと)に抱きしめられて

「怖かった」


そう、平常心を保っていても怖かった。

閉じ込められた密室で、知らない人間に好きなよにされるのが

とても怖かったのだ。


涙が出そうになり、慌てて目元をこする。

泣いてしまったら相模さんが困るだろうし、人様に見せられる泣き顔じゃないからね。

私は笑顔で彼と向き合う。


「うん、これくらい大丈夫です!」


「・・・・これじゃ同じだ。」


同じって?

私の頬に彼は手を伸ばす。

指先はとても冷たく、そこから私の体温を奪っていくようだ。

彼はそこに私が存在するの確かめるように触れてくる。


「鈴村さんは・・・もっと警戒心を持ったほうが良いよ。」


哀しげな瞳を向けられて、私の記憶に何かがひっかかる。

こんな瞳を以前にも見た事がある。

でも、どこで見たのかも誰が向けた瞳だったのかも・・・霧がかかったように思い出せない。


「今日はもう遅いから、駅まで送るね。」


頬に触れていた手が離れ、王子は笑う。

先ほどまでの暗い気配は、どこにも無かった。



***********



誰もいない自宅に辿り着いた私は

いつものように着替えを取りお風呂場へとむかう。

(ぬる)めの水を湯船にためながら、シャワーで汗を流す。


さっぱりした所で、自分の太ももに視線を落とす。

右足の付け根から膝へ薄らと傷が入っている。

小さい頃に出来た傷らしいが、どうして出来たのが覚えていない。

霧がかかったように思い出せない。


「王子の瞳を見た時と一緒・・・。」


もしかして、幼い頃にあった事があるのだろうか。

明日にでも聞いてみよう。

そして今日は、眠る前にあの本を読もう。


私が大好きな『月と狼』。

伏線を消費しようとしたら増えた〜(汗)

次話では必ず1つ以上は謎を解きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ