表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

染まりますか4

重苦しい空気に耐えきれなくなった私は、相模さんに腕を掴まれたままで前進する。

腕を掴まれているのは私なのに、彼を引っ張る形で進む。

急に歩き出した私に反応できなかったのんか彼は小さく身体をふらつかせたが、すぐに体勢を立て直して私の隣を歩き出す。

2人に間に会話はなく、黙々と突き進む。

彼に腕は掴まれたままだ。


図書館の扉前まで移動した所で私は立ち止まり、扉から視線を少しずらす。

その先には、図書館の扉とは直角になるように少し離れた位置には外の中庭へ出る扉がある。

そしてその中庭には沢山の樹木が植えられていて、人の視線を避けるには絶好の場所がある。


「相模さん、外に出ましょうか」

「・・・・・何処行くの?」


肯定とも否定ともとれない相模さんの返事を聞き、外へ出る。

問答無用だ。


樹木で茂みになっている中庭の端に、忘れられた様に古ぼけた風合いのベンチが置かれている。

私はそこを目指す。

お昼は弁当を広げる生徒などで賑わう中庭だが、放課後になると静けさだけが支配する。

それもそのはず、運動系や文系の部室や練習場所が正反対の位置にるからだ。

放課後のこの場所にやってくるのはカップルくらいだが、今日は誰もいないようだ。


人気のない中庭を突き進み、もう一度、周囲に人が居ないか見回す。

相模さんが私の腕を掴んでいるとはいえ、遠目から見たら私が相模さんを茂みに引っぱり込んでいる事には違いない。

そんなところを目撃でもされたら、どんな面倒くさい事態になるか安易に想像できてしまう。


幸いにも人影は見当たらず・・・・・・・多分・・・・目撃されずに目的場所へ辿り着いた。

私が腰を下ろすと、同じように彼も隣に座る。

彼は私が図書館ではなく、中庭へと出た事で怪訝にこちらを伺っている。


それは、そうでしょうとも。

本好きな私が、図書館の前まできて目的地を逸らすなんて普通ならありえない。

何故私が外へ出たのか不思議だろう。

私は教室を出て相模さんに捕まった状態でここに来るまでに、”言いたい事は吐き出す”。

そう決意し、私語禁止の図書館だと不味いと思い人気も無く落ち着いて話せるこの場所へと出た。


まずは提案だ。

相模さがみさん、同情とか懐古で私に近づいているなら止めてくれませんか。

確かに、幼い頃に私が貴方あなたにきっ・・・・・キスをしましたが、それは幼い子がやるごっこ遊びです」


キスという単語の部分で恥ずかしくなってしまったが、今の勢いを失えば何も言えなくなりそうだ。

だから私は全てを吐き出すまで喋る。


「昔の事を今の年齢の私たちが継続するのは疑問に感じます。むしろ忘れてくれた方が有り難いです。

学校の中には貴方と一緒に居たいと思っているは大勢います。選びたい放題です。

なのに何故、よりにもよって私なんですか。私なんか暗くて地味な事が大好きな湿った人間なんですよ。

だから相模さんのように自身もあって、人に好かれている何でも出来る人が構う様な理由は無い筈なんです」


長い台詞を終えて、途中で言葉に詰まったが言える事は言った。

あとは彼の対応を見るだけだ。

そう思い、視線を上げると夕焼けに染まる色素の薄い彼の髪が私の横を通りすぎる。

気がついた時には、彼は私の肩に頭を置いて互いに表情が見えない状態になっている。


そして、どう対処して良いのか戸惑っている内に彼が呟く。

「勘違いしてる。俺が同情や懐古で君に近づくなんてあり得ない!・・・・ねぇ、どうしてそう思うの」

苛立が感じられる口調に私は身を硬くする。

怒ってるんだ。

なんで私なんかに!?

恐い!

恐い!


「本当に気づかないの?こんなに・・・・・」

肩から彼の頭の重みが無くなり、気配が首筋から耳元へと移動していく。

私が愛おしいと言うようにささやく。

「大切に思ってるのに」

ゆっくりと頬を撫でられくるむように抱きしめられる。

大切なものに触れるように優しく、甘く。


私は小さい悲鳴を上げる。

「っやだ」


彼の動きが静止する。

私は動揺しながら身をよじる。

未だ、彼の表情は伺えない位置にある。

だから彼がどんな事を考えているのかなんて、構いもせずに私は叫ぶ。


「約束を破った!あの時、見捨てたのはサト君なのに!」


傷つかないように、いろんなモノでつつんできた私の心が見えてしまう。

記憶が溢れ出してしまう。


あの時、あの状態の私は絶望したんだ。


醜い私は誰も助けてくれない。

父さんも母さんも居なくなった。

兄さんも私の手を離した。

そして、残されたのは冷たい視線だけ。

優しさに隠された、冷たい視線だけだった。


ぞわりとした感覚が背筋を走る。

そして今、この瞬間に甦る。


『あなた、どうしてココに居るの?』

幼い私を見下すように。

『居場所なんて無いわよ?誰も貴方なんて愛してくれないわ』

穏やかに微笑んでいた。

『だって、らない子だもの』

黒木の祖母は優しいくらいに微笑んでいた。

『親を殺した子なんて、誰も愛してくれるはずないでしょう』



すみません、変な所で途切れますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ