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緊張の糸の限界

「いくわよ」


 アーシャの号令で、田島は建物の陰から飛び出した。


 事前に忍び込み、仕掛けて置いた爆弾に、みなが気をとられている隙に、だ。


 爆発したのは、母屋から少し離れたガレージ。


 燃料も置いてあったため、予想以上の燃え上がりっぷりだ。


『いっそ、全部燃えていいのよ』


 そう、彼女は言っていた。


 今回の目的は、報復でなく奪還だと。


 姉と、生きているなら父親を助けて逃げられたら、それでいいのだ。


 協力しやすい内容で、田島は正直助かっていた。


 報復だ、皆殺しだと言われたら、さすがに覚悟を決めるのに、時間が必要そうだったのだ。


 二手に別れる。


 完治していないワンと田島は、二階の姉の方。


 アーシャと助っ人たちは、父親がとらわれているだろう地下だ。


 蜂の巣をつついたような大騒ぎにまぎれて、彼らは二階に上がった。


 人とすれ違っても、誰も彼らをとがめようとしない。


 ワンはさすがに、顔が割れすぎているので、帽子をかぶっていたが。


「エイナ様!」


 銃を構えながら、部屋を蹴り開けるワン。


 壁に張りつきながら、田島が中を覗くと。


「遅いわよ、ワン」


 中の主人は、ウェディングドレスを投げ捨てるところだった。


 シャツとジーンズ姿になっているが、それでも細すぎる身体だ。


「って、大樹!」


 中を観察していた田島は、すっとんきょうな声をあげていた。


 間違って撃たれないように、端で苦笑しながらホールドアップしている。


 はぁーと、田島は安堵のため息をついた。


 緊張の糸が、切れそうだ。


 安心する顔に、会ってしまったからだろう。


「シーツにくるんで、怪我人のように運び出しましょう」


 そう言う大樹の姿が、何故かスシ屋のもので――田島は緊張の糸の限界にチャレンジしてしまった。


 要するに。


 笑いたくてしょうがなかったのだ。

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