ウニの邪魔はさせない
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ぶるっ。
ウニ寿司を用意している大樹に、悪寒が走った。
本日、二度目だ。
この暑いのに、風邪でももらったのか、はたまた今日の作戦の、悪い予感なのか。
どちらもイヤだな――大樹はそう思いながら、出来上がったウニを持って、再び建物へと向かった。
さっきの男は、すっかり彼をただの寿司小僧と思っているようで、ノーチェックな上に、もう一人で届けてこいという投げやりぶり。
姉の態度のおかげだ。
計算していたのなら、たいしたものである。
どうやら、襲撃のことは漏れていないようだ。
アーシャたちが、表から姿を消し、うまく立ち回ったおかげか。
「スシ、お持ちしました」
部屋の前で、立ち止まる。
返事がない。
ゆっくりと、大樹はドアを開けた。
相変わらず、ウェディングドレスのままの彼女がいた。
入ろうとしたら。
大樹は、足を止めた。
女が三人、倒れている。
さっきまで、身の回りを世話していた侍女たちだ。
反射的に、大樹は部屋の中に入り、ドアを閉めていた。
そして、誰かいるのかと部屋を見渡す。
「私だけよ…どうせもう時間がないもの、監視なんてあろうがなかろうが、一緒だもの」
悠然と、自分の仕業だと告げるのだ。
時間。
もう、あと一時間ほどで式が始まる。
式が成立してからでは、迎えは遅すぎるということか。
「ウニをちょうだい…バカアーシャがつく前に、食べておかなきゃ」
女主人の貫禄に、大樹は苦笑しながらウニを差し出した。
瞬間。
建物を揺るがす爆音が、響き渡る。
アーシャたちの、襲撃が始まったのか?
振動に動きを止めた大樹の手から、皿がひったくられる。
「どうせ、ここまで来るわよ…ほっとけばいいんだわ」
もぐもぐ。
ウニは――きれいな唇の中に投げ込まれた。