揺らがない変人
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「まぢで、行くのか?」
大樹の話を、ツカサは呆れながら聞いていた。
聞きながらも、彼が冗談なんてこじゃれたものを言えないこともまた、知っていたのだ。
「うん、ツカサも考えておいて」
それどころか、ツカサの身の振り方の心配なんぞしている。
自衛隊も、白髪の部下も、どっちもまっぴらだっつうの!
彼は、お気楽に小銭稼いで遊んで生きたいだけだ。
身体を張る、命懸けの仕事なんてごめんだった。
「田島さん、連れて帰ってくるまで、ゆっくり考えてていいから」
本当に連れて帰る気なのが、大樹の信じられないところだ。
早く渡れて一週間後くらいなのに、それまで寮長が生きていると思うのか。
変わらない、無駄に真っすぐな目。
思ってるんだろうなぁ。
呆れ果てて、ツカサは天井を見た。
「勝手にどこにでも言ってこいよ! オレぁ、なんにも知らねーからな!」
寮長といい大樹といい、頭がおかしい。
せっかく日本に帰ってこられて、再びぬるい毎日が謳歌できるのに、なぜ好き好んでそれを放棄するのか。
恩義とか友情とか言いだすだろうから、どっちもはったおしてやりたくなる。
まず大事なのは、自分の命と生活!
それ以外は、その基本をクリア出来てからだ。
「うん、ツカサは待っていて」
なのに、揺らがない変人。
ツカサは、ベッドに飛び込んで、頭から毛布をひっかぶった。
欝陶しくてもう、この話はしたくなかったのだ。