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ぎゅう

 正確には、大樹はすぐには吉岡の部下にはなれない。


 十五の、中卒の子を国の秘密機関で、即採用というわけにはいかなかったのだ。


 だから、今回の大樹の肩書きは――現地ガイド。


 吉岡たちを、案内する役だ。


 通訳も出来るし、地理にも明るい。


 しかし、吉岡は最初から彼を部下にする選択肢を持っていた。


『自衛隊か、私のいる機関か…どちらか選んでもらうつもりだった』


 彼の言葉に、大樹はすぐに納得したのだ。


 自衛隊は、国の防衛機関だ。


 あらかじめ、大樹たちがテロリストの標的となっていることを根回ししておけば、国家規模で守ることが出来るし、相手も自衛隊を敵に回す覚悟が必要になる。


 吉岡の所属する機関は、簡単に言えばスパイ稼業だ。


 たくさんのテロリストに存在を知られ、煙たがられながらも、いまだ吉岡が五体満足なのは、国の力で戸籍や所在をいじっているからに違いない。


 そういう、超法規的措置の取れる組織なのだ。


 自衛隊は思い浮かばなかったが、たとえ浮かんだとしても、大樹は吉岡の方を選んだだろう。


 しかし、危険な仕事になるのは変わりない。


 だから大樹は、最初に貴恵に報告にきたのだ。


「あ、危ないことはするなよ」


 貴恵が、鼻をすすりながら、無理なことを言う。


 しかし、彼女にはそれしか言えないのだ。


 いや。


 ダメだと言い張らずにいてくれただけで、感謝するしかない。


「努力するよ」


 大樹は、目の前の身体を、ゆっくりとぎゅうっとした。


「あーもう、やっぱ、やだー」


 言葉を撤回したがる貴恵を、落ち着くまで抱き締めていなければならなかった。

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