表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/127

一石三鳥

「はっはっはっ、そりゃあ災難だったな」


 チーフの気楽な笑い声に、貴恵は苦笑した。


 アーシャの話の前説として、事情を話したところだ。


 送迎だけかと思いきや、美容室の窓から見えるところに、一台車がずっと停まっている。


 勤務時間中、ああして見張ってくださるようだ。


 落ち着かないこと、この上なかった。


「チーフが、きちんとアーシャに断り入れてあげて下さいよー。でないと、抜け出してきちゃいますよ」


 来づらいでしょうけど。


 とばっちりなのは分かっているが、せっかくアーシャがなついた相手なので、希望を叶えてあげたかった。


「んー西脇組ね…いままでカットしたヤクザさんにはいなかったなあ」


 仕事柄、そういう商売の人を扱うこともあるのだろう。


 この人のことだから、うまくあしらったに違いない。


「帰りに一緒すれば、いいわけかな?」


 ヤクザだからと言って、気負う様子がないところが、にくたらしく思える。


 貴恵など、昨日ずっと意識して、寝つけなかったと言うのに。


「んー、じゃあせっかくだから、そこで勉強会するか」


 は?


 耳を疑う。


 いま、何と言ったのか。


「コンテストモデルがないなら、もうちょい切りたかったんだよな、オレ。一揃い、道具準備しといて。スタッフも連れていこう」


 自分の希望を、さり気なく折り込みながら、話を進めていく。


「あの、一応狙われてるかもしれないんですが」


 貴恵は、もう一度そこを強調した。


「だからだよ」


 チーフは、さっくり切り返す。


「そんな人間と、オレだけが一緒だと、もしかしたらオレも狙われるかも知れないだろ? 数がワラワラいれば、的も絞られづらいじゃないか」


 きっぱりと、チーフはそう言い切った。


 さすがは、貴恵よりも世間を見ている人だ。


 自分の身も守りつつ、勉強会もしてしまい、アーシャも説得するという―― 一石三鳥の技を繰り出してきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ