晴れ時々ツカサ
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「西脇組にいるって」
美津子のピッチにかけた後、大樹はそれを二人に報告した。
いちいち携帯を借りるのは大変だろうと、吉岡が一台調達してくれたのだ。
最悪、ここの職員に話を盗聴されているかもしれないが、そこは吉岡の裁量に任せようとなったのである。
「そういや、日本人に恩義があるとか言ってたな、ボス」
田島が、記憶をたどる目線でつぶやく。
そう。
だから彼は、日本人のワケあり三人をかくまい、助けてくれたのだ。
「西脇組ってヤクザだろ? じゃあ、安全じゃん」
めでたしめでたし。
事の発端のツカサは、すっかりお気楽に笑う。
大樹にしては、複雑なところだ。
貴恵親子を、変な事件に巻き込んだ挙げ句、ヤクザにかかわらせてしまったのだから。
アーシャを無事帰し、自由になったら、きちんと詫びに行かなければならないだろう。
「ワンはどうだって?」
ヤクザと看護婦が絡んでいるのだ。
その情報も入っていると思っただろう、田島に聞かれる。
「一命はとりとめたけど、依然意識不明…撃った人間の情報はまだなし」
これでは、大樹も判断しようがない。
ただ。
おそれていることはある。
もしかしたら、と。
「ヤクザかぁ」
そんな大樹の思考を割って、ツカサが感慨深げにそう言った。
「この監禁生活終わったら、いっそヤクザに入れてもらうかな」
しかし、続いた言葉は穏やかではなかった。
「お前、マフィア生活に、懲りてないのか?」
田島が、さすがに茶化すでもなく、苦い表情だ。
「えーオレだって、懲りてるよ…でもさ」
ツカサか、唇を尖らせながら微妙な声音になる。
「でもさ、あんな体験して…今更カタギに戻れんの? オレたち」
瞬間。
大樹は田島を見た。
田島も大樹を見た。
時々――ツカサは鋭い。