表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/127

それでも

 三人、バラバラで事情聴取を受ける。


 田島は、日本に帰れるようになった時、こうなることを想定していた。


 大樹の知識には、ないだろうが、昔悪さしてた田島と、ちょっと昔に悪さをしていたツカサは、よく知っているやり方だ。


 だから、帰る前に最低限の打ち合せはすませていた。


 少なくとも、決して言わないことだけは決めたのだ。


「で…殺した、と」


 被害者の立場である、田島への確認の言葉。


「結果的には、そうです」


 まだ、船に拉致されている頃の話だ。


 三ヶ月を最後まで語りつくすまで、一体何日拘束されるか分からない。


「船には、何人乗っていたのかね?」


 田島は、その質問には、老人になって死ぬ間際でも答えられると思った。


「11人と1人です」


 変な表現になったのには、理由がある。


 11は、彼らが後始末のため、海に投げ入れた体の数。


 残りの1は、大海原のど真ん中にも関わらず、飛び込んで逃げた数。


 そう説明すると、相手はうなった。


 保身のためとはいえ、自分たちの四倍の人数を葬ったのだ。


「どうやって?」


 もう思い出したくないと言っても、許してはくれないだろう。


 だんだん、自分が容疑者な気分になってきた。


「ほとんどが、同士討ちです。暗がりだったので」


 その作戦を立て、指揮したのは――大樹。


 田島は、片腕が折れていたし、ツカサは頭を使うタイプではなかった。


 夜にまぎれて、大きな音で混乱を生み、あっけないほど簡単に同士討ちしてくれた。


「では…同士討ちしなかった人間は?」


 質問は終わらない。


 田島は、ほかの二人を思った。


 キレかけているだろうツカサと、淡々と答えるだろう大樹のことを。


「残りは…」


 引き算くらい、自分でしてくれればいいのに。


 そうすれば、わざわざ言わなくても分かるはずなのだから。


「残りは、抵抗をやめなかったので、飛び込んだ一人以外全部……」


 シン、とする室内。


 それでも、彼らは――被害者だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ