それでも
☆
三人、バラバラで事情聴取を受ける。
田島は、日本に帰れるようになった時、こうなることを想定していた。
大樹の知識には、ないだろうが、昔悪さしてた田島と、ちょっと昔に悪さをしていたツカサは、よく知っているやり方だ。
だから、帰る前に最低限の打ち合せはすませていた。
少なくとも、決して言わないことだけは決めたのだ。
「で…殺した、と」
被害者の立場である、田島への確認の言葉。
「結果的には、そうです」
まだ、船に拉致されている頃の話だ。
三ヶ月を最後まで語りつくすまで、一体何日拘束されるか分からない。
「船には、何人乗っていたのかね?」
田島は、その質問には、老人になって死ぬ間際でも答えられると思った。
「11人と1人です」
変な表現になったのには、理由がある。
11は、彼らが後始末のため、海に投げ入れた体の数。
残りの1は、大海原のど真ん中にも関わらず、飛び込んで逃げた数。
そう説明すると、相手はうなった。
保身のためとはいえ、自分たちの四倍の人数を葬ったのだ。
「どうやって?」
もう思い出したくないと言っても、許してはくれないだろう。
だんだん、自分が容疑者な気分になってきた。
「ほとんどが、同士討ちです。暗がりだったので」
その作戦を立て、指揮したのは――大樹。
田島は、片腕が折れていたし、ツカサは頭を使うタイプではなかった。
夜にまぎれて、大きな音で混乱を生み、あっけないほど簡単に同士討ちしてくれた。
「では…同士討ちしなかった人間は?」
質問は終わらない。
田島は、ほかの二人を思った。
キレかけているだろうツカサと、淡々と答えるだろう大樹のことを。
「残りは…」
引き算くらい、自分でしてくれればいいのに。
そうすれば、わざわざ言わなくても分かるはずなのだから。
「残りは、抵抗をやめなかったので、飛び込んだ一人以外全部……」
シン、とする室内。
それでも、彼らは――被害者だった。