表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/127

まじです

 吉岡なら、きっと海にも意識を向けてくれる。


 そう、大樹は確信していた。


 だからこそ逆に、船は遠回りしてでも、安全なコースをゆくのだ。


 日本の陸地が、ぎりぎりの時間まで近くにいてくれる。


 それは、心強い材料でもあった。


「日本が近いのはありがたいが…」


 大樹の意見を、黙って聞いていた寮長が、息をつくのも苦しげに、声を出す。


「この船のコントロールを奪うのが骨だな」


 そうなのだ。


 船に乗っている人数、武装など、なにも分かっていない。


 あの右腕の男が乗っていたらアウトだ。


「夜を、寝静まっているところを狙うしかないと思います」


 たとえ相手が銃を出してきても、暗がりでは命中率は落ちるだろうし、混乱に乗じて同士討ちしてくれるかもしれない。


 ハンデのある戦いなのだ。


 奇襲以外に勝てる見込みはなかった。


「やるなら…今夜だな」


 まだ、回復していないというのに、田島は既に覚悟を決めている。


「はい、そう思います」


 大樹も同意する。


 今夜以外なかった。


「え、なんでだよ。そんな体で戦えるわけ?」


 ツカサの目は、寮長に注がれている。


 一番頼りになるのが誰か、分かっているのだ。


「殺す相手にメシなんか食わせてくれないぞ…水も、な」


 寮長の言葉の最後が、一番重要だった。


 人間から水を取り上げると、すぐに衰弱してしまうのだ。


 今夜を逃すと、明日はもっと体力が奪われている。


 まだ動ける、いまのうちが勝負なのだ。


「ってことは…」


 ツカサが、絶望的な声をあげた。


「おまえだけが頼りだ」


 こんな場面で、寮長はニヤリと口の端をあげた。


 痛かろうに。


「ま、まじかよ…」


 はぁぁぁ。


 ツカサは、くらくらしたかのように、自分の頭を抱えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ