急募・ウルトラマン
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個人的報復に、手駒まで出すか!
吉岡は、忌々しくゴミ箱を蹴り付けた。
「報道規制、手配終わりました」
「防衛省への報告は!?」
「一斉検問、始まりました!」
飛び交う情報や報告。
吉岡は、蹴飛ばしたゴミ箱もそのままに、情報の海に飛び込んだ。
もう、管轄が違うだの、他の組織との連携が出来ていないだの――そんな、悠長なことを言っている事態ではなくなった。
国内に潜伏するテロリストが、私怨とはいえ善良な一般市民に危害を加え、拉致したのだから。
表沙汰になれば、国家規模の大騒ぎになる。
警察だろうが自衛隊だろうがウルトラマンだろうが、動かせるなら全部動員してやる気だった。
国家安全情報局 テロ対策部 部長。
それが、吉岡の本当の肩書。
警察でも、自衛隊でもない。
国家直属のスパイ部隊――と言えば、聞こえはいいが、吉岡の仕事は地味なものだった。
昨日までは。
国内で起きる破壊工作、テロなどを、未然に防ぐため、危険人物の動きを監視する。
だが、動き回るのはハムのような頭脳系ばかりで、実行犯はなかなか表に出てこない。
突然、そこへ現れた「アームレスラー」。
あの右腕の男だ。
海外で、日本の国名をおとしめているテロリストが、いつの間にか帰国していたのである。
運悪く。
大樹たちが、アームレスラーに目をつけられてしまった。
行方不明者は、三名。
大樹と田島と、同室の少年。
事故の目撃者はなく、まだ検問にも引っ掛かっていない。
交通の要所を押さえているが、向こうもプロだ。
裏の読み合い。
読み負けたら、彼ら三人は帰ってこない。
吉岡は、資料を睨みつつ、頭をフル回転させた。
アームレスラーの主な潜伏圏は東南アジア。
あの目立つ腕では、空路からの入国は難しい。
と、なると――やはり。
「海上保安庁につないでくれ!」
吉岡は、デスクの電話を取り上げた。