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扉の前

 ふむ。


 田島寮長は、大樹の変化を見抜いていた。


 初めての門限破り以来、雰囲気が変わったのだ。


 ただの竹ぼうきみたいな坊やに、ちょいと艶が出た、というか。


 まあ、簡単に言えば、色気づいたわけだ。


 そんな色気一年生は、いま田島の運転する車の助手席だった。


 買い物に付き合わせているのだ。


 彼だって、何か必要なものがあるだろう、と。


 給料を使っているのだろうかと、心配になるほど、彼は何も買わないのだから。


「ドラッグストアとホームセンターに寄るが、ほかに行きたいとこあるか?」


「いえ」


 つれない返事に、田島は肩をそびやかした。


 色気の向く先にいる相手を、見てみたいものだ。


 大樹が、どれくらい変わるのか、デバガメ的に気になった。


 そして。


 田島は、彼が別の意味で変わった表情をするのを、目撃することとなったのだ。


 ドラッグストアで。


 大樹は、足を止めて固まっている。


 視線は、まっすぐ一点。


「ん?」


 田島が覗き込むと、太りぎみのオッサンが、消毒薬コーナーで何か探している。


「知り合いか?」


 その言葉に、大樹はハッと我に返ったようだ。


「いえ」


 すぐさま、彼はそこを離れた。


 だが。


 意識が、さっきの男に残っているのは、ありありと分かる。


 違う通路に入って、考え込む仕草。


 その目が。


 田島にとんだ。


「すみません、携帯借りられますか?」


 強い気持ちが見て取れる。


 謎の多い小僧だ。


 田島は、ポケットから携帯を取り出しながら、そう思っていた。

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