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ぼーっと

 最初、あれが貴恵だとは分からなかった。


 髪が短くなった上に、くるんくるんだったのだ。


 おまけに化粧までしていた。


 客商売だから当然なのだろうが、大樹は驚かされっぱなしで。


 たった二ヵ月。


 しかし、それはいきなり貴恵を大人にしてしまったのだ。


 中身は、まったく貴恵のままだったが、髪を扱う指は、見知らぬ匂いが染み付いていた。


 大樹は、髪をきられながら、その指が気になってしまう。


 指先から、貴恵は一枚皮を脱ぐように大人になった気がしたのだ。


 何かしゃべらされたが、帰りの電車で、大樹は何も思い出せなかった。


 いつもより、自分の心臓の音が早くて。


 貴恵を思い出すと、それがひどくなる。


 なんだろう。


 風通りのよくなった首筋が、貴恵の指を覚えていた。


 あの指が、大樹の心を揺さ振るのだ。


 おかげで。


「門限破って散髪か」


 呆れ顔で寮長に迎えられたことも、後で思い出せなかった。


 それくらい、大樹はぼーっとなっていたのだ。


 こんなことは、初めてだった。

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