田島
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さて、今年の中坊は。
寮長こと、田島は同室の二人のちびっこを観察した。
この会社は、昔から中卒も普通に雇っている。
最近では、猫も杓子も高校へ行く生活水準になったので、雇う数が減っただけだ。
金髪のツカサは、いかにも勉強嫌いの学校嫌い。
おまけに、分かりやすいヤンキー気質ときたものだ。
悪いことをしたい盛りだから、気を付けていないと、昔自分がやっていたような馬鹿なことを、いろいろやらかすに違いない。
もう一人の大樹は。
経済的理由で、普通校に行けなかった苦学生。
ひねてもいないし、真面目だが、自分という枠の中で、全部消化して完結するタイプだ。
内向的ニュートラル、というべきか。
外に向かって、自分の存在をアピールしない。
だからといって、存在感が薄いというわけではないのが不思議だ。
たまーに、視線に意思を感じる。
田島やツカサを見て、何を考えているのか聞いてみたいものだ。
そんな新人も、入社して二ヵ月になろうとしている。
研修期間も終え、不慣れながらに現場へ入り、初任給ももらった。
大樹は、記憶力と観察力があるところを買われ、検品作業にむいていると、出荷検査部に取られ。
ツカサは、粗雑だが体力はあると見込まれ、資材部にもらわれた。
その間に、ツカサは数度、夜間に抜け出そうとして、田島に阻止されていたが。
二ヵ月働くと、多少面変わりもしてくる。
学生の甘い顔が、抜けてくるのだ。
それに。
「おまえら、あんまりロン毛にすんなよ」
二人とも、だいぶ髪が伸びてきた。
女の髪の長さはうるさく言われないが、男はそうはいかない。
すでに金髪で浮きまくっているのもいたし。
「今度は、緑にすっかな」
自分が浮いているのを、なんとも思わない新人類は、にやにやしながら伸びた髪を引っ張っている。
大樹も。
くせっ毛の前髪を引っ張りながら、何かを考えているようだった。
その横顔が、いつもとは違う気がして。
ほぅ。
ほんの少し、田島の興味を引いたのだった。