ばっっっかじゃねぇの!?
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部屋は畳敷きの10畳ほど。
壁に個別の押し入れが四つ。
そこに、布団や個人の荷物が入れられる。
もともと、四人部屋のようだ。
古くて少しかびくさい部屋を、大樹はざっと見回した。
トイレ、給湯、洗面所、洗濯機は共有。風呂は別棟の大浴場。
寮長のてきぱきとした説明を受けながら、大樹は二人を観察していた。
寮長と、自分の唯一の同期になる彼だ。
金髪の15才は、さっきから何かと顔をしかめている。
きわめつけは。
「おまえたちは、高校卒業の年令まで、門限あるからな」
「ありえねー!」
口をぱくぱくしていた彼が、即座にそれに反応した。
「ありえねえのは、おまえのその髪だろ」
寮長は、まったく取り合う様子もなく、さらりと反論を打ち返す。
門限。
それは、大樹にも関係のある話だった。
「ああ、そっちのは話は聞いてる。門限はのびるから安心しろ」
なぜ、大樹が言おうとしたことが分かったのか。
ちょっと顎を彼に向けただけで、寮長は欲しい答えをくれた。
さすがに寮長と認められるだけあって、人の扱いは上手のようだ。
「なんだよ、それ! こいつだけ、特別かよ!」
思い切り、指をさされて非難されるのも久しぶりか。
かえって新鮮だった。
「なんだ、おまえも行きたいのか?」
うん?――首を傾けて、寮長は聞く。
「どこに!」
すでに金髪はケンカ腰。
「どこって」
寮長は、一度ちらりと大樹を見た。
「学校だけど」
その視線を、返すように金髪へ。
「がっ!」
意外な返事を聞いて、金髪は一瞬絶句した。
直後。
キッと大樹を見る。
まるで、信じられないものを見る目だ。
彼は、大きく息を吸い込んで。
「ばっっっかじゃねぇの!?」
いっそ心地いいほどの、全否定が飛んでくる。
何か答えた方がいいかと、大樹が考えるより先に。
「まあ、確かにおまえはバカそうだな」
寮長の平手が、金髪の頭に炸裂したのだった。