第二部 ツカサ
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うわ、だっせ。
ツカサは、おんぼろの寮を見た時、口をあんぐりと開けた。
Tシャツに破れジーンズ、金髪の頭。
じゃらじゃらのアクセサリをつけたツカサのセンスからは、許しがたい貧乏臭さだ。
「あぁ、今年はトウモロコシか」
しかも。
出迎えたおっさんは、人の頭を見るなり、いけしゃあしゃあとそう呼んだのだ。
無駄に上背があって、四角いガタイをしている。
柔道選手のようだ。
人をガキだと思いやがって。
ツカサは、どうにか言い返してやろうかと、口を開きかけた。
「おっ、もう一人きたな」
しかし、おっさんはトウモロコシのことなどもう忘れたように、ツカサの後ろを見るのだ。
「こっちは…ワカメかな?」
微妙に首をひねるおっさんに、ツカサも振り返った。
真っ黒のクセっ毛に眼鏡。
覇気の感じられない顔。
しゃれっけのまったくない服。
若々しさは、まったく伝わってこなかった。
「中卒採用は今年はおまえら二人だ、仲良くしろよ」
寮長だと名乗るおっさんの言葉に、ツカサはげっとつぶやいた。
こんなネクラそうなのと、二人だけなのか、と。
「あと、毎年中卒は寮長と一年同室と決まってるから、よろしくな」
だ、だっせー。
追加された軽やかな言葉は――ツカサの心にゲロゲロという悲鳴をあげさせたのだった。