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もっとこう

「チビっこは面倒くせぇなあー」


 ようやくドアが閉まって、美津子はそうこぼした。


 図体ばかり大きくなって、中身の方が全然追い付いていないのだ。


 貴恵はセカセカしすぎだし、大樹は気長すぎ。


 それで、ぶつからないわけがない。


 いままで、ぶつかること少なかったのは、貴恵に保護欲があったからだ。


 自分より弱いと思っているから甘やかしてきただけ。


 だが、貴恵も最近では気付いてきた。


 もう昔のように、やっきになって守ったり、面倒みたりしなくても大丈夫なのだと。


 大樹を、一人前だと認めたわけだ。


 それは、いい兆候である。


 相手と対等に付き合おうとしているのだから。


 対等を求めると、価値観や性格の違いで、ぶつかりあって当然だった。


 あーあー。


 ただ、美津子は年の功で、あのぶつかり合いに色気のかけらが混じっていることに気付いていた。


 母としては、面白半分、淋しさ半分だ。


「高校で、一体何してたんだ、あのバカは」


 ぶつくさ。


 美津子は、娘の甲斐性のなさを嘆いた。


 高校と言えば、色気を無駄に振りまきまくる年ごろで。


 男の一人や二人、できてもおかしくないはずだ。


 なのに貴恵ときたら、そんな分かりやすい色気を、どこに落としてきたのか。


 相も変わらず、大樹と美津子の世話ばかり。


 地味だ、地味すぎる。


 自分の子だから、てっきり華々しい高校生活を送るだろうと思ったのに、ふたを開けたら品行方正ときたもんだ。


 かえって、あんな喧嘩からただようほのかな色気など、美津子には、体がかゆくなりそうなものに感じられた。


「もっとこう、分かりやすく発情せんもんかね」


 かゆくなった首を、またぼりぼりかきながら、美津子は一人の部屋でぼやいたのだった。

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