吉岡の計画
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吉岡には、ある計画があった。
彼の職業病の観察癖が見抜いたもので、ほぼ間違いないと確信していることだ。
だから今日は、公園ではなく、図書館の前で待ち伏せした。
「よっ」
現われた大樹に、彼は片手を上げてあいさつをする。
大樹が、考え込む仕草を見せたのは、いつもと違う場所のせいか。
「今日は、二人に用があってな。お隣さんは、こっちから来るのか?」
吉岡が駅の方を指すと、彼はそれにこくりと頷いた。
「よし、それじゃいこう」
強引なのは百も承知で、大樹を駅へと歩かせる。
吉岡の計画には、あの貴恵という女子高生が必要なのだ。
「吉岡さん? 大樹?」
運良く、行き違いにならずにすんだようだ。
二人を見つけた彼女は、吉岡のことを覚えていた。
彼女とはアパートを最後に会っていなかったのに。
「久しぶり、ちょっと二人とも付き合ってくれないかな」
こっちこっち。
図書館から駅をはさんで反対側に商店街がある。
吉岡は、そこに用があったのだ。
「あの、吉岡さん?」
商店街の途中で、貴恵が怪訝そうに呼んだ。
彼女が聞きたいことなど分かっている。
しかし、言葉にするまでもなかった。
「さあ、ついた」
ある店舗の前で足を止め、吉岡は顎でそれを指した。
「って、え?」
貴恵は頓狂は声をあげる。
「大樹くんに、何かお祝いをあげたくてね。彼に一番必要なのは、これだと思うんだが」
どうだろう。
問い掛けると、貴恵は即座に隣の少年に目をやる。
大樹は――珍しく、ぽかんとしているように見えた。