【書籍化記念SS】使節団員の内緒話
書籍化が決まりまして、7/10に発売となります。
改題して【薄幸令嬢の逃亡生活~逃げ出した先で幼馴染に溺愛されています~】となりますが、もしよろしければお手にとっていただければ幸いです。
色々と加筆しておりますのでお楽しみに!
これは、リウィアが使節団に来てから一ヶ月程度共に過ごした頃の話。
男たちはすっかり健気なリウィアに絆されて、彼女の手腕に助けられるようになっていた。
初めこそ、あのテオが連れてきた子だからと同情の気持ちの方が強かったのだけれども。
「リウィアちゃんも成長したよねえ~」
「違いない! 最初は買い物一つ、戸惑っていたからな……貴族の令嬢ならばさもありなん、一人で買い物なぞしたことがなくて当然だ」
クルトがうんうんと頷けば、ヨアヒムも大きな声で笑った。
そしてその横でウルサそうに少し身を捩り、猫耳をピルピル動かしたレネがため息をついた。
「って言っても、オレたちだってテオに言われなかったらリウィアのこと、貴族令嬢って、わかんなかったじゃん……」
「まあな、だが身分があって良かった。いやこの場合は良かったと言えるかどうか……テオバルド陛下と結ばれることが彼女のためになると思うか?」
「さあなあ、そればっかりは本人たち次第じゃあねえの」
レウドルフの心配をヨアヒムが笑い飛ばし、やれやれとレネが肩を竦める。
この場にいないイェルクが聞いたら大爆笑しそうではあったが、少なくともここにいる全員がリウィアに好意的であった。
彼らメギドラの人間は、大層誤解されやすい。
見た目の厳つさや、人間族とはどこかしら違う見た目。
そしてなによりやはり疎まれたのは、ツガイと見初めた相手への執着心。
愛が元で暴走した先祖のツケを子孫が払うことになってしまったことは大層彼らにとって不本意なことであった。
それがゆえに周辺諸国からの厳しい目に対し『自分たちのせいではないのに』という鬱屈した思いもあったのだ。
とはいえ自分の部族の先祖の誰それが……と記録があればやはり子孫はそれに対して謝罪の意を表明するほかなく、けれどそれで罵られればやはり心は疲弊して……という悪循環。
それゆえに彼らもまた、初対面ではリウィアに対し警戒をしていた。
だが次第にそれはテオの強い執着心を見せつけられて同情心に変わり、そして『何かあったら助けてあげよう……』という庇護の気持ちにまでなったから、なのであるが。
知らぬはリウィアばかりである。
なお、そんな部下たちの思いを知ってもテオバルドは『うるさいな、リウィアを大事にすれば全部解決だろ』と歯牙にもかけないのであった。




