11話
またもやアップミスをしていたようですみません!!
「……」
「というわけで、こちらはリウィア。僕にとって大事な大事な女の子なんだ。真面目なイイコだから、きっとみんなとも上手くやれると思うんだけど……どう? イェルク」
「……誘拐、ではないんですね? 強要もしてませんね?」
「してないですよ、やだなあ!」
村に着くと早々に、テオを探していたらしい大柄な人が駆け寄ってきてびっくりした。
その挙げ句に誘拐とか強要とか、なんだか怖い単語が並んでびっくりする。
でもそれはそうよね、いきなり同僚が行方をくらましていたと思ったら痩せっぽちを連れてきて、雇ってやろうだなんて言い出したらびっくりするわよね。
イェルクと呼ばれた男性は耳をぴぃんと立てて困惑しているのか、尻尾があっちこっちを動き回っている。
獣人って耳だけじゃなくて、尻尾もあるのね!
本で読んで知っていたけど……実際に目にするとびっくりだわ。
触ったらふわふわなのかしら。
ってそんなことを考えている場合じゃなかった。
「テオ、あの……やっぱり迷惑よ。落ち着いたらまた連絡するから……」
「えっそんなのだめだよ、折角会えたのに! それなら僕がリウィアについて行く」
「テオ呼びぃ!? いやいやいやいやちょっと待って使節団のお仕事は!?」
「でもリウィアが……僕がいなくても国交なんてなんとかなるし」
「いやいやいやいやいやいやいや」
私が親しくテオと呼んだことにも驚かれたけど、やっぱり当然ながら使節団の一員でありながら私について行こうとするテオに驚きが隠せない様子だ。
勿論、私も驚いたけど……。
「だめよテオ、お仕事でしょう?」
「それは……うん。でも僕の一番の目的はリウィアを探すことだったから」
どうしてそんなにもテオは私のことを気にかけるんだろう。
鈴を分け合ったとはいえ、十年近く前の僅かな期間を共に過ごしただけの仲でしかないのに。
(世間知らずの私は領地の運営だけでも手一杯だったけれど、使節団の一員になるってきっとすごいことでしょう? 国と国を繋ぐための外交だもの)
そんな立場までなるには、どれほどの苦労があったのかと思うと私一人のために投げ出そうとするなんてあり得ない。
イェルクさんが驚いているのも、きっとそういうことでしょう?
「国が決めた人員が、自分勝手に離れるだなんて……そんなのだめよ!」
「わかった! わかったよ、こちらのリウィア嬢に一緒に来てもらえばいいんだな!?」
テオを止めなきゃと思った私の言葉に、イェルクさんの声が被さる。
そんな私たちを見て、テオはにんまりと笑った。
「決まりだね! ああ、良かった良かった」
「テオ……」
「ここから先は馬での移動になるけど、生憎とリウィアの分の馬がないから僕と相乗りでいいかな? 大丈夫、手綱捌きには自信があるから安心して」
テオが朗らかに笑う。
私はこの選択が正しいのかどうか、まだ判断がつかずにいた。
けれど、少なくとも私にとってこの出会いが予想外のことであったように――義母たちには予想できないことであることを考えれば、より確実に逃げられる。
(今は、そのことを喜ぼう)
そうよ。私は半年、しっかり逃げ延びて……お金も貯めて、オルヘン伯爵家を取り戻してみせるんだから!




