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レイが目を見開く。
「...本当に婚約してくれるの?」
「ええ。恋愛感情を求められたら困るけど、人間としてレイのこと大好きだもの」
「うん、今はそれで充分」
レイが嬉しそうに頬を染める。
ふと時計を見ると、お昼になっていた。
約束の時間があるので、そろそろ準備し城へ向かわなくてはいけない。
「レイ。準備をしたら城へ行って、国王陛下と王妃様と話してくるわ」
「丁度サルジャに用があるし...付き添いで僕も行く」
サルジャは第二王子でレイの友人だ。
王家特有の長い金髪に金色の目。
あまり話した事がないので、どんな人物かはよく知らないが。
レイはとてもしっかりしているし、付き添いできてくれるなら安心だ。
「じゃあ、また後で」
「うん」
一旦レイと別れるとメイドを呼んで準備に取り掛かる。
婚約者の瞳の色をしたドレスを身に付けるのが流行りだ。
もう金色のドレスは着なくていいと思うとほっとする。
派手で似合ってなかったもの。
レイと婚約したのだから銀色のドレスを着るべきよね。
私の髪と瞳は銀色だ。
ドレスまで銀色だと不自然かと思っていたが、纏まりのある感じになって良かった。
二人馬車に揺られ城へ行く。
レイが婚約者になったことに対して、実感が湧かない。
レイに近くまで付いて来てもらい、謁見の間へ着く。
国王陛下と王妃様が既に座っていた。
「リリアナ・ミクロスにございます」
淑女の礼をとる。
「よく来てくれた。リリアナ嬢を裏切る真似をしてしまい、愚息が申し訳ない」
「...私からも謝罪を。本当に申し訳ないわ。王妃教育をあれ程、頑張ってくれていたのに」
二人から頭を下げられる。
「頭をお上げください。...私はもう大丈夫です」
レイも家族もいるもの。
「本当に?」
「はい」
「代わりと言っては何だけれど、第二王子のサルジャとの婚約はどうかしら...」
サルジャとの婚約。
王家は聖女との繋がりを大切にしている。
だから、聖女である私は第一王子の婚約者になっていたのだけど。
「実は...まだ発表されていないのですが、レイ・ミクロスと婚約しました。その提案は申し訳ないのですが、お断りさせて頂きます」
「そうだったの...。そうとは知らずごめんなさい。貴方が王妃になってくれたら、と思っていたものだから。...エリオスとの婚約は無くなったけれど、これからも私と仲良くしてほしいわ」
「勿論でございます、王妃様」
「...改めて婚約おめでとう」
ありがとうございます、と私は頭を下げた。